INTERVIEW
PaleNeØ
2025.07.15UPDATE
2025年07月号掲載
Member:ほほ美(Vo) AYARI(Gt) REOTO(Gt/Vo) YONA(Ba)
Interviewer:山口 哲生
-先程から"セクションによって全然違う"というお話が出てきていますが、もう1曲MVを撮影している「Crowd Surf Rider」に関しては、もうこれはなんなんだ!? ぐらいの感じになってますよね。一言で説明できない(笑)
AYARI:ジャンルを説明できないですよね(笑)。最初に聴いたときは、ギター・リフから始まるんだと思ったんですけど、そこからドラムが2ビートになって、メロコアっぽい明るい曲だと思ったら、その後に激しくなって。そっち系の曲なのかなって思ったら、途中でクリーンになるじゃないですか。あれはなんて言うんですかね。
-ちょっとR&B的な感じというか。
AYARI:そっちのノリも出てきたり。で、最後にメジャーに転調して。
ほほ美:カオス。
AYARI:うん。カオスですね。カオスって言葉がぴったり。曲名"カオス"でいいんじゃないですかね。
ほほ美:変える?
REOTO:シンプル(笑)。何がカオスなのか聴きたくなっちゃう。
-そのカオス感にワクワクしました。
AYARI:そうですね。歌詞に"モッシュ"とかも入ってますけど、ライヴハウスのカオスな雰囲気を感じられるような曲なのかなとは思います。
-たしかにそうですね。YONAさんはどんな印象を持ちました?
YONA:イントロを聴いて、アニメのオープニングかな? って思いました。
REOTO:青空の下みたいな。
YONA:でも、その後に雰囲気が変わるので、あれ? ってなるんですけど(笑)。ベースとしては、ユニゾンのリフや休符がたくさんあって、そこでグルーヴを出すのが難しかったですね。サビは結構疾走感あるベースラインにはなってるんですけど、歌メロの裏メロみたいな感じでベースが動いてるのが私はすごくお気に入りです。2Aからはシャッフルで跳ねてたりするんですけど──
REOTO:あれって2Aなの?
YONA:分かんない(笑)。
ほほ美:これはねぇ......そう。難しいんですよ。
-Aメロ、Bメロ、C、D、E、F、G、H......みたいな感じですからね。
ほほ美:本当にカオスですよね。
YONA:どこって言ったらいいのか分からないっていう(笑)。R&Bみたいなところのセクションは、あえてゴーストノートを出していて。こういうベースラインって大好きなんですけど、表現するのが難しくて苦戦した部分ではありますね。でも、すごく楽しいです。
-ほほ美さんはいかがでしょうか。
ほほ美:最初にこういう感じにするって少しだけ聴かせてもらったんですよ。明るい歌詞が似合いそうだなと思いながら聴いていたら、あれ? 落ちたぞ。で、サビはこの感じ? みたいな。
AYARI:サビってどこ(笑)?
REOTO:"ほら tick-tock 胸を打つ"のところだと思います(笑)。
ほほ美:そこだよね? ヴォーカルのメロディがお洒落になっていて。
AYARI:半音をめちゃくちゃ使ってるとこね。
REOTO:椎名林檎さんみたいな。
ほほ美:そうそう。この曲はREOTOが歌詞を書いてくれたんですけど、シャウトしてるところで"j-j-j-jump"とか"t-t-t-take"っていうのがあって。来た! ヤバ! みたいな。
AYARI:語彙力(笑)。
ほほ美:私、昔コピバンでPassCodeさんをやってたぐらい大好きなんですけど、似たような歌い方をまさかPaleNeØでやる日が来るとは! って。それが嬉しかったですね。最終的にそこは加工して切ってもらってるんですけど、これはライヴで無理やな! って(笑)。でも、この曲でもいろんな声を出せてますね。スクリームに限らず、R&Bのところではちょっと気だるげな感じで歌ってみるとか。あと、大サビの"ゆらりゆらり 上手[かみて]にモッシュして"の尺感が短いので、ライヴでいったいどうモッシュすればいいのか。
AYARI:しかもモッシュする感じのパートじゃない(笑)。
REOTO:そこは特にそうしてほしくて書いたんじゃないので、自由にノってもらったら。普通にサークルとかでもいいし。
ほほ美:そこの"ゆらりゆらり"のところって、よく聴くと私の声が10人分ぐらい入ってるんですよ。"ほら走れ! 走れ!"みたいなセリフを入れていて。
YONA:走るのかモッシュなのか(笑)。
AYARI:しかも"ゆらりゆらり"(笑)。
ほほ美:面白い歌になりましたね。
-REOTOさんはカオスな曲に歌詞を当てるのはなかなか大変だったと思うんですけど。
REOTO:めちゃくちゃ大変でした(苦笑)。
ほほ美:こういう曲はだいたい私の専門なんですよ。
REOTO:デモが来たときに、これはほほ美ソングだなと思って後回しにしていたんですが、諸々事情があって自分が書くことになり、どうしよう! って。ずっとメロコアみたいな感じだったらサーっと書けたかもしれないんですけど、途中でシャウトが入り、お洒落なパートがあり、どういう世界観なんだ......!? って何日も考えながら聴いていました。
-延々と。
REOTO:ただ、聴いていくうちに、フロアのお客様とメンバーみんなで楽しんでいる様子がだんだんぼんやりと出てきて、ライヴが楽しくなるような曲にしたいなっていう気持ちになって。なので、深いメッセージ性があるのかと言われたらそうではなく、もう単純にライヴをみんなで楽しんでいこうって気持ちを前面に出して、言葉の響きを重視しました。最初のメロコアのところはすごくメロディがきれいで、それこそYONAが言ってたみたいに何かが始まるような、アニメのオープニングのような爽快感があるので、ちょっときれいめの歌詞にしようとか。
