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INTERVIEW

マチルダ

2023.12.06UPDATE

2023年12月号掲載

マチルダ

Member:喰(Vo) 一檎 ジャム(Gt) ヰ瞑 うに(Gt) 時雨 環(Ba) 米田 米(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

食わず嫌いせずに、まずはひと口でも味わってみる。すると、新しい世界や未知なる領域との出会いがあるのかもしれない。"ありきたりなものは作りたくない"と断言するマチルダが、来春の6周年を控えて完成させた1stフル・アルバム『♯マチルダ』は、食べ応え十分なフル・ボリューム作品と相成った。これまでに配信してきた曲たちと、新曲を合わせた今作にはマチルダの供する逸品が満載で、そのどれもがインパクトのある味わいに仕上がっているところは賞味するものを決して飽きさせない。中には刺激的でスパイシーなものや、独創的な風味のもの、珍味の類も含まれるが、そうした点も含めてどうぞ召しませ。

-このたび1stフル・アルバム『♯マチルダ』が完成し、激ロック初登場となったマチルダですが、まずメンバーさんのプロフィールを見渡しますと......喰、一檎ジャム、ヰ瞑(いくら)うに、時雨 環、米田 米と、みなさん何かしら"食"に関係あるお名前でいらっしゃるのですね。いきなりではありますが、この個性的なネーミングについての解説をいただくところから今回の取材を始めさせていただけますと幸いです。

喰:マチルダは来年の3月で6周年なんですけど、始動当初のテーマが"お食事"だったんです。単に食べ物を摂取するというだけではなくて、"他のバンドを喰ってやる"みたいな意味もありつつで。当時は今よりもっとオラオラしてましたから。俺、ステージでブラジャー食ったりしてましたもん(笑)。

-えっ。さすがに布は咀嚼することはできないのでは???

時雨:それが、喰は対バン相手の名前にちなんだものとか、その日のライヴに関係あるものを胃に入れちゃうんですよ。羽とかブラジャーとかの噛みにくいやつは、ミキサーでガーッてやって飲んだりとか。あとは、ステージでパン粉をバッサーッて被ったり。

喰:今思うとなかなかカオスでした。一応、ステージとかモニターは汚さないように、ビニールを周りに敷いたり被せたりでやったとはいえ、言うてもフェスだったんで(笑)。

-だとすると。そうした過激なパフォーマンスも展開していた時期を経て、今現在は当初よりオラオラ感も落ち着いてきたというマチルダが、今回の1stフル・アルバム『♯マチルダ』で打ち出したかったのは、どのようなことになりますか。

喰:初めてのフル・アルバムなんで、気持ち的には"原点に戻る"感じがありましたね。これはマチルダっていうバンド名を付けた理由とも繋がる話で、この名前には殺し屋のイメージを重ねたところがあったんですよ。

-マチルダ+殺し屋というと、名作映画"レオン"が思い出されます。

喰:そうそう、そうなんです。ただ、このところは詞の内容も殺人とかのテーマは少なくなってきてまして。でも、今回のアルバムにはまさに殺人事件をテーマにした「新宿鮫」とか「バラバラ」っていう曲なんかも入ってるんで、ここに来てまた原点に回帰した感覚があるんです。ちなみに、「新宿鮫」はこのアルバムのリード・チューンになります。

-では、その「新宿鮫」についてのお話からうかがって参りましょう。こちらは同名小説をモチーフにした曲ということになりますか?

喰:いや、そういうわけではないです。というよりも、僕はその小説は読んだことないんですよ。むしろ、この詞では歌舞伎町で起きた実際の事件をモチーフにしてます。

-昨今はいわゆる"トー横"にまつわる問題が何かと取り沙汰されておりますが、この詞からはそのような要素も感じられる印象です。

喰:時系列で言えばちょっとズレはありますけど、結局ここで書いたことと今ってかなり似てるんですよね。いろんなことが巡り巡っているというか、たぶんそんなに人間のやることって変わらないのかなって僕は思ってます。あそこって、若者が背伸びして遊ぶような街じゃないですか。今も昔もその本質は同じだよね、っていう戒めの歌です。

