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INTERVIEW

陰陽座

2023.01.18UPDATE

2023年01月号掲載

陰陽座

Member:瞬火(Ba/Vo)

Interviewer:杉江 由紀

想像を絶するような熾烈で過酷な闘いの日々だったのかもしれないが、それでも陰陽座は今ここに堂々の生還を果たした。陰陽座にとって4年半ぶりとなる今回のアルバム『龍凰童子』は、つまり"停滞と決別し、ライヴを含めた諸々の活動を再起させるための第一歩として制作が敢行されたアルバム第15弾"であるという。ヴォーカリスト、黒猫が2020年2月に聴覚の不調を発症してから、その重大な難局を乗り越えたうえで制作された『龍凰童子』が、見事に陰陽座そのものを具現化したような仕上がりを見せることになったというこの事実は驚異であり感動的でもある。ここはリーダー、瞬火からの言葉をしかと聞いてみよう。


陰陽座のまったくぶれていない姿を作品化することが『龍凰童子』に課した使命だった


-陰陽座にとって、今作『龍凰童子』は"停滞と決別し、ライヴを含めた諸々の活動を再起させるための第一歩として制作が敢行されたアルバム第15弾"となるということが公式にインフォメーションされております。ヴォーカリスト、黒猫さんのコンディション調整なども踏まえつつだったかとは思われますが、実際に制作を開始することができそうだと判断することが可能になったのは、いつ頃のことだったのでしょうか。

おおむね2022年の初頭頃には制作に向かって行けそうだ、という手応えを感じられる状況にはなっていましたね。

-なんでも、一時は歌うどころか、発声さえも難しいという深刻な状況と黒猫さんは対峙されていたそうですが、2021年夏頃の公式ブログでは順調に回復されてきているという報告がありましたので、そこからは半年ほどでアルバム制作に着手することができたわけですね。

本当に少しずつではあるんですけど、ここまで前に進んできた感じですね。もちろん、本人の気持ちは常に前に向かってはいたんですが、そこと実際のコンディションの折り合わせをつけていく必要はどうしてもありましたから。そして、2021年の下半期からはかなり状況が良くなってきて、いよいよ2022年の初頭には"とにかくやってみよう"ということでアルバムの制作に向かって動き出すことになりました。

-なお、いざ完成してみると今作『龍凰童子』は全15曲の大作として仕上がることになりました。ここに収録されている楽曲たちというのは、これまで4年半の間にストックしてきたものたちも多かったのでしょうか。

前作を出してからは4年半、2019年にツアー("生きることとみつけたり【参】")を中断してからは3年半の時間がここまでにはあったので、本当ならじっくり時間を使って作ることができていれば良かったんですけれども、現実的には制作環境の変更というか機材の入れ替えであるとか、意外とそうした面を整えるのにも試行錯誤をして時間がかかったところがあり、タイミング的にはちょうど黒猫のコンディションが回復をしてきたのとほぼ同時期に、物理的な面での調整もようやく上手くいくようになったんですよ。そのような理由から、今回のアルバムに収録した楽曲たちの作曲や作詞を具体的に始めたのはアルバムの制作が決定して以降のことになりました。そういう意味では、ある意味このアルバムもいつも通りのようなペースで制作が進行していった作品だとも言えます。

-招鬼(Gt/Cho)さんと狩姦(Gt/Cho)さんのおふたりは、今回のレコーディングに際してどのようなご様子でいらっしゃったのでしょう。

まったくの平常運転でしたね。コロナ禍ではとにかく感染しないようにということを命題に全然会っていなかったんですが、久しぶりに会ったとはいっても特にぎこちないということなく(笑)、何から何までいい意味でふたりともいつも通りでした。

-となりますと、今作の楽曲や詞について、黒猫さんの不調によりツアーの中断を余儀されなくなってしまったことや、ここまでの紆余曲折あった道程で感じられていたことなどが、影響を及ぼした点も特になかったのですか?

