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INTERVIEW

DuelJewel

2025.09.17UPDATE

2025年09月号掲載

DuelJewel

Member:隼人(Vo) Shun(Gt) 祐弥(Gt) Natsuki(Ba) ばる(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

同期を一切使わないで、単純にこの5人の音だけで勝負ができる曲にしたかったんです


-それから、今作においてNatsukiさんが作られているのは、既存曲を近年ライヴで演奏されている形にリテイクした「Moon Struck~LIVE edition~」と、新曲としては「⼈に⾮」となります。「⼈に⾮」についてはラウド感が強めな仕上がりですね。

Natsuki:ミックスチャーっぽい感じに、ラウドっぽいのを交ぜた曲がずっと欲しかったんです。でも、それを実現するには打ち込み要素の部分で難しいところがあって、なかなか形にすることができてなかったんですね。今回はこの曲のイントロに入っている音を、新しくシンセのプラグインとしてゲットすることができたので、その音を軸にしながら広げていった感じです。

-「⼈に⾮」は相当ライヴ映えしそうですね。

Natsuki:むしろそこ1点を狙って作った曲なんで(笑)。ツアーで各地のフロアがカオスな感じになってくれると嬉しいです。

-"⼈に⾮"とタイトリングされているだけあって、こちらは世俗をディスったかのような詞が特徴的です。だいぶシニカルですよね。

隼人:「⼈に⾮」の詞はNatsukiからの提案を取り入れながら書いていきました。人間の欲望というものはいつの時代も諸行無常だなぁという内容ですね(笑)。あの世にはお金も家も車も何も持って行けないのに、それでも最後までいろんなものに執着するのが人間の習性なんだろうなと思いますし、その良し悪しを論じるつもりとかは全くなくて、俯瞰で見た人間という動物の面白さが主題になってます。

-「DISTINATION」は重心の低い楽曲で、アルバム『Eclipse』を、引き締めてくれるような役割を果たしてくれているようにも感じますが、作曲者のばるさんとしてはどのようなことを意図しながら作られたのでしょうか。

ばる:ミドル・テンポで重たくて、ギターの太い音を前面に打ち出した曲ってあんまり今までのDuelJewelにはなかったんですよ。それを今回は、ライヴでみんなと盛り上がれるような曲として完成させたいっていう気持ちがありました。

-歌詞の内容も「DISTINATION」はいたって重いですね。

隼人:これは「SPEED LOOP」で話したことと近い感覚を持ってる歌詞で、状況としては"未来を選べる分岐の手前にいる"感じなんです。もうなんとなく「DISTINATION」みたいなことは起きているけど、だとしたらそこからどんな選択をするのか? っていうことなんですよ。未来に対する警笛を鳴らしている曲だとも言えるかもしれません。

-一方で「Last train」は詞も曲もばるさんが作られた曲となります。こちらはざっくり言うと......THEメロスピですかね?

ばる:そうですね。僕の中では完全にメタルとして作りました。

Shun:僕もこれはメロスピだと思います。

ばる:そもそもDuelJewelはこういう曲を得意としてるんですけど、曲数としてはそんなに多くないんで、今回は改めて"こういう面もあるよ"と押し出したかったんですよ。シンセとかはわりと現代的な音にしてありますけど、ギター・ソロはテクニカルな感じでShunに弾き倒してもらいましたね。激ロックな人は、きっとこの曲も気に入ってもらえるんじゃないかと思います。

Shun:ばる君に"ギターは任せます"って言ってもらったので、僕としては好き勝手にやらせてもらいました。でも、このソロって難しそうに聴こえてそんな難しくないんですよ。とても合理的なことをやっているので、そこも含めてこの曲のギターは、今回のアルバムの中でも一番納得のいくプレイができました。聴いてくれる人たちに対しても、この曲は"コピーしてほしいな"くらいに思ってますね。

-そんなギター・ソロの後にはドラムの見せ場もあって素敵です。

ばる:あぁ、あのオカズが入ってるところですね? あの部分から切り替わってまたサビに行くっていう王道な展開も、意外とDuelJewelではやってなかったんですよ。それをあえて盛り込みました。

-詞には"未来を超えてゆけ"という1節があるのですけど、これは先程の隼人さんのお話との繋がりが感じられます。これはばるさんが"寄せた"のですか?

