LIVE REPORT
マチルダ
2024.09.30 @Zepp DiverCity(TOKYO)
Writer :杉江 由紀 Photographer:kosuke kobayashi
自我を確立できている人。エゴが強い人。この両者はほぼ同じ意味合いの言葉であるはずなのに、どういうわけか後者のほうが対外的印象は悪くなりがちだ。何かと同調圧力によって和を生み出すことが常となっている日本社会においては、学校でも仕事場でも自己主張することが悪目立ちに繋がってしまうケースが多いせいかもしれない。
題して"エゴテロリズム"。2024年は春から5作連続リリースを展開してきたマチルダが、このたび9月30日に自身最大キャパとなるZepp DiverCity(TOKYO)にて開催した主催イベントに冠されていたのが、まさにこの"エゴ"という言葉だったのである。主旨的には、出演アーティストたちが互いにいい意味でエゴをぶつけ合うような空間を生み出したい、という願いがそこには込められていたのだと思われるが、そこにわざわざ"テロリズム"と付けるあたりが露悪的且つシニカルで面白い。なかなか一筋縄ではいかないところのあるマチルダらしいセンスが、絶妙に投影されたイベント・タイトルではないか。
もちろん、そんなマチルダがこの夜のために招聘したバンドたちもそれぞれに一癖、二癖ありなメンツ揃いで、まずオープニング・アクトとして登場したのは、マチルダからするとレーベルメイトであると同時に、先輩後輩の関係でもあるヒッチコック。そこから、強靭なドラムの音がバンド全体を牽引していく形でのライヴ・パフォーマンスが際立っていたヤミテラ、詞で歌っていること自体は毒々しい一方で、サウンド自体はラウドにしてキャッチーなところが興味深いZOMBIE、バンド名よろしくデジタル要素はふんだんに取り入れつつも、ロック・バンドとしてのダイナミズムもしっかりと発揮していた電脳ヒメカ、とそれぞれのバンドがいろいろな手法をもって、様々なエゴの形を我々に音や振舞いとして見せつけてくれたと言っていいだろう。
また、このイベントにはスペシャル・ゲストとしてDaizyStripperも出演しており、マチルダの時雨 環(Ba)と米田 米(Dr)がともに"中高生のときに好きで聴いてました!"、"リクエストしたいくらいです"と言っていた、不朽の名曲「ダンデライオン」を惜しみなく振舞ってくれた他、さすがの貫録に溢れたステージングでキャリア17年の圧倒的な底力を我々にひしひしと感じさせてくれた次第だ。
かくして、この"エゴテロリズム"のトリを飾ったのは主催者たるマチルダに他ならない。5作連続リリースの第1弾であったギター・ロック風味の強い「エコテロリスト」を手始めに、彼等は現状での"おいしいところ取り"なセットリストを組んでくれていたようで、時雨 環のスラップ・ベースと米田 米のタイトなドラミングが躍動感を生み出していた「トレパネーシヨン」、一檎ジャム(Gt)とヰ瞑うに(Gt)がソロ・リレーを聴かせてくれた「バラバラ」等、曲ごとに異なる空気感を場内にもたらしていたところが印象的だった。
"また必ず、こういう主催ができるように。今日よりもっと成長してさらにいい景色を見せられるように、何度も何度も失敗して、たまに成功して、少しずつでも前に向かって進んでいこうと思ってます。また必ず貪り合おう! ごちそうさまでした......!!"(喰/Vo)
なんでも、マチルダは2025年に7周年を迎えるそうで、新年1月1日にはニュー・デジタル・シングル「タイムパラドクス」を発表することが決定しているとのこと。そして、3月31日の恵比寿 LIQUIDROOM公演まで続く7周年ワンマン・ツアー"毒味7-dokumi seven-"も決定しているそう。マチルダの自我を発露していく旅路は目下継続中だ。
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