DISC REVIEW
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このアルバム制作に至る前、彼らはパンデミックで外出が制限されるなかでリモートRECを行い、シングル「Level Of Concern」を発表した。その経験をもとに今作もリモートで制作。Tyler Josephは自宅スタジオで楽曲制作やプロデュースを行い、Josh Dunは米国内の様々な場所でドラムのエンジニアリングを手掛けたという。制作環境や、普段の生活に変化を強いられた時間を経たが、そこで生まれてきた曲、音のトーンは色に溢れイマジネイティヴだ。彼ら独自のポップで遊びのある、ドライビングで多彩なジャンルを往来するそのサウンドは、示唆的に大きな物語を描いていくこれまでの作品とは対照的に、個々のエモーショナルな日々が形になっていく軽やかさがある。不安や不穏さも通奏低音的に流れてはいるが、バウンスするビートや高揚するメロディに救われていく感覚。跳躍力を持った心、困難を超える人間の強さを感じる1枚だ。 吉羽 さおり