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INTERVIEW

DuelJewel

2024.09.19UPDATE

2024年09月号掲載

DuelJewel

Member:隼人(Vo) Shun(Gt) 祐弥(Gt) Natsuki(Ba) ばる(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

アリアは美しく高らかに響き出し、聴く者の心をことごとく惹きつけていくことになるだろう。3月に発表したリテイク・アルバム『[RE]REVIVE』から約半年で、このたびDuelJewelはニュー・アルバム『Aria』を完成させるに至った。5人のメンバーがそれぞれに作曲を手掛けた今作では、作り手の個性が色濃く反映された仕上がりとなっている印象。壮大でドラマチックな楽曲から、アグレッシヴなヘヴィ・チューン、十八番の歌モノ等、今作は全編ハイライトであると言っていい。

-3月にリリースされたリテイク・アルバム『[RE]REVIVE』から、約半年でこのたびDuelJewelはニュー・アルバム『Aria』を発表されることになりました。しかも、今作では5人のメンバーがそれぞれに作曲を手掛けられております。結果として、今作ではそれぞれの楽曲に作り手の個性が色濃く反映された仕上がりとなっている印象ですね。

ばる:まさにその通りだと思います。各曲にそれぞれの"メンバー節"がかなり強く出ているので、たぶんファンの方たちはクレジットとか見ずに音を聴いただけで、どの曲を誰が作ってるのかが明確に分かるんじゃないかと思いますね。

-では、ここからは各人が曲作りの段階でどのようなことを考えていたのか伺ってみたいと思います。まずはShunさんからお願いします。

Shun:僕が今回作った2曲はかなりベクトルが違ってて、まず久々に歌モノをやりたいなと思って作ったのが「A new beginning」、ライヴでやったときのことを意識して作ったのが「影踏」だったんですよ。これまでもDuelJewelは自分が作りたいものをいろいろ受け容れてくれてきたバンドなんですが、今回も本当に今の自分がやりたいことを好きにやらせてもらった感じですね。

-「A new beginning」は、このタイトルの如くアルバムの冒頭を飾っている曲となります。サウンドとしては壮大な響きを持っているところが特徴的ですね。

Shun:それがこれ、当初はいわゆるギター・ロックみたいな感じで、全く違う雰囲気の曲だったんですよ(笑)。ただ、メンバーから"サビメロがすごくいいからこれをもっと活かそうよ"という意見や、そのために必要なアイディアをいろいろ貰ってこの形に着地したんで、自分は実質サビメロを作っただけって言ったほうが正しいかも?

ばる:そんなことはないでしょ。確かに肉付けはメンバーみんなでしたけど、基本的な骨格はShunちゃんが作ってるわけだから。

-初回限定盤のDVDには「A new beginning」のMVも収録されるそうですが、この曲はバンド・サウンドのダイナミズムと、ピアノの要素等の多彩な音が重なり合うことで、アルバムの冒頭から重厚な音像を打ち出す役割を果たしてくれることになりましたね。

Shun:今の時代にヴィジュアル系バンドがこういうアプローチってあんまりしないような気がする、って作りながら感じてたところは結構あります。

-そんな「A new beginning」の歌詞を書かれているのは隼人さんです。曲が上がってきた段階から、始まりのイメージのようなものを隼人さんも感じられていたのですか?

隼人:Shunちゃんから特段何か言葉を貰ったりすることはなかったんですが、曲を聴いたまま書いていったら自然とこういう内容と曲タイトルになったんですよ。例えば、ここには"新たな時代の幕が開く"っていうフレーズを入れたんですけど、それはこのところの自分が感じていることだからなんです。コロナ禍みたいな全世界共通の大きな出来事があって、そこから4年くらいを経ての今というのは歴史的に見ても新しい時代に入ってきていると思うし、その4年間でいろいろと暮らしの在り方とかも変わったところがあるなと感じつつ、きっとここからいろんなことを改めて見直そうよという動きが出てくるんじゃないかとも思いますしね。新しい方法や考え方を試してみて、それがもし上手くいかないとしても、さらに別の形を模索していこうみたいな時代が今なのかなと感じているんです。「A new beginning」は、そういう自分にとってのリアルな感覚と曲としてのストーリーを両方落とし込んだ詞にしてみました。

