LIVE REPORT
LUMiRiSE
2025.07.05 @下北沢シャングリラ
Writer : サイトウ マサヒロ Photographer:A.Kawasaki
7月5日、LUMiRiSEが、バンド史上最大規模でのワンマン・ライヴ[飛び出せLUMiRiSE ~1st full album "≠ encore."リリースツアーファイナル ONE MAN LIVE]を、下北沢シャングリラにて開催した。
2024年6月に琴海(Vo)の加入と共に再始動し、この1年間を、精力的なライヴ活動と初のフル・アルバム『≠encore.』の制作で、ノンストップに駆け抜けた彼女たち。ツアーでは全国津々浦々を揺らし、満を持してここ下北沢に到着した。
場内が暗転すると、流れるのは「ゴジラのテーマ」。メンバーによるパニック映画風の小芝居が繰り広げられた後、"禁止事項は特にありません。やりたいようにやってください"のアナウンスに歓声が返される。SEに続いて火蓋を切った1曲目は「RESOLVER」。イントロでバンドが疾走を開始すると同時に、人波が前方に押し寄せ、その上をクラウドサーファーが転がっていく。アルバムの流れ通りに「Love Emotion」に突入すると、琴海は我慢の限界だと言わんばかりにダイブ。熱狂するオーディエンスに文字通り支えられながらその歌声を響かせた。
早くもクライマックスのような盛り上がりに驚かされるが、琴海はまだまだ満足できない様子だ。その挑発的な目線が、さらにフロアを焚き付けていく。"どれだけ熱くなれるかじゃない。どれだけクレイジーになれますか!?"と煽り「crazy circus」へ。緩急のある楽曲展開が渦を巻き、ラストサビの移調に合わせてさらに一段階ボルテージが上がる。ツアーを通して身に付けた自信が、強固な演奏へと確かに昇華されているようだ。ダークでシリアスな「アマリリス」では、一変してヒリついた空気に。来未のギター・ソロは、言葉だけでは語り尽くせないエモーションを背負い鳴らされていた。
多彩なレパートリーを誇るLUMiRiSEだが、その中でもラウドな攻撃力を保ちながらフロアを踊らせる、ミクスチャーなパーティー・チューンの精度は白眉だと思う。EDM風のビルドアップにクラップで加担させる「Lovin' you」で、縦ノリのグルーヴを作り出すと、曲名からして確信犯的な「れっつごーぱーりない☆」がここぞというタイミングで投下された。ダンス・パートではオーディエンスが上手に下手にと大移動。かと思えばブレイクダウンではハーコーモッシュも発生する。メンバー4人とファンが笑顔のままに殴り合う、ハッピーでピースフルな大喧嘩、とでも表現したくなるライヴだ。
ほぼノンストップで駆け抜けた4人はここでようやく一息。"今日ビジュいいんで、いっぱい見てください!"(MIZukI/Dr)、"もっと臭いフロアにして、野太い声聞かせて!"(来未)、"みんな、めちゃめちゃいい顔しとる!"(おと/Ba)とそれぞれの言葉で親密なコミュニケーションを図る。ここからは、ワンマンならではのスペシャルな試みとして初のアコースティック・セットに挑戦。まずはプリンセス プリンセス「M」のカバーが届けられた。お転婆さとまっすぐさの境界でハスキーな歪みを垣間見せる琴海の歌声が、何にも邪魔されず心の奥深くまで染み渡る。続くフラワーカンパニーズ「深夜高速」では低域を強めて歌い分け、"生きててよかった"夜を探し求めこの日、この場所に辿り着いた全員とその思いを共鳴させた。
終盤には椅子から立ち上がり感情を剥き出しにした琴海は、2曲を歌い終えて"緊張したー!"とこぼす。繊細な機微を捉える眼差しはバンド・セットに戻ってからの「eternal light」にも引き継がれ、メンバーは歌詞の"君"が指し示す先を確かめるように、詰め掛けた一人一人と目を合わせていた。
"こんな窮屈な時代でも、LUMiRiSEが演奏してるときぐらいは頭のネジを外してやりたいようにやれ!"と琴海。その表情にはツアー・ファイナルを迎えたことの歓喜だけではなく、未来への覚悟がしたたかに宿る。後半戦の幕開けを飾った、彼女たちの代表曲でもある一撃必殺のキラーチューン「SHOOTER」では、サーファーが大量発生。勢いそのままに、ヘヴィな「BATTINESS」では拡声器を片手に遊び足りない荒くれ者たちをアジテートする。
途中のアコースティック・セクションを除くと、セットリストは『≠encore.』の曲順通りに進行していた。つまり誰もが、ライヴが終わりに近付いていることを察していたのだろう。先程までの武装を解除する「君がいて」が、爽やかにその感傷に寄り添う。"諦めることが大人というなら/どうか子供のままで"。「五分咲きの秋桜」のフレーズが、熱のこもったライヴハウスではいっそう切実さを持って迫り、大きなサークルが花のように開いて、4人は満足気にステージを降りた。
"LUMiRiSE! LUMiRiSE!"のコールが鳴り止まない場内に、とある映像が上映される。それは、ツアーやレコーディングの模様を収めた新曲のMVだった。再び登場したメンバーによって告げられた曲名は"未完成ライフ"。このツアーの中で歌詞やアレンジを練り上げたという、ポジティヴなメロディック・パンク・チューンだ。"この環境は当たり前じゃないし、めちゃくちゃ感謝してます"(MIZukI)、"ツアーを通して、支えてくれる人たちからの愛をよりいっそう感じました"(おと)、"みんなからの期待に応えたいし、応えるべきやし、応えないといけないと思った"(来未)、"LUMiRiSE絶対売れるからな。売れるために頑張ってるもん。みんなに自慢してほしいし"(琴海)。最後のMCで語った彼女たちの言葉のように、培ってきたLUMiRiSEらしさを確かめながらさらなるステージへと歩みを進める、決意表明のような一曲。改めて生演奏で披露されると、オーディエンスは早速シンガロング・パートに食らいつき、今日一番の一体感が会場を包み込んだ。
これにて大団円かと思いきや、"これで終われると思うなよ!"と予定されていたセットリストを変更し、締めにこの日2度目の「BATTINESS」。やはりどこまでも暑苦しくて激しくて痛快なのが彼女たちのやり方だ。もう一汗流したメンバーとオーディエンスは皆、清々しい笑顔で一日を締めくくった。
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