LIVE REPORT
PaleNeØ
2025.05.11 @代官山SPACE ODD
Writer : 杉江 由紀 Photographer:らいち
完全なる無法地帯のようでありながら、この夜のPaleNeØがライヴハウスの中に創出してみせたのは、殺気とは異なる覇気に満ちた空間であった。また、それはとめどなく自由なものであると同時に、自由を守るために必要な秩序までも兼ね備えていたと言えるだろう。
"今日PaleNeØのライヴを初めて観るという人もいるかもしれませんが、私たちはリフト、モッシュ、サーフ等なんでもアリなライヴをやってるバンドでございます。だけど、それをやるっていうことは危険も伴うっていうことでもありますからね。皆様の思いやりがあってこそ、PaleNeØのライヴは成功します。ということで、暴れる人も、暴れないで楽しんでくれる人も、一緒に共存しながら楽しんでいってほしいです。よろしくお願いします!"(ほほ美/Vo)
2023年春に始動して以来、ここまで約2年の間にライヴ・バンドとしての研鑽を着々と積んできたPaleNeØは、昨年12月に待望の1stフル・アルバム『SCØRE』をリリースした後からここに至るまで続行してきた、リリース・ツアー"PaleNeØ アルバムリリースツアー「Allegro Agitato」"でも、さらに経験値を高めてきたらしく、この代官山SPACE ODD公演においては、1曲目のパワー・メロディック・チューン「アレグロ」から、フル・スロットル状態のパフォーマンスを展開することに。
当然、バンド側の発するハイエナジーな音に煽られる形で客席フロアでは早々からリフト、モッシュ、サーフに興じる観客たちが続出したのは言うまでもない。ただし、どれだけフロアが激しく荒ぶろうともサーフ勢がステージ前に落下したり、バンド側のステージングに支障を来したりする事態は絶対に起こらず、まさに観客同士が秩序をそれぞれに持ちながら、"PaleNeØのライヴ空間を守っている"様子が窺えた点は実に頼もしかった。ファンはアーティストを映す鏡とはこれいかにというやつである。
表情豊かな歌を聴かせる一方、フロントマンとしての絶妙な舵取りをしながら、バンドもライヴ空間も力強く牽引していくほほ美。7弦ギターを駆使しながら、鮮やかなタッピングや歪んだ音でのエグいプレイを容赦なく繰り出すAYARI。ギターを弾くのにとどまらず、絶対音感を活かした作編曲、作詞まで手掛ける天才肌で慶應義塾大卒な上に日本語、英語、スペイン語に精通したトリリンガルなおまけに、人間ではなくアンドロイドという情報が大渋滞なキャラクターを持ったREOTO。グリップ的な部分で男性でも扱うのがなかなか難しいとされる6弦ベースを、にこやかにかわいくブリブリと指弾きで唸らせまくるYONA。4人が4人共違った意味で一筋縄ではいかない個性を持っているPaleNeØは、音楽的にも多彩でヘヴィな曲からポップ・センスの詰まった曲まで幅は相当広い。恐らく、このバンドは掘れば掘る程面白いタイプのバンドなのではなかろうか。
"今日はツアー・ファイナルですが、7月からは次の全国ツアー[PaleNeØ ツアー2025 "FORTISSIMØ"]が始まります。みんなにもっといろんな楽しさを味わわせたいと思っているので、これから先もPaleNeØにずっとついてきてください!"(ほほ美)
ちなみに、ダブル・アンコールでは、3月にリリースされた新曲「Raison d'etre」をライヴ初披露する一幕もあり、ここでは、AYARIとYONAによるツイン・スラップがさらりと曲に組み込まれていたところも、1つのハイライトになっていたように思う。これをいかにもなドヤ顔で見せつけるわけでもなく、しれっとやってのけるあたりがまた良いではないか。
新たな音や、刺激を欲する者たちよ。PaleNeØの創出する無法地帯に集結せよ!

- 1