Shun:隼人は毎回とてもいい詞を書いてくれるという信頼感がありますし、この曲が"A new beginning"というタイトルになって、こういう内容で、アルバムの1曲目に相応しいものになったときはやっぱりすごく嬉しかったですね。

-一方、ライヴのことを意識して作られたという「影踏」でShunさんが大切にされたのはどのようなことだったのでしょうか。

Shun:ライヴでシャウトしたいっていう気持ちですね。実は、最近のアルバムだと僕のシャウトが目立つ曲ってなかったなということに今回は気付きまして。自分でも僕の持ち味はギターも弾きつつシャウトするみたいなところにあると思ってるんで、それを目立たせた曲を久しぶりにやろう! ということでこれを作りました。

-いかにもライヴ映えしそうな煽り曲でありながら、サビはきっちりキャッチーになっているところもポイントが高いです。暴れ倒した後に、ふと我に返って"あれ? で、どんな曲だったっけ?"とはならない造りになっていますよね。

Shun:そこ、すごい迷ったんですよ。サビをここまでキャッチーにしちゃってもいいのかな? とは思ったんですが、最終的にはこのサビが今までになかなかないようなフックになったのかなという手応えはあります。

-曲から感じる躍動感とリンクする「影踏」の詞からは、どこか情熱の迸りのようなものが感じられますね。

隼人:最初は恋愛的な物語として書き出したんですけど、人が無心で打ち込めるものとか、後先考えずに夢中になっちゃうのって素晴らしいことだし、自分が好きなものに正面から向き合っていこうぜ!! っていうメッセージのほうが、書いていくうちにだんだんと濃くなっていったのがこの詞です。あんまり賢くなりすぎると人生つまんなくなっちゃうよ、好きなものに対してはもっと素直になって行こうぜっていうことがみんなに届けばいいな、と思いながら書きました。

-ライヴの空間に似合いそうという点では、祐弥さんの作られた「神人絵」もアグレッシヴなモードの楽曲となっておりますね。

祐弥:DuelJewelのライヴはいつも、特に後半に行けば行くほど激しい感じになっていくので、そういう場面に似合うような曲ということを想定しながら作ったのが「神人絵」だったんですよ。即戦力になりえる曲にしたかったんです。だから、お客さんたちがここできっと頭を振るだろうなとか、ここはきっとジャンプするよねっていうことも意識しながら作っていった感じでした。そういう意味では、ライヴ・バンド DuelJewelとしての存在感を強く打ち出すような曲になったと思いますね。

ばる:しかも、この曲は前回のアルバムを作ったときにリード・チューンの座を争ったくらいの曲なんですよ。あれは90年代っぽいコンセプトの作品だったので、今回の「神人絵」でも僕は当時を彷彿とさせるようなフレーズ、そしてみんなが頭とか振りやすいリズムを意図的に叩いてます。このツタツタした感じとか、逆ダイとかやりやすそうなところ含めて、あえて"古"なことをやってるんです。最近は逆ダイっていう文化も薄れかけてるみたいで、イベントでそういう曲をやると初めて観たようなリアクションのお客さんもちょこちょこいるみたいで。DuelJewelとしては、ちゃんとヴィジュアル系の古き良きところを伝えていきたいんです。もちろん、今っぽいところも「神人絵」には入ってるんでこれはバランスも取れた曲だと思いますよ。

-ちなみに、この"神人絵"というタイトルは当て字のようですが。詞の内容からはおどろおどろしさも感じられます。

隼人:生きるも死ぬも紙一重、っていう意味がここには込められてるんです。テーマは曲を作った祐ちゃん(祐弥)から貰いました。矛盾を抱えながら人間は足掻き続けるし、その姿はしたたかだけれど儚くて美しくもあるというか。これはそういうことを描いた詞ですね。

