INTERVIEW
PaleNeØ
2025.07.15UPDATE
2025年07月号掲載
Member:ほほ美(Vo) AYARI(Gt) REOTO(Gt/Vo) YONA(Ba)
Interviewer:山口 哲生
昨年12月に1stアルバム『SCØRE』を、今年3月にはマキシ・シングル『Raison d'etre』を発表したPaleNeØが、早くも2ndアルバム『FORTISSIMØ』を完成させた。凄まじい勢いで突き進んでいく4人の今を、そのまま切り取ったようなラウド・ナンバーから、予測不能の展開を擁した楽曲に、ライヴの定番曲、REOTOが作詞作曲を担当した壮大な組曲「死者の書」まで、どれも超強力。さらに限定盤には、昨年即完売となった自主制作1stミニ・アルバム『ØCTAVE』の最新リマスター盤が付属と、超濃密な一枚に仕上がっている。自信作について4人に大いに語ってもらった。
大人な一面を見せられるアルバム。かわいい印象を踏み越えて、かっこいい一面、強い一面をすごく前に出せた
-2ndアルバム『FORTISSIMØ』が早くも完成しました。前作『SCØRE』のインタビュー(※2024年11月号掲載)で、バンド内で楽曲を"パレオ曲"と"ネオ曲"で分けているというお話をされていますが、今回もそれぞれの方向性の楽曲が収録されているし、1曲の中でもパレオ的な部分とネオ的な部分が溶け合っているところもあって。いい塩梅で上手く混ざり合っている印象もありました。まずはアルバムを完成させてみて、今どんな感覚があるのかお聞きしたいんですが、ほほ美さん、いかがでしょうか。
ほほ美:一体感のあるアルバムになったかなと思いますね。後半の組曲(「組曲『死者の書』」)がパレオで、それより前に入ってる曲がネオ寄りみたいなイメージなんですが、今回もいい感じに融合した一枚になってるかなと思います。あと衣装がかわいい!
REOTO:(ほほ美が)衣装を考えたので。
-どういうところから考えていったんですか?
ほほ美:今回のMVは強くて激しい曲にしようという話があって。ここまでキャッチーなものが続いていたんですけど、PaleNeØってライヴはめちゃくちゃ激しいので、それに合わせて衣装も強いイメージにしようと。でも、強い女性となったときに、女剣士みたいな感じじゃないよね? って。それで、前回のアルバムに「in Gloria Dei」っていう曲があって、私がすごく好きな曲なんですけど、そういう方向にするのもいいんじゃない? となったんです。それで"赤いストラ(司教等が首から掛けている紋章入りの帯)を使うといいんじゃない?"という案が出て、こういう方向性になりました。
-なるほど。ほほ美さんは『SCØRE』のインタビューで、「in Gloria Dei」をゴリ推ししてましたもんね。
ほほ美:(笑)ああいうの大好きなんですよね。
-となると、今作の後半は大好物が続くという。
ほほ美:そうです! でもまぁ、好きな服を着てやれたらなんでも好きなんで! 衣装が一番大事って思ってる人間なんです。
-たしかに大事ですからね。AYARIさんは『FORTISSIMØ』を完成させてみて、改めてどんな一枚になったと感じていますか?