実は、このアルバム自体のコンセプトですとか、制作意図に関してはもともと黒猫の不調が発覚する以前からすでに決めていたものなので、そこにツアー中断の影響が及んだ点というのはないんですよ。ただ、各楽曲について言えば主に詞の中でその影響が出た部分はやはりあると思います。もちろん、以前から常に陰陽座と共にあるファンのみなさんへの感謝や、音楽を通して喜びを分かち合うということは、変わらず作品の中に盛り込んできたことではあるんです。でも、2020年にツアーが中断して、そこから長い間ずっと活動が止まっていた陰陽座に対して惜しみない励ましの声、応援の声をたくさんいただいたことにより、これまで以上にファンのみなさんへの感謝が自然とさらに盛り込まれていったところはあるでしょうね。

-それと同時に、今作を制作していくにあたっては純粋に"音楽を新しく生み出せることに対しての喜び"というものを感じられる場面も多かったのではありませんか。陰陽座はここまでに長い歴史を積み重ねてきた大変タフなバンドではありますけれど、今回とても重大な難局を乗り越えたうえでのアルバム制作ともなると、おそらくそこには、"またレコーディングをすることができて良かった"という感慨深さもあられたのでないかと推測いたします。

そこは僕ら自身も結成した当時は、まさか陰陽座が20年以上も続くバンドになるとは思っていなかったですし、その時々で10年後や20年後といった先々のことを夢想するのではなく、あくまでも今やっていること、せめて次にやることといった自分たちの目の前にあることをひとつずつ積み重ねてきたなかで、ありがたいことに気がついたら20年経っていたという感じです。なので、それをこうして愚直に続けさせてもらえている、ということに対しては本当に感謝の気持ちがあります。

-ちなみに、今作『龍凰童子』には12曲目に「覚悟」という楽曲が収録されていまして、音的には"いなたさ"のある硬派なハード・ロック・チューンに仕上がっている一方、こちらの歌詞からは陰陽座としての意思を強く感じることができた気がします。

ずっと陰陽座を応援してくださっている方たちからすると、この歌詞というのは"また瞬火があのことを言っているな"と感じられるのではないかと思います(笑)。つまり、これは今までも折に触れ表明してきたことを、ここでまたかたちを変えて新しい楽曲にしたものなんですが、もちろん今回はこの局面だからこそ、思いを新たにしたり再認識したりしたところもありました。バンドをやるということに限らず、もっと大きい視点で捉えると、生きていくうえで必要だと思われる覚悟について歌っています。

-陰陽座の楽曲は凝ったタイトルのものも多いですが、その中にあっての"覚悟"という直裁な言葉選びからも潔さを感じました。

ええ。この言葉にそれ以外の意味はないですし、聴いてくださる方たちには、この言葉通りの重みを感じていただけるのではないかと思いますね。

-それから、今作『龍凰童子』のオープニングを飾るのはSE的なインストゥルメンタル 「霓(器楽奏)」と、それに続く実質的な1曲目となる「龍葬」です。先ほど、以前から"アルバム自体のコンセプト"はずっと温めていらしたとのことでしたけれど、アルバムの冒頭でどのような場面を描き出すのか、ということについても、当初からかなり明確なヴィジョンを持っていらっしゃったのでしょうか。

まず、ひとつの前提としては、20周年を超えた陰陽座の結成時からまったくぶれていない姿をそのまま作品にする、ということがもともとこの『龍凰童子』に課した使命でした。それに加えて実際に制作する段階では、黒猫が長い間歌うことができなくなっていた状態を乗り越えて、ようやくレコーディングの場では歌えるようになった、ということへの喜びや感謝を表明することは必然でしたし、それこそが現時点の陰陽座そのものの姿ということに違いありませんから、その意味において、冒頭にイントロダクションとなる「霓(器楽奏)」と、まさに黒猫の歌声から始まっていく「龍葬」を配置することは必然であって、これらの楽曲のアイディアが浮かんだ時点でこの始まり方しかあり得ないと考えていたんです。

-この"霓"は"にじ"と読むそうですが、意味合い的には一般的に言う虹とはまた少し違う意味がそこにあるようですね。

いわゆる虹は主虹のことを指し、気象条件によって虹よりもやや薄い色で空に出る副虹のことを霓と呼ぶんですが、この「霓(器楽奏)」は、陰陽座が歩みを止めていた頃を雨の降っていた時期だったとするなら、その雨が上がってやっと晴れ間が出てきそうだなという状況を、バンドがここから歩み出す場面と重ねたものになります。また、空に帯状のものが現れることから、虹や霓は東洋圏において龍の象徴としてよく喩えられるんですが、その際に虹は雄で霓は雌と考えるそうなんですよ。要するに、今回『龍凰童子』の冒頭で響く黒猫の歌を天に昇る龍に喩えるなら、ここでタイトルに使う字は"霓"が相応しいだろう、ということでこのようなかたちにしました。

