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LIVE REPORT

RAN

2025.06.13 @渋谷WWW

Writer : 杉江 由紀 Photographer:SOWON

雨はいつか止むとしても、いずれまた降ってくることだろう。降っては止み、晴れたり曇ったりを繰り返しつつ、それでもまた雨は降る。そして、そのような巡りのサイクルはどこか人生の浮き沈みとも似ているが、たとえ雨が降ったとしても先に進みたいなら傘を差せばいい。あるいは、傘がないならどこかの軒下で雨宿りをするという手もある。大事なのは、いかなる雨風に晒されようと自らの目指すべき場所へ向かう姿勢を忘れないこと。この夜、RANというバンドが渋谷WWWにて体現してくれたのはまさにそれだった。

"今日で7年目の誕生日(ライヴ)が来ちゃいましたけど、バンドを始めた頃は「どうせ3年くらいで解散するだろ」ってどっかの偉そうな人に言われたり、メンバーがいなくなったときには「もうやめたら?」ってクソみたいなバンドマンに言われたりしたけど、俺等は「守った」ぞ! 簡単に諦めるかよ! 今この景色を見られたことで、ほんとに諦めなくて良かったなと改めて感じてます。ここからまた俺等なりに泥臭くゆっくりでも、君たちと一緒にバンドしていこうと思います。みんなありがとう!!"(TAICHI/Vo)

ヘヴィにしてダークな最新シングル曲「VEIL」から始まった、今回の"TAICHI BIRTHDAY ONEMAN【BEAUTIFUL RAIN】"において、本編ラストを飾った楽曲「umbrella」を歌い出す前に、フロントマン TAICHIがオーディエンスに向けて語り掛けたこの言葉の中には、万感が込められていたと言えよう。
というのも、RANは昨年11月よりベーシスト 最上夜が療養のために活動休止となり、約半年の間はギタリスト 嘘がベーシスト役を担いながら、ここまでの活動を続行してきていたのだ。しかも、先だっての本誌インタビュー内容によると、最上夜としては"これ以上メンバーに迷惑を掛けたくない"との想いから、脱退することも一時的には考えていたというのだから、事態は相当に深刻だったと推察される。しかし、それでもRANはこのライヴの直前にあたる6月10日には、池袋EDGEにて"RAN presents NEWシングルリリース記念and最上夜復活祭4マン【躁】"を開催して、堂々の4人での復活を果たすことに。つまり、今回のライヴはRANにとって毎年恒例のTAICHI生誕祭であったと同時に、最上夜が復活してから初のワンマンでもあったのである。

ようやく本業に戻り、こだわり満載のフル・アナログ機材を駆使しながら、芯の太い音を放っていく下手ギタリスト、嘘。場面によって繊細にも豪胆にも音を自在に綴り、華やかな存在感も醸し出す上手ギタリスト、美亮。現場を長らく離れていたことが信じられない程、鮮やかで躍動感のあるプレイとパフォーマンスを繰り出すベーシスト、最上夜。このライヴのためにずっと禁酒していたというだけあり、ワイルドな曲では過激に吼える一方、旋律の映える曲では伸びやかに歌ってみせるヴォーカリスト、TAICHI。あるべき姿に戻ったRANが、この場に集った観衆たちを大いに沸かせたことは言うまでもない。

"毎年、このライヴでは次の目標を最後に言ってますけど、去年の新宿LOFTで言ったことは叶えられませんでした。ごめん。改めて約束しよう。来年6月、LIQUIDROOMで会いましょう! 言ったからな! 叶えに行くぞ!!"(TAICHI)
なお、アンコールの最後にTAICHIが"約束の歌"として熱唱した「三日月」には、"いつだって僕は/こんな声がこんな歌が/報われたらとか"との一節が......。もしまた雨の降るときがあったとしても、きっとRANは力強き音を雨上がりの澄んだ月夜に届けてくれるはずだ。

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