AYARI:私もパレオとネオのバランスがいい感じになってるかなって思いますね。最後の組曲の印象が結構強いと思うんですけど、前作の『SCØRE』よりは強めで暗めで、ちょっと大人っぽいというか。今回は結構激しめのリフで始まって、サビはちょっとゆったりした感じの曲が多いので、前作とはまた違った私たちの一面を出せてるんじゃないかなとは思います。
-YONAさんはいかがでしょうか。アルバムを完成させてみた印象というと。
YONA:アルバムとして聴いたときに感じたことは、"懐かしさ"というか。理由はちょっと分からないんですけど、どの曲にもパレオみがどこかにあるような感じがあって、上手く融合している感じの曲が今回は多いかなって思います。ベースで言うと、AYARIも言ってたんですけど、サビが結構ゆったりというか、4分(音符)でずっと刻んでる曲が多いので、激しさの中にも落ち着きがあるところを全体的に感じられるアルバムかなって。
-では、REOTOさん、お願いします。
REOTO:僕も『SCØRE』とはまた違う印象があって、ちょっと成長したPaleNeØ、次のステップに進んだ自分たちの新しい一面、大人な一面を見せられるアルバムかなと思っていて。『SCØRE』のときは、「CRAZY & NOiSY & CUTiE MAGiC!」みたいなキャッチーで明るい曲や、「不眠飛行」みたいなライヴでみんなで盛り上がる曲がいっぱい入っていて、明るくてかわいい女の子たちっていう印象があったと思うんですけど。今回はちょっとそこを踏み越えて、かっこいい一面、強い一面をすごく前に出せた作品にできたかなと思います。あと、組曲という新しい挑戦もして、自分の中ですごくいい経験ができた作品に仕上がりました。
-組曲については後ほどじっくりお聞きしますね。今作には「誰」と「ギルガメシュ闘争記」のアルバム・バージョンが収録されているのと、限定盤には即完売となった『ØCTAVE』のリマスターCDが付属されていて、過去をアップデートさせている面もあるわけですが、この2曲を入れようということになったのは?
AYARI:この2曲はまだ円盤に入れてなかったんですよ。
YONA:「誰」と「ギルガメシュ闘争記」は最初に出した音源(2023年リリースの1stデジタル・シングル「PANORAMA」)のカップリングなんですけど、未だにライヴでも現役でやっていることもあって。
REOTO:ライヴでやったら絶対に盛り上がるし、初見の方も聴く機会が多い曲ではあるんですけど、まだCD化されていないからもったいないよねって。
-そこも改めてしっかり届けようと。今回MVを撮影されているのが「f -フォルテ-」と「Crowd Surf Rider」の2曲ですが、まずは「f -フォルテ-」に関して。歌詞はREOTOさんが書かれていますが、聴いたときにどんな印象を持ちましたか?
REOTO:デモをいただいたときに、イントロからワクワクが止まらなかったです。途中でかっこいいブレイクもあって、落とすところはしっかり落とす。緩急が付いていて、PaleNeØらしいと言えばPaleNeØらしい、メンバーみんなの強みを出せるすごくいい曲だなと思いました。
-歌詞に関しては、そのサウンドに合った強いものをというイメージはあったと思うんですが、どんなふうに書き進めていきましたか?
REOTO:この曲をMVにすることが決まる前の段階で、アルバムのテーマを"フォルティッシモ"にしようというのが先に決まっていたんです。ここまで"ØCTAVE"とか"SCØRE"とか、音楽用語でアルバムを出してきていたことと、『SCØRE』に"アレグロ"という曲があって、そこから"Allegro Agitato"ってワンマン・ツアーを回ったんですけど、それに絡めて、その先のPaleNeØを表すような言葉にしたいよねとなったので、最初はアルバム・タイトルを"フォルテ"にしようと思ったんですよ。"フォルテ"だったら音楽の経験があまりない方でも分かりやすいかなと思ったんですけど、ちょっと物足りないかもしれない。フォルテで止まっていいのか? じゃあもうちょっと強くしようということになって"FORTISSIMØ"にしたんです。
-そういう変遷があったんですね。もっといこうと。
REOTO:それで、「f -フォルテ-」を聴いたときに、サビもすごく素敵なんですけど、サビに入る前のBメロというか、落とすところがもしかしてすごく大事になってくるんじゃないかなと思ったので、そこにキーワードとして、"放つ f -フォルテ-"って歌詞を置きました。
-実際すごく耳に残るんですが、その前にある"刑期満了"というワードもインパクトがあるなと思いました。
