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INTERVIEW

陰陽座

2026.03.18UPDATE

2026年03月号掲載

陰陽座

Member:瞬火(Ba/Vo)

Interviewer:杉江 由紀 Photographer:小松陽祐

聴覚を研ぎ澄まし、この音に全集中することをおすすめしよう。陰陽座がこのたび20年ぶりに発表する2枚組ライヴ・アルバム『吟澪灑舞』は、最新アルバム『吟澪御前』のリリースと連動して開催された"陰陽座ツアー2025『吟澪』"の千秋楽公演を丸ごと収録したものとなる。瞬火、招鬼、狩姦による重厚且つ奥行きのあるバンド・サウンドが轟くなか、黒猫の艶と伸びやかさを湛えた歌声が響く様は実に壮麗。映像作品とは異なる、"音だけ"の世界だからこそ味わえる醍醐味がここには詰まっている。


ライヴで培ってきたバンドの生々しい音を聴けるところが ライヴ・アルバムの醍醐味


-陰陽座がこのたびリリースされるのは2枚組ライヴ・アルバム『吟澪灑舞』です。こちらは"陰陽座ツアー2025『吟澪』"の千秋楽となったZepp Sapporo公演を収録した作品となりますが、ツアー自体は7本あったなかで札幌公演をパッケージされることになった理由をまずは教えてください。

会場の規模だけで言えばZepp Haneda(TOKYO)公演もありましたし、全公演とも熱く盛り上がったという意味では全て平等に候補でしたが、最新オリジナル・アルバムである『吟澪御前』(2025年リリース)を引っ提げての"陰陽座ツアー2025『吟澪』"は、アルバムの全ての曲を初めて披露する場だったわけなんですが、総合的に見て千秋楽となった札幌公演が、新曲ならではのいい緊張感を保ちながらも、ツアー全日程を経ての経験値が反映された演奏およびパフォーマンスになっているという手応えを強く感じたことから、ライヴ作品として聴いてもらうのに最も相応しいと判断して、迷わず札幌公演の音をCD化することに決めました。

-ということは、札幌以外でも録音はされていたわけですか。

全公演を収録していました。今は手段がたくさんあるので珍しいことではないでしょうけど、基本的に全公演マルチトラックで録音しているので、どの公演を出すことになってもいい状況ではあったんですよ。

-ちなみに、今作『吟澪灑舞』は陰陽座にとって『陰陽雷舞』(2006年リリース)以来20年ぶりのライヴ・アルバムになるそうですね。

そうなんですよ。ふと遡ってみたら"マジか! あれからもう20年経っていたなんて......"と、我ながらちょっとびっくりしてしまいました(笑)。まぁ、なぜここまで出していなかったのかと言えば、ライヴを作品化するという意味でいくと、画の付いた映像作品のほうがどうしても需要が高いというのがあって、そこはバンド側の意思というよりは当時の担当ディレクターの意向もありつつで、ライヴ・アルバムよりもライヴ映像のほうをどんどん出そうという流れになっていたんです。そのおかげでDVDやBlu-rayでの映像作品はこれまでいっぱい出させていただきましたが、僕個人的には、ライヴ・アルバムというものに昔からとても思い入れがあるので、また出したいとはずっと思っていたんです。

-瞬火さんのライヴ・アルバムに対する思い入れとは、言葉にするとどのようなものになるのでしょう。

もちろん、ライヴ映像というのはアーティストが演奏している姿を楽しめるものですし、シズル感もあって僕も観るのは大好きなんですよ。でも、自分が若かった頃を振り返ると今のようにYouTube等もなかったわけで、そもそもライヴ映像ってそうおいそれとは世に出ることのないものだったんです。

-1980年代から1990年代前半にかけてはMTV、あるいはBS放送等でたまに流れればラッキーでしたけれど、さもなければVHSのライヴ・ビデオを買うか、大きめなレンタル・ショップで借りるか、くらいしかなかったですよね。

いやほんと、ライヴ・ビデオなんてまず買えませんでした(苦笑)。というか、作品の数も少なかったじゃないですか。だから、当時の僕等はもっぱらライヴ作品といえばライヴ・アルバム、という状況でした。しかも、ハード・ロックやヘヴィ・メタルの世界では名盤と呼ばれるような作品がたくさんありましたからね。スタジオ・アルバムとはまた違う、ライヴ会場の熱気やライヴ・バンドとしての漲りまでが感じられるライヴ盤を聴きながら、自分の脳内でライヴ会場の映像を映し出しながら音に没入する、ということをよくやっていたんですよ。

-よく分かります。私も中学生時分に"マディソン・スクエア・ガーデンの響きってこんな感じの音なのか......"等と思いつつ、ライヴ盤を聴いたことがありました。当時からの音楽ファンであれば誰しも経験があるはずですよね。

ああいう音の楽しみ方は僕にとって非常に大事なもので、言ってみればライヴ盤フェチな人間なんです。とにかく好きなバンドのライヴ盤は絶対に買わないと気が済まないというか(笑)。だから、陰陽座としてまたライヴ・アルバムを出せるというのは本当に嬉しいですね。実を言うと、当初はこの"陰陽座ツアー2025『吟澪』"の映像作品を出すという案も出てはいたんですよ。とはいえ、今回のツアーでは黒猫(Vo)が病気の関係でウィッグを付けてライヴをすることになったという事情もあり、映像としてどういった画が撮れるかが全く未知数だったから見送ったという経緯があるんです。"だったらせめて音で出しませんか"ということで、レーベルとバンドの意向がようやく20年の時を経て一致したわけです。