ほほ美:あのメロディ、すごくいいのに1回しか出てこないんですよ。本当にもったいなくて。
REOTO:そう! 数秒で終わってしまうので。そのなかで、"ゆらりゆらり"のところに出てくる"人生はクラウドサーフ"が、唯一メッセージと言えばメッセージなのかなと。いろいろなことに揉まれて、人生はなかなか厳しいものではあるけれども、みんなでライヴを楽しんで乗り越えていこう、人生もライヴのように楽しく乗り越えていければいいじゃないか! っていう曲ですね。
-"人生はクラウドサーフ"って、ノリっぽく見えて結構深いというか、解釈の仕様がたくさんありますよね。クラウド・サーフって、誰かが支えてくれないとできないことでもあったりしますし。
REOTO:そうなんですよ。この曲を聴かれる方はライヴがお好きな方が多いと思うので、イメージしやすいかなと。そのあたりに共感していただけたらめちゃくちゃ嬉しいです。
-そして、アルバムの終盤に置かれている「組曲『死者の書』」について。これは全4曲で構成されていて、全てREOTOさんが作詞作曲を務めていますが、そもそも組曲を作ろうということになった経緯からお聞きできればと。
REOTO:まずアルバムを作るにあたって、パレオの要素の強い曲が何曲か必須だよねっていうところから始まったんですけど、スタッフさんたちと相談しているなかで、あんまり組曲形式で曲を出してくるバンドっていないなと思って。アイディアとして、アルバムの前半か後半に長い曲が入っていたら面白いんじゃないかなと。組曲形式のものは前から書いてみたいと思っていたので、機会をいただけるならやらせてくださいというところから着手しました。
-挑戦したい気持ちがあったのもあって、作業はスムーズではありましたか? それでもやはり大変ではありましたか?
REOTO:今回のアルバムのレコーディングとか準備諸々をしていたのが、ツアー"Allegro Agitato"の真っ只中で、ライヴやリハーサルと並行しながら作っていたので、時間的にはかなりタイトではありましたね。ただ、「(組曲『死者の書』 -)Ⅱ. Judgment」は、PaleNeØを始動してからわりとすぐにデモを作っていたんです。歌詞ももう完成していて。それで、今回ほほ美がすごく素敵な衣装を考えてくれて、アルバムもそのコンセプトに寄せていきたいという話をしていたし、「Ⅱ. Judgment」もめっちゃ宗教っぽいから、これを軸に作ってみようかなってところからスタートしました。ラテン語のキーフレーズをちりばめて、切り離してもそれぞれ1曲として成り立つし、繋がるとすごく壮大な物語になるっていうのを意識して組み立てていきましたね。
-過去曲にもありましたが、クラシックのフレーズを引用されていますね。
REOTO:パレオ曲を表現するにあたって、それが一番分かりやすいかなというのもあるし、お客様的にも耳馴染みがあるような有名なフレーズを入れたり、どこかで聴いたことがあるようなコード使いだったりとかは意識してますね。
-個人的には、「(組曲『死者の書』 -)Ⅲ. Crucifixion」に出てくる"Joy to the hell"の使い方が上手いなと思いました。
REOTO:「もろびとこぞりて」(Joy to the World! the Lord is come)ですね。こんな使い方をしてしまって、これはちょっとどうなんでしょう? というところはあると思うんですけど(笑)。明るくてめでたいクリスマス・ソングを、あえて地獄への招待に使うという。これは罪を犯し、地獄に下った人の物語なので。
-具体的にどんな物語なんですか?
REOTO:「(組曲『死者の書』 -)Ⅰ. Descent to Abyss」は、和訳すると"深淵への下り"という意味で、地獄へ下っていく緊張感を高めていく感じですね。ドラムが心臓の音みたいな感じで、クレッシェンドが掛かっていって、テンポアップして幕が上がる。「Ⅱ. Judgment」は"冥府の裁判"です。組曲のタイトルになっている"死者の書"は、古代エジプトで死者と一緒に埋葬していた書のことなんですけど。死後の世界のことや、裁判ではこういうふうに答えれば転生できるよってことをパピルスに書いて、お守りみたいな感じで死者に持たせていたんですけど、この話を中学生のときに社会で習ってからずっと好きで、曲にしたい! とずっと思っていたんですよね。今回上手くできたかは分からないんですが、書いていてめっちゃ楽しかったです。
-念願だったと。
REOTO:で、生前の罪をちゃんと告白すれば転生に向けて冥府で準備ができるけれども、そこで少しでも偽ると、天秤が傾いて、冥界神に心臓を食われて獄役に服さなければいけないという。そのドキドキ感を「Ⅱ. Judgment」で出しました。結果的にこの人は嘘をついたというのは察していただいて、「Ⅲ. Crucifixion」は"贖罪"です。罪を贖い、償うまで地獄を出ることができない。そこで苦しみながらも罪を懺悔する主人公の激情を描き、「Ⅳ. Reincarnation」で初めて悔い改めるというか。今までの自分の愚かさを恥じ、生前優しくしてくれた人たちの優しさや愛に気付き、涙を流す......というところで完結する話です。