-「龍葬」は壮大なスケール感を湛えた音像に仕上がっておりますし、パブリック・イメージとして定着している陰陽座らしさ、陰陽座の十八番なところが非常に明確なかたちで表出したものになっている印象です。

ヘヴィ・メタルと言いながらも陰陽座はこれまでいろんな曲をやってきているバンドではあると思うんですが、球種で言うなら「龍葬」は完全に直球でしょうね。

-では、そんな「龍葬」以降のアルバム展開については、今回どのような流れを重んじていかれることになったのでしょう。計15曲というボリューム感のなか、いかなる構成を意識されていたのかが気になります。

実際は他にも準備していた曲がたくさんあって、このアルバムに向けてはそこから純粋により良い曲たちを厳選していったんですが、先ほどもお話をしたように絶対的に入れる位置が決まっていたのは冒頭の「霓(器楽奏)」と「龍葬」だけだったので、あとは陰陽座のぶれない姿をそのまま作品化するべく、そのコンセプトにたる曲たちをできるだけ詰め込んでいくようにしました。たしかに、15曲を選んだあとにそれをどのような順番で並べていくか、どうすればさらに各曲が生きてくるのかという面では悩んだところはありましたけれども、基本的には、良質な曲がたくさん並んでいるだけでアルバムとしての価値は高まると考えていましたから、どう並べてもヘタなものができるわけがない気持ちで流れを考えることができたのも事実です。

-「龍葬」の次に3曲目の「鳳凰の柩」が来るという点は、この"龍凰童子"というアルバム・タイトルを踏まえたものになりますか?

このアルバムにおいての主たるモチーフは龍と鳳凰なので、ここも流れとしては"これしかないな"という感じではありましたね。

-せっかくですので、ここでは"龍凰童子"というアルバム・タイトルについてのお話もぜひうかがいたいです。

陰陽座には以前から使っているシンボル・マークといいますか、我々は家紋と呼んでいますけど、これは陰陽を意味するデザインの周りに龍と鳳凰を配したものなんですよ。そして、今回の"龍凰童子"というアルバム・タイトルは、龍と鳳凰の力を纏った音楽シーンにおける鬼の中でも強力な存在である童子で、要するに"龍凰童子"とは陰陽座そのものを表した言葉になっているんです。

-陰陽座にとってのいわゆるふたつ名を、この復活のタイミングでアルバムに冠されたのですね。これは実に感慨深い展開です。

以前から、陰陽座では龍と鳳凰というこのふたつの霊獣を、モチーフとしても存在としても大切にしてきていますので、陰陽座そのものを作品にするコンセプトで作ったアルバムに、それらを題材にした曲たちが入るのも必然なのかな、というところですね。

-童子という言葉に着目するのであれば、今作の5曲目にあたる「茨木童子」は、アルバムのリリースに先駆けるかたちで12月に配信が開始されておりました。改めて、今回「茨木童子」をまず世へ出した理由についてもぜひお聞かせください。

そこは純粋に"童子"という名前の響きで「茨木童子」から『龍凰童子』という流れが美しいということもありましたし、楽曲的にも「茨木童子」はパンチもありながら陰陽座ならではの色も濃いので、まず1曲だけをみなさんに聴いていただくならこれだろうと思いました。作り手側からすれば一気に全曲を聴いてほしいのが本音ではありますし(笑)、どれを選んでも良かったんですが、それでもどれかを先行配信曲として選ばなければならないのであれば、インパクトもあって、美しさと強さを併せ持った「茨木童子」を最初に聴いていただいたうえで、そこから『龍凰童子』がどんなアルバムなのかという想像を広げてみてほしかったんです。そして、いざ配信を開始してみると、ファンのみなさんからは"アルバムがより楽しみになった"という声をいただけているようなので、結果的にこれを選んで良かったなと思っています。