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INTERVIEW

DuelJewel

2024.09.19UPDATE

2024年09月号掲載

DuelJewel

Member:隼人(Vo) Shun(Gt) 祐弥(Gt) Natsuki(Ba) ばる(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

それぞれの曲が歌としての強い存在感を持っている という意味でも"Aria"ってタイトルは相応しい


-なお、「新宿の屋上には冷たい雨」は隼人さんのハイトーンを活かしたヴォーカリゼーションも素敵な質感を生み出しておりまして、あのきれいさはさすがですね。単なるファルセットとも違いますし、あれはいったい......??

隼人:発声法としてはヘッドミックスという技術を使ってます。昔の自分にはもちろんできなかったんですが、今なら使えるし、この曲に合うなと思ったんですよ。

-「新宿の屋上には冷たい雨」の歌詞には深刻な場面が多く見られますね。その上、舞台となっているのが新宿という点に"昨今の病みと闇"というものを感じてしまいます。

隼人:この詞では飛び降りる人の気持ち、というのを書いてみました。だとしたら、やっぱり新宿かなって。あそこは不思議な街だし、魅力的な街だとも思う反面、悪い物事も極端な形で顕れやすい街だとも感じるというか。その街の中での愛の形の1つを、女性目線から描いてみました。感覚としては映画監督として物語を作っていくような、そういうスタンスに近かったかもしれません。

-その「新宿の屋上には冷たい雨」の後に続くのが、これまたNatsukiさん作曲の「ずっと、、、ずっと、、、」です。この曲の旋律からは、やけに昭和歌謡曲的な香りがするように感じます。この受け取り方は合っていますか?

Natsuki:合ってます、僕そういうの好きなんですよ(笑)。こういう哀愁のある曲はこれまでにもいくつか書いてて、それの最新版みたいな感じですね。

-隼人さんはこの「ずっと、、、ずっと、、、」を、どのように歌いこなしていこうと思われたのでしょうね。

隼人:ある意味これは"醒めた"状態で歌うようにしました。いや、当然ヴォーカリストとしては一生懸命に歌ってはいるんですよ? でも、そう思わせないように聴かせたほうがこの曲はより引き立つだろうなと思ったんです。主人公の女性の秘めた思いとか、諦めちゃってるのか諦め切れないのかっていう苦しい状態、そういうものをより繊細に表現するにはこの表現が必要で、こういう歌い方は自分にとっての新しい試みでもありました。

-DuelJewelのように長いキャリアを持つバンドから、挑戦や新しい試みという言葉が出てくるところは実に興味深いですね。そして、今回ばるさんが作られているのは「Underdog」と「Berserk」の2曲ですが、これらについても斬新さを感じるところがあります。

ばる:僕としてはメンバーのみんなが作ってきたいろんな曲たちのテイストも考えながら、バランス的に"こういう跳ねたリズムの曲があってもいいな"と思って書いたのが「Underdog」でした。音としてはジャパニーズ祭り太鼓の色も少し入れてあって、ライヴでやったときにはこの曲の中にコール&レスポンス的なお客さんたちとのやりとりが入れられたらいいな、と思っていたりもします。フロア・タムとか、バスドラから出る振動音だったり風圧みたいなもので、みんなの心と身体を思いっきりアゲていきたいんですよ。あと、タイトルの"Underdog"は負け犬っていう意味で、そこだけ僕が考えさせてもらったんですが、詞の内容自体は隼人に自由に書いてもらったこともあって、むしろポジティヴで面白いというか、若干チャラい内容になってるところがいいと思います(笑)。

-"やる気スイッチ 僕はどこにある?"、"スマホの画面だけ/無機質に光る"といった、誰にとっても身近な言語表現が使われていて共感しやすい内容でもありますね。

隼人:ダサく見える人の人生をわざとダサい歌詞で書く、っていうことをここではやりました(笑)。同時に、半ば自分自身を振り返ったところもある詞ですね。こういう時期だってあったりするのが人生だよね、ということなんですよ。浮き沈みを繰り返しながら、自分とは何者なのかを定義していくのが人生なんじゃないのかなと僕は思ってます。

-もう1曲の「Berserk」については、ばるさんからするとどのような想いを込めて作られた曲だったのですか?

ばる:これはそれこそ自分にとっての新しい挑戦をした曲で、ドラム以外の楽器のことはよく分かってないながらにスラップを入れて、それっぽく作ってみた曲です(笑)。

Natsuki:バチバチな部分を際立たせるために、この曲のベースは結構ローをカットしてますね。スラップ続きでエンディングまでずっとなんで、これをよくドラマーが書いたなと思ったし、僕としては"なんて大変な曲を書いてくれたんだ"と思いました(笑)。

-ベースだけでなく、この曲には各楽器隊の見せ場も織り込まれていますよね。

ばる:その通りです。ドラムもサビでツーバス踏んでて、急にメタルチックになってます。激ロック読者の方たちには特におすすめですよ。ぜひこの曲で盛り上がってほしいですね。

-さて。初回限定盤の最後を締めくくるのは隼人さん作曲、Shunさん作詞による「Ding-Dong」です。ここに来ての四つ打ちEDM的な曲調に新鮮さも感じますが、これはいかなる生い立ちを持った曲なのですか?

