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サウンドスタジオ ノア コラム ~激音 通信~ vol.1

サウンドスタジオ ノア コラム ~激音 通信~ vol.1

【元祖・激ロック!初めてギターを歪ませた男】

ロックンロールが生まれた1950年代。エルビス・プレスリーのようなロックンローラーはアコースティック・ギターを手にステージに立った。中にはエレキ・ギターを持つものもいたが、小さなコンボアンプでジャズ・ギターの影響が強いクリーンな音色を使っていた。ベースはウッドベース、時にドラムはバスドラとスネア、簡単なシンバルのみだった。音量という面ではまだまだ観客席の少女たちの歓声に負けていた。
1955年、チャック・ベリーが「メイベリーン」をヒットさせると、若者たちはそのエレキ・ギターの音にノックアウトされた。チャックは世界で初めてのロックギター・ヒーローになった。「ジョニー・B・グッド」などの印象的なギターリフはそれこそキッズたちのお手本となり、そのキッズたちからビーチ・ボーイズやビートルズ、ローリング・ストーンズが生まれた。いま現在の私たちの耳からすると、ブルースやカントリーからの影響が強いチャックの音楽はどこか牧歌的に聴こえる。しかし、チャックのギターには「あるもの」がない。それは現在のロックにおける基本中の基本、「ディストーション」だ。

現在、ロックはジャンルの細分化が進み、ギターの音も実に多彩。しかし、ジャンルを越えて必ずと言っていいほど選ばれる音が、「ディストーション」。歪ませた音だ。歪みの度合いは軽いドライブサウンドから、スラッシュメタルのような重低音、ノイズ音楽に用いられるような弦を押さえただけで飛び出すような爆音まで幅広い。この全ての歪みの源流にいるのが、リンク・レイという人物である。

LinkWray.jpgリンク・レイ。1950年代にカントリーバンドのギタリストとして活動を開始するが、ロックンロールの洗礼を受け、エレキ・ギターのボリュームを爆音で演奏するようになる。レイは、エルヴィスと共に活動するスコッティ・ムーアが大好きだったそうだが、決して同じ音は出さなかった。常に生々しい音をというこだわりを突き詰めた結果、最終的にたどり着いたのは、アンプのスピーカーに傷をつけてギターの音色を歪ませるというものだった。そして1958年に発表したのがヒット曲「ランブル(Rumble)」である。「ランブル」はもともとドゥーワップのバッキングから発展した曲だった。テンポはゆったりしていて、単純なスリーコードを交互に弾くだけのインスト曲だが、そのギターの音色がかなり危ない。しかも曲名の意味は「乱闘」。リーゼントに革ジャン、エレキギターというレイのゴツいルックスもあって、ラジオでは自然と放送が自粛されたという。もちろん、昨今のディストーションと比べればかわいいものだ。しかし、チャックやスコッティのように、クリーンなトーンにリバーヴをかけて自然なサスティーンを得るのが常識だった頃に、レイは「ブリブリビチビチ」鳴るコードをレコーディングし、ヒットさせたのである。

link_the_wraymen_wray-link_wray_the_wraymen.jpgちなみに彼は「ランブル」以降、原音とその5度上の音を指2本で押さえて鳴らす「パワーコード」を積極的に取り入れるようになる。爆音、歪んだ音色にパワーコード。現在のへヴィロックにおいても欠かせないこの三位一体を最初に実践したのがレイだったのである。

ジミ・ヘンドリックス、ジミー・ペイジ、リッチー・ブラックモアなど、レイからの影響を公言しているギタリストは多々いるが、なかでもザ・フーのピート・タウンゼントは自他ともに認めるリンク・レイの大ファン。ピートは爆音、歪み、パワーコードを素直に実践した。ただでさえ、イギリスのリズム&ブルースにかぶれた若者たちは爆音を出したがっていたが、ピートの執着はそれ以上。当時、JTM45を出したばかりであるジム・マーシャルに頼みこんで出力のデカい100wの改良アンプJTM45/100と、12インチのスピーカーを8発搭載した棺桶のような巨大なキャビネットを発注する。結局、キャビは巨大で重く、持ち運びがほぼ不可能という結果となり、真ん中で分割された。いわゆるユニット3、3段積みマーシャルアンプの誕生である。ジム・マーシャルはのちに100Wアンプの開発に本格的に乗り出し、マーシャル1959を発表する。このモデルが1970年代のロック音楽の扉を開いたといっても過言ではない。このモデルを愛用した代表的なギタリストはエリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、アンガス・ヤング、そしてエディ・ヴァン・ヘイレン。ロック・ギターの歴史に名を残す人物ばかりだ。リッチー・ブラックモアに至っては1959を上回る200Wのアンプを発注し、その無茶ブリはMajorとして完成した。Majorはデヴィッド・ボウイとのコラボレーションで有名なミック・ロンソンも使用、その音はグラムロックのサウンドのお手本ともなっている。マーシャルは1980年代以降もJCMシリーズを中心にその時代の歪みのスタンダードを示し続けている。リンク・レイの生み出した「ディストーション」という発想は、マーシャルアンプの登場で決定的なものとなり、今日のロックの柱となったのだ。日本ではレイの認知度は海外と比べて圧倒的に低いが、爆音という霊感をピートに授けた彼の功績はもっと知られていいはずだ。公式に残されている彼の1970年代のライブ音源を聴くと、若干ハードロック寄りにアレンジされた過去の曲をグシャグシャの歪みで弾き倒している。1970年代当時、すでにジミ・ヘンドリックスはこの世になく、ロックは他ジャンルと融合して多様化していた。その時代でもなお、リーゼントに革ジャン、ビザールギターを手に野蛮なフィードバックを炸裂させていた。その不器用で一途なスタイルは、ロックンロールに人生を捧げた証である。

【歪みの現在進行形 スプラウンを体感!】

マーシャルは様々な歪み系アンプのスタンダードであり続けているが、マーシャルそのものを改造して、よりプレイヤーの要望に近い形でリリースしているメーカーもある。現在、そのような改造マーシャルアンプの中で最も注目されているのがスプラウンだ。yoyogi_splawn_nitro.jpg
スプラウンはヴィンテージ・マーシャルの修理・改造を手がけてきたアメリカのメーカー。長年培ってきたノウハウを注ぎ込み、ヴィンテージ・マーシャルの音はそのままに、現代的な使いやすさを加えて、リリースしたのがQuick Rodと、Nitroだ。サウンドスタジオノアではこのスプラウンのNitroを全国のスタジオに先駆けていち早く導入。ジューシーな倍音を含みながら、ピッキングした瞬間に音が耳に飛び込むレスポンスの速さは、ギタリストの表現を余すことなく出力してくれる。激しいだけではない中低音域は、ミュートをかけたバッキングなどにも有効だ。スプラウンNitroは代々木店と三軒茶屋店で無料レンタル。
その歪みを誰よりも早く体感しよう。

サウンドスタジオ ノア 赤坂店
店長 高橋 真吾

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