-9曲目の「恋慕~Renbo~」も祐弥さんによるものですが、こちらは詞も手掛けられたそうですね。

祐弥:前から自分が書いてみたかったイメージを具体化したのがこの曲で、ノスタルジックな曲調と夏のイメージの詞を組み合わせたかったんですよ。そして最終的にタイトルで、ここで描いているのは恋慕なんだよっていうことを伝えたかったんです。詞そのものはそこまで恋愛色が強くはないと思うんですけど、これは幼馴染同士の恋の物語ですね。セリフを入れることで起承転結の流れを作りたかったので、隼人には歌ってもらうだけじゃなく、語ってももらいました。今回の2曲はそれぞれ方向性は違いますけど、どっちも我ながらすごく自分節が出た仕上がりになったなぁと感じてます(笑)。

-Natsukiさんは今回「完全すぎる不完全数」、「新宿の屋上には冷たい雨」、「ずっと、、、ずっと、、、」の3曲を手掛けていらっしゃいますが、どれもテイストは全く違います。これらはどのような背景から生まれてきたのでしょうか。

Natsuki:僕は今回、自分のやりたいことをそれぞれ3曲で形にしていった感じでしたね。「完全すぎる不完全数」はわりと最近作った曲で、このところは激しいタイプの曲を作ることが多かったから、そろそろ歌モノチックなやつを作りたいと思ったのがきっかけで作りだしたんです。ギターのアルペジオからメロディが乗っかっていって、バンドインするっていう曲は、今までうちにあんまりなかったものだと思います。

ばる:Natsukiの曲っていつも完成されてるしリズム的にも凝ってるんですけど、この曲は特に叩くのが難しかったですねぇ。手数も多いし不規則でほんと大変(苦笑)。

Shun:ギターもこれは過去最高に大変で、僕はこういうフレーズって弾いたことなかったんですよ。もう、とにかく必死に練習して必死に弾きました(笑)。

-「完全すぎる不完全数」は歌詞もやや難解というか、読み解き甲斐のある内容になっているように感じます。

隼人:これはNatsukiからイメージを貰って書いた歌詞で、仮タイトルは"8128"だったんですよ。"これは完全数なんだよ"っていうこともNatsukiに教えてもらったんで、そこからイメージを拡げていきました。まぁ、フィボナッチ数列とかいろいろと世の中にはありますけど、数字って人間が作り出したものではなくて、人間が発見したものなんですよね。それに言語とか文化は海を渡れば違うものになりますけど、数に関する概念、0に対する解釈とかはどこでも基本的に共通しているわけで、どんなジャングルの奥地に行っても1+1=2っていう答えは変わらないわけじゃないですか。それは当たり前なことのようでいて不思議なことでもあり、そもそも数字を生み出したのはどんな存在なのか? というところから聖書なんかもモチーフとして取り入れながら、ここでは自分なりにストーリーを組み立てていきました。

-かと思うと、ミドル・バラード「新宿の屋上には冷たい雨」にはドラマチックな表情が滲んでいて、どこか小説や映画のような風情も漂うような楽曲となっておりますね。

Natsuki:これは2006年か2007年に作ったデモをもとにした曲で、当時は選曲会で通らなかったんですけどね。"今これを改めてやってみたいな"と思って作り直したら、幸い採用されたんですよ。個人的にはギター・ソロもこだわった部分で、あれは僕が作ったフレーズをShunに弾いてもらってます。あと、録音したギター・トラックを僕が持ち帰って家のPCで新たにエフェクトを掛けてからエンジニアさんに渡す、っていう初めての方法もここでやってますね。オクターヴの感じがすごくいい音になってます。

-ソロを弾かれたShunさんからしてみると、このソロの肝はどのようなところです?

Shun:抑揚一発です。ピッキング強めだとダメだろうなと思ったし、最近はシングル・コイルで甘めの音みたいなのがバンド内でのブームになってきてるところがあるから、この絶妙なニュアンスの漂ってる感じは弾いててもすごいしっくり来ました。