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INTERVIEW

DuelJewel

2025.09.17UPDATE

2025年09月号掲載

DuelJewel

Member:隼人(Vo) Shun(Gt) 祐弥(Gt) Natsuki(Ba) ばる(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

蝕という現象。それは占星術等の観点から吉兆と解釈されることもあるかたわら、凶兆とも受け止められてきた歴史がある。日蝕にしても月蝕にしても変化の象徴であることには変わりなく、今ここに"Eclipse=日蝕、月蝕"と冠したフル・アルバムを発表することになったDuelJewelは、曲ごとに大胆な程変化する様をここに見せつけてくれていると言えるだろう。メンバー全員が作曲に携わっているからこその多面性は、音としての強い輝きと鮮やかな色彩を放っているのだ。

-DuelJewelがこのたび発表するアルバム『Eclipse』は、"Moon Ver."と"Sun Ver."の2形態があり、前者には雅びやかな雰囲気を持つ「待宵⽉-MATSUYOINOTSUKI-」、後者にはヘヴィでアグレッシヴな「Rotten Sun」がCDの1曲目として、またDVDには同曲のMVとメイキング・ムービーが収録されているという違いがあります。このアイディアはいかにして生まれたのでしょうか。

ばる:今年の1月か2月あたりに曲作りをメンバー全員でした後、曲が出揃った段階ではまだリード・チューンを決めてなかったんですけどね。そこからレコーディングしてみたときに、まずは「待宵⽉-MATSUYOINOTSUKI-」のメロディの良さがとても際立っていたので、これを表題曲にしようという話になったんですよ。 ただ、去年『Aria』というアルバムを出したときの「A new beginning」も、いわゆる歌モノ曲だったので、バンド内から"激しい曲もプッシュしたほうがいいんじゃないか"って意見が出たんです。"だったらいっそ両方をリード・チューンにしちゃおうよ!"となり、「Rotten Sun」のほうを1曲目にしたバージョンのアルバムも作ることにしました。DuelJewelは楽曲の振り幅がもともとだいぶ広いバンドなので、今回はわりとその両極にあたる部分をそれぞれ1曲目にした感じですね。

-オープニングの楽曲が違うだけで以降の流れは全く一緒であるにもかかわらず、聴き比べてみるとアルバムの持つ印象がずいぶんと違って感じます。これは不思議な現象ですね。

ばる:いやほんと、まさにその通りだと思います。

-最後のボーナス・トラックが違うというパターンはよくありますけどもね。異なる1曲目を据えて2形態のアルバムを出すという試みは、斬新且つ冒険でもあったのでは?

ばる:サブスク利用も多い今の時代背景を踏まえると、曲順ってそこまで気にしない人も多いのかな? とは思う面もありますけど。とはいえ、コアな僕たちのファンや、CDを買ってくれる方たちは1曲目から聴いてくれる方が大半のはずなんで、たしかにこういうアルバムの出し方は1つのチャレンジではありました。特に、全く違う2曲の次からをどう繋げていくのか、構成していくのかはかなり綿密に考えましたね。

-では、ここからは各曲についてのお話を伺ってまいりましょう。激ロックという媒体の特性を考えると、"Sun Ver."の冒頭を飾るヘヴィ・チューン「Rotten Sun」について、真っ先に伺う必要があるように思います。この曲を作られたのはShunさんですね。

Shun:僕は無駄にジャンルの細分化をしてしまうオタクなところがあるんですが、この曲は、"カオティック・ハードコアってDuelJewelでやったことないじゃん"という発想から作り出しまして、思うがまま作ったら"こうなっちゃった"んです。ライヴでやっていくときには煽り曲として活躍していくと思うんですけど、音的には今の俺等のスキルを詰め込みたいなといろいろ考えて作っていった結果、どえらく難しくなってしまいました(笑)。