-なるほど。基本的に、マチルダは作品を仕上げていく際にテーマやコンセプトをかなり重視されていることになるのですね。その場合、楽器隊の各メンバーはこのバンドの中で音を出していく際、主にどのようなことを重視されていったのでしょうか。

米田:これはレコーディングではなくてライヴの話になっちゃうんですけど、うちのバンドはフロントの4人がとにかく派手なんで、ライヴ中に関してはみんなが安心してプレイできるように、イヤモニのシステムとか同期関係はすべて自分が一括管理してるんですよね。そのぶん、ドラムのセッティング面では見た人が"それどうなってるの!?"って感じるような組み方をしてたりします。

喰:蛍光シンバルとか使ってるよね(笑)。

米田:シンバルとかスティックとか顔に蛍光塗料を塗って、ドラム・セットの横にブラック・ライト置いて光らせてます。ただし、そのシンバルは光らせる専用で叩きません(笑)。

時雨:自分が気をつけているのは、コンセプトや歌詞の邪魔をしないプレイをしようということですね。目立ちすぎないように心掛けてます。

-もっとも、今回のアルバムで言うと「トレパネーシヨン」では相当ベースがバキバキに鳴っている感じではありませんか??

時雨:あ、その曲はちょっと特別です。曲調を考えてそうしました。

ヰ瞑:俺はギターに対してのこだわりとかは特にないですね。カッコ良ければなんでもいいし、ギターを選ぶときも見た目重視です。音的な面では、自分の場合1年半くらい前にこのバンドに入ったのもあって、今はまだみんなについてくので精一杯です(苦笑)。

一檎:うに以外はオリジナル・メンバーなんで、たしかにそこの差はあるかもしれないです。今回のアルバムもそうですけど、マチルダはいろんなパターンの曲があるんで、ギターに関してはその曲ごとに結構違うと思うんですよ。

喰:つまり、ボンキュッボンってことじゃない? 出るところは出て、引っ込むところは引っ込むみたいなさ。

一檎:あぁ、そういうことか(笑)。ライヴとレコーディングは別のものと考えているところもあるから、ギター・ソロなんかはアドリブ多めでやっちゃうこともあるけど、たしかに出るところと引っ込むところは差をつけてるし、あんまり決まった形にはとらわれすぎないように意識してます。

-ちなみに、マチルダにおけるツイン・ギターとしての基本スタンスというのがもし何かあれば、それについても教えていただけますでしょうか。

一檎:僕がリードを弾くことは多いですね。意外とメタルは昔から好きだったんで、ARCH ENEMYとかCHILDREN OF BODOMなんかはめっちゃ聴いてたんですよ。速弾きに興味があってMR. BIGも好きでした。ギタリストとして、その影響は受けてると思います。

ヰ瞑:僕はヴィジュアル系らしくヴィジュアルで勝負してますし、そこは自信あります!

-つくづくマチルダは個性的なバンドであるようですが、フロントマンである喰さんが"ここは誰にも負けない"と認識していらっしゃるのはどのようなところでしょう。

喰:良くも悪くも、そのときの感情に対して素直なところですかね。カッコ良くありたいとは思ってるけど、ヘンにカッコつけすぎる感じにはなりたくないし、ほかのV系ヴォーカルだったら言わないだろうなっていうことでも、自分がそう思ったら普通に口に出して言っちゃうので。無難な感じに収めちゃうのとかは絶対したくないと思ってます。

-たしかに、今作『♯マチルダ』もいい意味で無難とはほど遠い作風ですものね。ここには配信曲だったものも含めて様々な楽曲が収録されているそうですが、今回の取材では主に新曲群についてうかがって参りたいと思います。冒頭を飾るSE的なインスト「gossip」は、それこそ新宿の雑踏を彷彿とさせる効果音が生かされた形ですけれど、ここに込めた意図についての解説をお願いいたします。

喰:これはリード曲の「新宿鮫」をイメージしながら作ったもので、実際にトー横で流れてるアナウンスとか現場の生音を録ってきてミックスしてます。事件がここから始まるかも、っていう雰囲気を醸し出したかったんですよ。