隼人:明るくて、イージー・リスニングな感じの曲が欲しかったんです。あんまりカッコ良かったり、いい曲みたいなものじゃなく、ヴォーカルもケロッてたりする曲を前から作りたかったんですよ。とは言っても、そういうのって自分個人は好きだけど、DuelJewelとしてやるとなるとタイミングとか出しどころが難しいなというのもあったので、今回はやっと形にすることができて嬉しいです。この『Aria』というアルバムを、ハッピーに聴き終われるような1曲を作ることが叶いました。歌詞もこれはShunちゃんに書いてほしかったのでお願いしたんですよ。

Shun:これは1回目の選曲会でデモを聴いたときから、頭の中に"Ring a Ding-Dong"っていう歌詞が降ってきてて。そうしたら、ちょうど隼人から"歌詞、書いてよ"と言われたんですよね。そして、この"Ding-Dong"っていう言葉は普通に鐘を鳴らすとか大騒ぎをするという意味の他に、愚か者とかバカという意味もあって、悪口として使われることが多いらしいと、今回いろいろ調べてたら分かったんですよ。それは面白いなと思ったところから、歌詞全体もサーッと書けちゃいました。内容としては弱い立場の男の恋の歌、っていう感じですかね。

-しかしながら、終盤の"どこまでも 君を連れてくよ"という一節からは頼もしさを感じることもできます。

Shun:そうっすねぇ......ただ愚かなままで終わっちゃうのもアレかなと(笑)。

-1曲目の「A new beginning」の詞を書かれたのは隼人さんですが、あの中にある"いつだって僕は側にいる"と、ここでの"どこまでも 君を連れてくよ"はどこか一貫しているとも感じられますし、それらのメッセージはDuelJewelから聴き手側へと向けられているものだと受け取ることもできるのでは? と感じます。

Shun:それ、言われてみて今気付きました。なるほどなぁ。

-ところで、今回の『Aria』通常盤にはDuelJewel結成後間もなく作られたという「insensible silence」が収録されております。こちらは初音源化されるものになるそうで、作曲はDuelJewel名義なのですね。

ばる:25年ぐらい前に作った曲を、今回初めてレコーディングしました。もともとこれは結成時に在籍してた下手ギタリストのTakashiっていうやつがイントロを作って、そこからShunちゃんが膨らませてできていった曲なんですよね。そのTakashiは未だに僕らと交流があるんで、今回アルバムに入れるとなったときには彼の了承も得て、作曲名義はDuelJewelにすることにしました。昔から応援してくれてるファンの方たちは、今回この曲がアルバムに入ることになったのを喜んでくれてるみたいで嬉しいです。メロディ以外の部分はアレンジを加えて生まれ変わりました。というか、自分たちでも"ちゃんとアレンジを詰めて録ったらここまでいい曲になるんだ!"ってびっくりしたくらいなんで(笑)、原曲を聴いたことがある人もない人もこれはぜひ楽しみにしていてください。

-何より、四半世紀前の曲とは思えないほど古臭さがないところがすごいですよ。

ばる:今思うと、当時よくやってたライヴハウスの店長さんは"10代でこんな大人っぽい曲をやるバンドはいないぞ"ってこの曲のことを褒めてくれたんですよねぇ。V系っていうジャンルを飛び越えたことを、あの頃からやってたことになるのかもしれません。

-こちらの歌詞は四半世紀と同じなのですか?

Shun:特に変わってないです。だから、今になって読み返すと書いた本人としてはめちゃくちゃ恥ずかしいですね(苦笑)。

-かくして、いろいろな意味で注目の「insensible silence」も含めて今回のアルバムには"Aria"というタイトルが付けられました。この言葉を選ばれた理由はなんでしたか。

ばる:ぶっちゃけて言うと、一番は言葉としての響きを最も重視して付けたのがこのタイトルですね。そして、イタリア語では独唱曲とかそういう意味があるらしいんで、今回のアルバムはそれぞれの曲が歌としての強い存在感を持っているという意味でも"Aria"ってタイトルは相応しいと思ってます。

-9月21日の浦和ナルシス公演を皮切りに、12月14日の池袋 harevutai公演まで続く"DuelJewel Autumn Tour 「AriA」"もこれから始まります。DuelJewelが奏でる、時に美しく、時に激しいアリアをどうぞ全国へと届けてきてください。

Natsuki:春のツアー("DuelJewel mini tour 「TIMESLIP」")に引き続いて、今回はフル・アルバムの曲たちを持ってのツアーですから、恐らくライヴごとに新曲たちが育っていくのではないかと思います。毎回どうなっていくのか、自分でもすごく楽しみですね。

祐弥:『Aria』は今まで以上に相当バラエティに富んだアルバムになったので、この途轍もなく拡がった振り幅をライヴの場でどう表現していくのかが重要だと思ってます。自分のことを鼓舞しながら、頑張っていきたいです。

Shun:これだけの楽曲たちをライヴでやっていくのは楽しみですし、たぶんツアーが終わる頃には一回り成長できてると思うんですよ。難しい曲たちもあるだけにツアーでもいろいろ挑戦をしていくつもりで、メンバー共々無事完走したいですね。

ばる:今回のツアーは本数も多くて、中には久々に行く場所もありますが、とにかく1本ごとのライヴをしっかりとやって、その日しか観られないって人たちのためにも、毎回"ここで終わってしまってもいい"というくらいの心掛けでやっていきたいと思ってます。この記事を見て気になったという方は、ぜひ各地の会場まで遊びに来てくれると嬉しいです!

隼人:去年の全国ツアー("DuelJewel autumn tour 2023 「FLARE UP EMOTIONS」")も、今回のアルバムも、自分にとっては想像を超えるくらいいいものになっていったんですよね。だからきっと、今回のツアーもいい意味で自分の予想が覆されていくようなものになるだろうし、ことごとく自分の想像を超えていくツアーにしていこうと思ってます。