-それこそ、激ロック読者の大好物なものがここには詰まっている印象です。

Shun:普段からそっち系の音楽を聴きすぎてる僕が思うまま作った曲なので、ぜひ激ロックを読んでくださっている方たちには1回聴いてみていただきたいですね。

-「Rotten Sun」は歌詞もShunさんが手掛けていらっしゃいますが、曲を作り出したときから詞に込めたい想いや言葉は頭の中で固まっていたのでしょうか。

Shun:過去を振り返ってみると、僕が書く詞はメッセージ性が強かったり、きれいな言葉を並べたりするものもあったんですが、今回はエログロナンセンス的なものを書きたくなってしまったんですよね。メンバーからも"もっとひどい言葉を使ってもいいんじゃない"とか、"泥臭いような世界を書いてみてよ"っていう意見がありつつ、途中には数字遊びや四文字熟語なんかも入れてみました。

-某アニメ映画の名台詞である"40秒で支度しな"もいい味を出していますね。

Shun:バルス......じゃなくて、うちのばるがあの映画が好きなので(笑)、面白がってくれるかなと思って使ったんですよ。全体的にもインパクト勝負の詞にしたかったので、今回そこは我ながら上手くいった気がしてます。

-言葉数も多く、テンポも速いだけに、「Rotten Sun」はヴォーカリストからすると歌の難易度が高い曲だったのではありませんか。

隼人:それが、この曲に限らず今回のアルバム『Eclipse』では、あまり"ここでこういうテクニックを使おう"と考えて歌うことはしてません。楽曲の雰囲気とか世界観、歌詞ありきでそれに合う声、歌い方でわりと自然にやっていきました。

-ちなみに、「Rotten Sun」と「待宵⽉-MATSUYOINOTSUKI-」は、共にMVもシューティングされたのだとか。

Shun:「Rotten Sun」のMVを作るって聴いたときはちょっと震えましたね。"ほんとにこの曲でいける?"と思って(笑)。

ばる:仕上がりすごいですよ。激しい音楽のMVを撮るのが得意な監督さんにお願いしたっていうのもあって、CGとかも含めて映像の世界観がすごいことになってるんで。DuelJewelとしては視覚的な面でも新しい領域に踏み込んだ感じがあります。

-「待宵⽉-MATSUYOINOTSUKI-」のMVは、やはり和テイストなのでしょうか。

ばる:まさにこっちは和ですね。しかも、妖艶な隼人が見られますよ。

隼人:詞の主人公が花魁というか遊女なので、その役を僕がやらせてもらってるんです。

-なるほど、それは興味深いですね。「待宵⽉-MATSUYOINOTSUKI-」は作曲も隼人さんですが、この曲の生い立ちはどのようなものだったのかが気になります。

隼人:種火は僕が作ったんですけど、そこからメンバーの皆さんが考えてくれてこのような形に完成したんですよ。方向性としてはアルバムの隙間を埋めるといいますか、みんながそんなに書かないような曲を書こうというのが僕のいつもの基本スタンスで、作り出したときはこれがリード・チューンになるとは全く予想してませんでしたね。こういう和の雰囲気も最初は全然なくて。選曲会のときにばるちゃんが"これは和の方向にアレンジしたらいいんじゃない?"という意見をくれて、アレンジ自体は主にShunちゃんがまとめてくれました。

ばる:この曲のサビメロを聴いたときに"すごくいい曲だな"と感じると同時に、ふと和っぽい楽器の響きが頭の中で鳴ったんですよね。和風にしたらどうかな? って言ったとき、ShunもNatsukiも祐ちゃん(祐弥)も"それいいね"って言ってくれてたよね。

Shun:そんな感じだった気はします(笑)。

隼人:イントロとか間奏とかアウトロに入ってる弦楽器の音は、祐ちゃんからの"二胡を使ってみようよ"っていう意見を反映させたものですね。生の二胡を入れたことで、和なだけじゃなくもっとオリエンタルというか、広い意味でのアジアな空気も出たんじゃないかと思います。

祐弥:当初イントロはShunちゃんがオリエンタルなギター・フレーズを入れてくれてて、それがすごく良かったんですよね。でも、同時にバンド・サウンドが鳴っちゃうと若干そこが薄まっちゃう気がしたので、おんなじようなフレーズを二胡で入れたらどうかな? って思いついたんです。最終的には、より二胡っていう楽器の特性を活かすようなアレンジにしてもらって、今の形に落ち着きました。

