INTERVIEW
RAN
2025.05.30UPDATE
Member:TAICHI(Vo) 美亮(Gt) 嘘(Gt) 最上夜(Ba)
Interviewer:杉江 由紀
それでも止まらなかった意地の強さを見せたいし、ここからまた始まるぞ!ってワンマンを渋谷WWWで見せつけます!
-さて。ここまで寡黙にメンバーの言葉を聞いていらした最上夜さんですが、ベーシストとしてこだわられている点についてぜひお話を伺わせてください。
最上夜:ベーシストってバンドの中では土台にあたる部分を支える役割ですし、フレーズ的にも基本は目立たないほうがいいとされがちなんですよね。実際、曲の中でもリフものなんかだと動きようがないケースっていうのもあるんですが、逆に僕はそのなかでいかに"みんなの邪魔をしないで自己主張するか"を常に意識してます。例えば、サビなんかでも歌の邪魔はしてないんだけど、歌ってるときにベースのフレーズが耳に入ったら、ちょうど心地よい感じになるように弾くことを心掛けてるんですよ。
-最上夜さんのプレイは裏メロにあたるようなフレージングも多い印象です。
最上夜:普通はギタリストって俺が! 俺が! ってガンガン弾くタイプも多いと思うんですけど、RANは2人共そんなに前へ前へという感じではないんですよ。だから、その分を僕がベースで自由にやらせてもらっているというのも大きいでしょうね。
嘘:最上はこのバンドの中でも音楽的な感性が一番強いタイプなんですよ。もちろんギターが目立つべきところでは前に出ますけど、曲全体としてのバランスを取っていくときに、RANの中で最上のベースが果たしてくれてる役割は大きいですね。
-それだけの存在感を持っていらっしゃる最上夜さんなのですが、昨年11月からは療養のために一時活動を休止されていたそうですね。約半年の間は嘘さんがベースを弾き、美亮さんがシングル・ギターの形でRANはライヴ活動を続行していたとのことですが、6月10日に池袋EDGEにて開催される"RAN presents NEWシングルリリース記念and最上夜復活祭4マン【躁】"からはライヴ現場への復帰が決定しております。もしよろしければ、今の心境についてお話していただけますか。
最上夜:これは初めて話すことなんですが......去年の11月11日に自分の生誕ライヴ("最上夜生誕祭")があったんですけど、僕にはそのときの記憶が1曲目までしかないんですよ。ライヴ自体は最後までちゃんとやれてたらしいんですけど、ほんとに記憶がそこで途切れてて、そこからここまで約半年休んでたとはいっても、本人的には2ヶ月くらいの出来事のように感じてるところがあって、そこまで長く休んでたっけ? っていうくらいの感じではあるんです。しばらくの間は精神状態として全く外に出られない状態でしたし。
-とても深刻な状況でいらしたのですね。
最上夜:正直、選択肢としてはそもそもバンドを続けるのか、続けないのかっていうところから考える必要がありました。でも、少しずつ外に出られるようになっていったときに、the GazettEさんのライヴに伺わせていただく機会があったんです。僕は以前も何回か観てるんですけど、4人体制でのthe GazettEさんのライヴというのはそのときが初めてで......あれを観たときに思ったんですよ。症状には波もあるし、仮にある程度は症状が落ち着いたとしても、なかなか完治することはない病気を抱えている状態なので、自分が復帰してそのまま続けていけるかはよく分からない。でも、まだ自分にやれることがあるなら復帰しよう! と痛感したんです。
-そういうことでしたか......お察しいたします。
嘘:当初、最上が休んでいる間はベースを打ち込みでプログラミングして、ライヴをやるっていうことも検討したんですけどね。でも、やっぱりそれじゃダメで。夜さんが生音で弾いてる音を打ち込みで再現するのは無理があったんで、当面は僕がベースを弾くことにしたんですよ。だから、ついに復帰してくれるのはすごく嬉しいです。