ばる:それが、隼人の書いた「DISTINATION」の歌詞と偶然リンクしたんですよ。アルバムの曲順としては逆になってるんですけど、物語的には、「Last train」の目的地が「DISTINATION」みたいになってる感じがしますね。

-それから、オノマトペ的なニュアンスも含んでいるかのような「死と死と」は詞も曲も隼人さんです。この曲からはなんとも言えないノスタルジーを感じました。

隼人:これは珍しく歌詞先で作った曲でした。詞を書いてそこにメロディを乗せていって、それをNatsukiがアレンジしてくれたんです。

-サウンド的にはヴィンテージっぽいギターの音がフィーチャーされていますが、アレンジャーとしてのNatsukiさんがここでこだわられたのはどのようなことでしたか。

Natsuki:隼人からは"ちょっと変な雰囲気なんだけど、すごく気になるみたいな感じのフレーズを作ったから、それを活かしてほしい"っていう要望があったんですよ。そうするには今までのDuelJewelで使ってこなかったギターの音を使うのがいいんじゃないかなと思って、ストラトのジャカジャカとしたカッティングをああいう形で入れたんです。たぶん、これはヴィジュアル系でよく使われるような音の対極にある音ですからね。逆に、普段ヴィジュアル系を聴いてる人は、"気になって引っ掛かる"音になったんじゃないかと思います。レコーディングでは祐弥が弾いてくれて、さらにこの曲の世界を大きく広げてくれました。

-このギターの音は70年代どころか、60年代的な響きになっていませんか。

祐弥:そっちに結構寄せてます。音色もそうですけど、今や現代音楽ではあまりやらない手法を盛り込んでるので、そういう時代感が出てるんだと思います。隼人、Natsuki、エンジニアさんともじっくり話し合いましたし、そういう音楽をYouTubeでめちゃくちゃ観て勉強もしましたね。アンプはフェンダーのコンパクトなのを使いました。いろいろ研究ができたんで、ギタリストとしてはこの1曲で得たものが相当あります。

-そういう意味で音楽的にはとても面白い曲である反面、"死と死と"というタイトルもそうですし、歌詞世界もずいぶんと病んで追い詰められた感じになっていますね。

隼人:でも、どっか能天気なところもあるんですよ。僕等も昔そうだったから分かるんですけど、若いときって、自分の中にしっかりした基準みたいなものがまだ形成されてないじゃないですか。それって大人からすると危なっかしく見えても、本人たちはあんまりリアルにヤバいとは思ってないこともあるような気がするんですよね。「死と死と」ではそういうもんだし、それでいいんじゃないの? ってことを書いてるんです。

-音像はかなりレトロですが、詞の内容としては現代のメンヘラ少女がモチーフになっているということでしょうか。

隼人:書き出したら結果的にそうなったっていう感じですかね。若い子だけじゃなく、こういうのは大人でもあり得ることだと思うし。なんなら、データ的には精神的なつらさを感じてる人の数は大人のほうが多いはずですから。年齢とか関係なく、結構みんな日々をスレスレのところで生きてるんじゃないでしょうか。

-死生観を描いている楽曲としては、Shunさんが作曲をされて隼人さんが詞を書かれている「鮮⾎噴き出すこの死の中で」も、今作の中で強い存在感を示していますね。

Shun:これは曲を作った後、隼人に"詞はこんな感じで"って僕から連絡した覚えがあります。というのも、イントロとかアウトロのギター・リフが攻め攻めで、自分の趣味全開な感じの音になっているのに対して、Aメロあたりには僕の思うDuelJewelらしさも入ってるんですけど、なぜかその辺がこんな歌詞の内容と自分の中では繋がったんですよ。そして、隼人が書いてきてくれた詞は、"ちゃんとこっちの意図を掴んでくれてるなぁ"っていうものになってました。これは僕が書いた今回の(隼人作詞の)2曲共そうで、さすがだなって改めて感じましたね。

隼人:人間って、生きるために死と直結した行動を取ることがある生きもののような気がするんですよ。そして、鮮血が噴きだして死に向かっていく瞬間はきっと崇高な瞬間なんだろうなと思うんですね。その昔、飢餓や病気で野垂れ死んでしまう人が多かった時代のエピソードとして、修道女のような人が死の間際を迎えた人たちに愛と祈りを捧げていたところ、ある人は"あなたの崇高な行為で私の死を穢さないでくれ"みたいなことを言ったらしいんですよ。これは僕の死なので関わってくれるなという意味で。