-なるほど、そういうことでしたか。なお"ライヴ盤フェチな人間"であるところの瞬火さんにとって、特にお気に入りのライヴ・アルバムとはどのような作品ですか。

それを本気で話し出すと長くなるので手短にしますが(笑)、僕は一番好きなバンドがJUDAS PRIESTなんですけど、70年代、80年代、90年代、00年代とライヴ・アルバムを時代ごとに出しているんですね。で、その中でも世界中で名盤と賞賛されているのが79年に発表された『Unleashed In The East』で、これは初期の名曲が詰まっているということもあって非常に好きです。

-"In The East"というだけあって、東京厚生年金会館と中野サンプラザ公演の音源が入った日本収録のライヴ盤だったのですよね。

その後、1987年には『Priest ... Live!』という2枚組のライヴ・アルバムも出ていて、これはスタジオ・アルバム『Turbo』を出した時期の北米ツアーで収録された作品だったんですよね。『Unleashed In The East』がドライでデッドな反響のほとんどない生々しい音だったのに対し、こっちの『Priest ... Live!』はいかにもアリーナやスタジアムを思わせるスケールの大きな響きから臨場感が感じられる内容でした。どちらにもその時代ならではの音がすごくよく出ているんですよ。あと、IRON MAIDENだと『Live After Death』、DEEP PURPLEの『Made In Japan』も好きですね。恐らくこれらをはじめとした名盤と言われているものはほとんど聴いてるんじゃないか、というくらいライヴ・アルバムには目がないです。Y&Tの『Yesterday And Today Live』に至っては、選曲もベストでパフォーマンスも最高だし何もかも全部がアップデートされているから、もうそれぞれの曲のスタジオ・バージョンが聴けなくなるぐらい好きですね。スタジオ盤を聴こうとすると、"せっかくだからライヴ盤のほうを聴こう!"となってしまうんです。

-たしかに、スタジオ盤が新曲を新鮮なうちにレコーディングしたものであるのに比べ、ベストなコンディションでのライヴ・アルバムは曲たちがちょうどいい熟し方をしていることも多いでしょうから、コアファンであればある程楽しめるところがありそうです。

なんといっても、ライヴで培ってきたバンドの生々しい音を聴けるところがライヴ・アルバムの醍醐味でしょうね。陰陽座が出す今回の『吟澪灑舞』に関して言えば、DISC-1では最新スタジオ・アルバム『吟澪御前』の世界をきっちりと表現している一方、DISC-2にはアンコールでのこれまで何十回、何百回とやってきている定番曲たちが入っているので、両者のコントラストを楽しめるという面白さもあると思います。

-今作においては瞬火さんがエンジニアリングも手掛けられたそうですが、サウンドメイクの部分でこだわられたのはどのような点でしたか。

先程例に挙げたJUDAS PRIESTの作品に例えるなら、かなりデッドな『Unleashed In The East』と、広い空間ならではの響きを漂わせた『Priest ... Live!』のちょうど間くらいな音像を目指しました。あえて言うならIRON MAIDENの『Live After Death』みたいに適度なスケール感もありながら過剰な反響はなく、ちゃんとタイトに演奏も聴けるという微妙なバランス感を狙ったんです。あくまで音像の例えですけどね。

-そのあたりの匙加減が実に絶妙ですね。エキサイティングにして克明な演奏ぶりが感じられるのはもちろんですし、会場にいらっしゃるお客さんたちの歓声や拍手も随所に入っているほか、黒猫さんによる曲紹介や、佳境で瞬火さんが煽りMCで場内を沸かせる様子も聴くことができるだけに、ありありとライヴの雰囲気が伝わってきます。

古今東西いろんなバンドのいろんなバランスのライヴ・アルバムが存在しているだけに、きっと"これ"という正解はないと思うんですよ。聴く方の好みによっても"もっとドライなほうがいい"と感じる人がいたり、逆に"もっと響いているほうがいい"という人もいるでしょうからね。あるいは、お客さんたちの歓声はもっとデカいほうがいいとか、その逆とか。そういう意見はいろいろあるとは思いますが、今回の『吟澪灑舞』は全方位的に僕の中で今回のライヴ作品として一番ちょうどいいと思った音に仕上げました。

-それからこれは野暮な質問ではあると思いつつも、あえて伺わせてください。ライヴ・アルバムでは映像がない分、受け手は生のライヴを観賞するときよりも音に集中して聴くことになるわけではないですか。そうなってくると"ちゃんとタイトに演奏も聴けるという微妙なバランス感"を重視する場合、演者としては高い演奏精度を求められるわけですよね。その点をプレッシャーに感じてしまうようなことはないのでしょうか。

正直に言えば、時に肝が冷えることはあります。でも、それが恥ずかしいから嫌だということなら、それはもう"だったらなんでライヴをやるの?"という根源的な話になってきてしまいますからね。ライヴをやってしまっているからには、それが自分たちの姿なので、そこはもう恥ずかしがってもしょうがない話なんですよ。ライヴ演奏ならではの多少の傷と呼べるようなものや、些細なほころびがあったとしても、ステージで実際に演奏して駆けずり回りながら歌えばこうなるよな、という自然な結果でしかないわけです。

-ライヴ盤だからこそのリアリティと臨場感を尊しとする、ということなのですね。

作品としての整合性と、舞台の光景が見えるような空気感、その両方があるのがライヴ・アルバムとしては楽しいのではと思います。だから、我々としては細部まで聴かれてしまうのが恥ずかしいというよりも、むしろ細部まで皆さんにたっぷりと楽しんでもらえたら嬉しいです。