REOTO:僕は法学部出身で、刑務所の獄中のことを扱う講義を積極的に取って勉強していたので、そういうワードが出てきやすいのもあったと思いますね(笑)。あまり音楽で馴染みのないワードを入れて、PaleNeØの個性として伝えたいなと思っていたことと、曲の印象的には暗いけど、サビで一気に視界が開けて光が降り注いでくるようなイメージがあったので、しがらみから解放される感じを書きたいなと思って。それはこの曲のテーマでもあります。学校とか会社とか、何かしら組織に属していると、いろいろあるじゃないですか。いいこともあるけれども、やっぱり嫌なことやつらいことがいっぱいあって。だけど、卒業なのか転職なのか、いつかは必ずみんな解放されて、自由に次の道へ進んでいく。その様子を獄中生活に例えて書いてみました。
-ほほ美さんはこの曲にどう臨みましたか? この曲はシャウトもあるし、パンチのある歌になっていますけど。
ほほ美:今まで曲によってはかわいい一面があるものもあったんですけど、この曲はそういうのは全くなしで、かっこいいイメージがビシッと伝わるような歌い方をしようと思ってました。でも、それもそこまで意識してなかったかもしれないです。この前出した「Raison d'etre」は、歌い方をいろいろ考えたんですけど、「f -フォルテ-」はもうそのままというか。歌いやすいキーで作ってくれているのもあって、私の芯の通った強い声を存分に出して歌ったっていう感じですね。でも、シャウトは結構気を付けました。私はあんまりシャウトのパターンが多いほうではないんですけど、ちょっと細くしてみるとか、低くしてみるとか、いろいろやってますね。あとはもう、歌詞がやっぱすごいので! ラスサビに行く前の"歪な賞と刑期を召し上がれ"とか。
REOTO:あ、言い忘れてた(苦笑)。
ほほ美:言い忘れてると思った(笑)。この曲、仮タイトルが"賞と刑期"だったんですけど、そこは"ショートケーキ"と掛けてるんですよ。
REOTO:歌詞カードを見ずにサラッと聴いただけだと、"なんで突然ショートケーキ出てきたん?"ってなるかもしれないんですけど。
ほほ美:だからレコーディング中にそれを発見して"えぇ......!"って。
REOTO:言ってた(笑)。
-というか、仮タイトルが"賞と刑期"だったというのもなかなかですね(笑)。
AYARI:タイトル迷ってたよね?
REOTO:めっちゃ迷いました(笑)。ずっと前から"賞と刑期"っていうタイトルの曲を作ろうと思って、ずっとメモに書いていたんです。刑期を終えた人間を讃えるものにしようと思って。
-では、AYARIさんはどうでした? 「f -フォルテ-」をレコーディングしてみて。
AYARI:これはどの曲にも言えるんですけど、ギターのフレーズがどのセクションも違うので、覚えて練習するのに結構苦労しましたね(笑)。ギター・リフから始まり、その後にツインのフレーズが入ってくるんですけど、PaleNeØってそういう曲が意外となかったんですよ。シンセを使うものやリフものが多かったんですけど、やっと来たなと思って嬉しかったですね。あとは、刻みが多い曲なので、ダウン・ピッキングが疲れます(笑)。
-シンプルに(笑)。
AYARI:めっちゃ速いんですよ(苦笑)。弦飛びもありますし、ギター・ソロも今までと違っていて。突然半音ずつ上がっていくかき鳴らし系のソロから始まるんですけど、7弦でかき鳴らしって時点で珍しいですよね(笑)。その後に速いやつが来るかなと思わせて、激しさの中に儚さみたいなものもあるフレーズで。ただ速いだけじゃなくて、ストーリー性が分かりやすいギター・ソロになってるかなと思います。
-YONAさんはいかがでしたでしょうか。
YONA:イントロから物語が始まった! みたいな印象があるんですけど、みんなでユニゾンしているリフで弦飛びがあって。そこはちゃんと音が出るようにすごく気を付けてます。曲としては、細かいキメがあったり符割りも結構複雑だったり、さっきAYARIも言ってましたけど、パターンが多いんですよ。1番と2番で全然違う場所もあって、私もそれを覚えるのがすごく大変でしたね。あと、2番のAメロとBメロの間にちょっとしたブレイクがあるんですけど──
AYARI:ああ(笑)。
YONA:そこのリズムが、単純だけどポリリズムみたいな感じになっていて。そこをドラム含めて楽器隊で合わせるときにすごく苦労しました(苦笑)。こうだよね!? こうだよね!? って何回もやっていて。今でもちょっと苦戦してます。
REOTO:集中しないと間違えちゃう(笑)。
-(笑)早く身体に入れないとですね。
YONA:はい(笑)。あと、ベースは高い音で動いている飾りみたいなフレーズが結構出てくるので、そこがポイントでもありますね。