-なるほど。人の尊厳とは何かを深く考えさせられるお話です。

隼人:そうなんですよ。彼は修道女を批判したわけではなくて、自分の死と向き合いたかったし、その時間を大切にしたかったっていうことなので。作り話かもしれないけど、その話を知ったときに感じた"人は死にゆくときに何を思うのか"ということを、ここでは詞として表現したんです。今この死にゆく俺を見ろっていうようなことですね。

-なお、Shunさんが書かれているもう1曲の「Only Love」は、『Eclipse』を締めくくる重要な役割も果たしてくれています。タイトル通りに曲にも詞にも愛が溢れていることで、聴き手に対しては最後に救いを与えてくれる曲になっておりますね。

Shun:ありがたいことに、そういう感想は他でもいただいてます。僕としては青春パンクっぼい曲を、同期を一切使わないで作るっていうのがテーマだったんですよ。単純にこの5人の音だけで勝負ができる曲にしたかったんです。

-ピュアな音に重なるのが隼人さんのピュアな歌詞という構図もいいですね。

Shun:この詞は隼人に"好きに書いて"って言ったんですよ。そうしたら、歌い出しのところで"愛が全てなんて歌ったら/笑われるかな"って詞が返ってきて、僕はもうそれを見ただけで"最高です!"って返事しました。嬉しかったですね。ほんと、これはいい曲になったと思います。

-残酷な現実や不条理な出来事も多い世の中だけに、だからこそ"愛が全て"と信じたい気持ちはありますものね。

隼人:子どもの頃も、大人になってからもそうですけど、愛ってなんなのか全然分わからなかったんですよ。どういうことなんだろう? と考えたときもあったけど、愛を定義付けするのってすごく難しいんですよね。でも、自分なりに探してる愛というものを、ここでは1つの形にすることができたと思います。

-「Only Love」は今後の"DuelJewel Tour 2025「腐敗した太陽、望まれた月」"において、ファンの方々との絆をより強めてくれる曲にもなっていきそうですね。

ばる:今回のアルバムは"Eclipse"っていうタイトル自体がいろんな意味を持っていて、DuelJewelとしてはまさに多面性を提示することができたと思うんですよ。だから、今度はツアーでもそれを提示していきたいと考えてます。僕等の場合、わりといろんなところでよく言われるのが"DuelJewelって歌モノが多いのかと思ってたら、すごく激しい曲もやるんだね"ということなんですよね。「待宵⽉-MATSUYOINOTSUKI-」と「Rotten Sun」みたいに対極な曲もあれば、その間をさらにたくさんの曲たちが埋め尽くしているので、ぜひ多面的なDuelJewelの世界を体験しに来てください。

Shun:この『Eclipse』を作ったことでライヴ映えする曲が増えたんで、ツアーがめっちゃ楽しみですね。きっとお客さんたちも、やってる俺等もワクワクできるライヴをやっていけるんじゃないかと期待してます。手前味噌ではありますが、ギターもパフォーマンスもシャウトも、全て今その瞬間に賭けるというモチベーションで生きてます。アルバムもクオリティの高いものが作れたので、とにかくライヴでも行けるところまで行きたいです。

Natsuki:アルバムのツアーって回を重ねるごとに変化していって、各地でいろんな盛り上がり方をしていくが面白いところなんですよ。そこを今回も楽しみたいですね。

祐弥:レコーディングが終わって、CDが盤として世の中に出た時点で、作品としてのアルバムは完成してるとは思うんですけど、DuelJewelにとってはライヴこそが生業という面もありますからね。お客さんたちと『Eclipse』の曲をここから一緒に育てていくことで、さらなる完成形を目指したいと思います。

隼人:DuelJewelとして今やれる最大限のことを『Eclipse』に詰め込めたので、あとはそれがツアーの場で、3ヶ月くらいかけてファイナルを迎える12月までにどう変化していくのかを楽しみながら、日々のライヴをやっていこうと思ってます。

Shun:ツアー・ファイナルでみんな笑顔になって、心から"いいツアーだったね。また成長できたな!"って言えるようにしたいよね。