Natsuki:ベースもこの曲では和音階まではいかないですけど、そういう雰囲気を出せるような音を随所に入れてます。

-「感情六号線」は作詞作曲共に祐弥さんがされておりますが、こちらはシャッフルのリズムを活かした大人っぽい楽曲に仕上がっていますね。

祐弥:隼人の艶があって低音が響く声には、きっとこういう曲が合うだろうなと昔から思っていたところがあったんですよ。隼人の妖艶、セクシーな部分を引き出す曲として書いたのがこれなんです。

-となると、セクシーさを醸し出す意味で詞の内容も定まっていったのでしょうね。

祐弥:これはバンドマンとか、何かしら芸事をやってる人と恋愛をしてる女性が主人公になってる歌詞ですね。どこかで小耳に挟んだ話がもとになってます。

-そこはあくまでも他人事であると?

祐弥:自分の体験じゃないですって! これがリアルな話だったら、午前4時に呼び出すとか相当悪い男ですよ。むしろ、実体験だったら書いてません(笑)。だけど、どこかにはありそうな話を生々しく描きたかったんです。地方から環状6号線=山手通りあたりに上京してきて、誰かを好きになることでいつのまにか没落していくような人生模様、でもやっぱり相手を嫌いになれないみたいな。そういう物語が「感情六号線」なんです。

-環状6号線をモチーフにしての「感情六号線」とは小粋ですねぇ。

祐弥:はい、小粋に作らせてもらいました(笑)。

隼人:トンチが利いてるもんなぁ。令和の一休さんかと思うわ(笑)。

-先程の「待宵⽉-MATSUYOINOTSUKI-」にも通ずるところかとは思いますが、この「感情六号線」も女性目線の歌であるということを前提にすると、歌われるときにはある種の演技要素も入ってくるものですか?

隼人:演じている部分はあると思うんですけど、それ以上に大事にしているのは、主人公の想いや真意の部分をどれだけ歌として表現することができるかですね。詞の文字情報を超えたところで、聴き手に対していかにたくさんのことを伝えられるかを考えながら歌っていきました。今回のアルバムはこれ以外にもそういう姿勢で歌った曲が多かったです。

-祐弥さんは今回「SPEED LOOP」という曲も作られていますが、こちらはアルバムの中でも異彩を放つサウンドになっていて新鮮です。

祐弥:EDMというか、打ち込みとバンド・サウンドの融合も、DuelJewelは長らくやってきてるバンドなんですけど、これはハード・トランスで、シンセの音色を活かしたくて作った曲ですね。

-「SPEED LOOP」の歌詞を書かれているのは隼人さんです。この詞は、やはり曲調やサウンドのテイストとシンクロするようなつくりを意識されていますか?

隼人:最初にこの曲のデモを聴いたとき、近未来的なビル群の中をバイクが駆け抜けていくような光景が浮かんだんですよ。イメージとして近いのは、僕が子どもの頃に観てすごく影響を受けた映画"AKIRA"の世界ですね。あれは1988年公開の作品だったと思うんですけど、35年以上経った今もバイクに乗ってる暴走族がいるって面白いなと感じるんですよ。テクノロジーが発達して便利になったところと、意外と昔と変わってないところもあって、人間にはそういう矛盾があるんだなっていうことを詞にしたかったんです。

-衛星兵器SOLは開発されてはいませんが、それでもすでに"AKIRA"の時代設定は超えてしまっていると思うと、我々が2025年の今を生きているというのはなんだか妙な気もします。

隼人:"AKIRA"の先の未来を生きてるって考えると面白いですよね(笑)。実は今回このアルバム全体を通して個人的には1つのテーマを意識していたところがあって、それは"自分が想像していたよりも先の世界に行くんだ"ということだったんですよ。例えば、もう何十年も前からずっと試験走行してたリニアモーターカーなんかもまだ実用化はされてないし、実際のテクノロジーは人間の想像を超えない部分が結構あって、ここからの未来に向けたヴィジョンを描くのがなかなか難しい時代ではあるけど、そこを超えて"光より速く"その先へ進みたいっていう気持ちをここには込めました。