最上夜:お客さんたちにはあまり伝わってない気がするんですけど、僕としては嘘がベースを弾いててくれてたのがほんとにありがたかったですね。毎回ライヴ映像が送られて来てたんですけど、もう耳コピの完成度がほんとにすごくて。たぶん過去のライヴ映像とかも照らし合わせながら、細かいところまでコピーしてくれてたと思うんですよ。
嘘:いろんな話し合いがあって、一時は最上が"そのまま脱退するかも"っていうところまで行きましたからね。やめないにしても、サポート・ベースを入れるかって話も出ましたけど、やっぱりRANにとって最上のベースというのは必用不可欠なものだったんで、よく分かんない人に弾いてもらうくらいなら、自分が少しでも最上に近付けるように弾いてなんとかしようっていう気持ちで必死でした。
TAICHI:あの時期楽屋でもずーっとベース弾いてたもんね。対バンの人たちに"サポート入れなよ"って言われながら(苦笑)。
嘘:僕サカナクションもすごく好きなんですよ。山口一郎さんが夜さんと同じ病気っていうことで、かなり似た状況のドキュメントも観たことがあったから、それも自分にとっては支えになったんです。大変なのは重々承知ですけど、バンドとしては僕等も一緒に病気と付き合っていこうという気持ちでいるんですよ。
-バンド愛、メンバー愛に溢れたお話ですね。
最上夜:自分としては、続けることで"これ以上の迷惑を掛けたくないな"という気持ちも当然あるんですよ。この段階でもすでに迷惑かけちゃってますし。でも、話し合っていくなかでみんなから、"迷惑は掛けていいものだ"みたいに言っていただけたんですよ。
-人間関係は持ちつ持たれつなのではないでしょうか。きっと復帰にあたっては心配や不安な面もあるかとは思いますが、今の最上さんにはそれ以上に、このバンドでもっとやってみたいことがあるのではありませんか。
最上夜:ここまでRANで活動してきて自分たちなりにいろんなことはやってきてますけど、それでもまだもっと見たい景色はありますし、やってないことはいろいろありますからね。すぐには無理だとしても、MUCCとか蜉蝣とか自分が昔から好きだったヴィジュアル系バンドのように、見た目だけに縛られず音楽的な面での歴史を築いてきたような存在に僕もなりたいです。
TAICHI:大きく出たねぇ!
-夢への新たな一歩として、今度の"RAN presents NEWシングルリリース記念and最上夜復活祭4マン【躁】"は、大事なステージとなりそうですね。
TAICHI:かなり急遽決まったイベントなんですけど、今回はレーベルメイトのORSEASをはじめとして、Z CLEAR、鴉-カラス-と以前から縁のあるバンドたちが協力してくれることになりました。
-当日の主人公である最上さんとしては、この日をどのように過ごされたいですか。
最上夜:言葉にするのは難しいところもありますが......。"お待たせしました。改めてよろしくお願いします。ご迷惑をお掛けしましたが、これからは心配させないようにしたいです"という気持ちを、皆さんに伝えられるようにしたいですね。
-最上さんの生真面目さがよく出たお言葉ですけれど、場合によっては、"心配させないように"の気持ちが重しになってしまう可能性もありますのでね。そこはシンプルに"みんな待っててくれてありがとう!"だけで良い気もいたしますよ。
最上夜:じゃあ、そうします(笑)。
-なおかつ、その3日後の6月13日には渋谷WWWにて"TAICHI BIRTHDAY ONEMAN【BEAUTIFUL RAIN】"と題されたライヴも決定しているそうですね。これは6月という梅雨時期を鑑みてのタイトルですか?
TAICHI:まぁ6月で梅雨でということもあるんですけどね、それ以上に、この1年ってRANにとってはなかなかしんどいものだったんで、ここまでに感じてきた不安や哀しさを涙に例えて、"BEAUTIFUL RAIN"ってタイトルを付けたところもあります。でも、これはネガティヴな意味ではないんですよ。お客さんたちに対しては、いつも通りにライヴ空間で美しい汗をかいてくださいっていう意味も込めてます。それでも止まらなかったRANの意地の強さを見せたいライヴでもあるし、ここからまた始まるぞ! っていうワンマンを渋谷WWWで見せつけます!
美亮:大きいハコで、現体制メンバーが揃う久しぶりのライヴですからね。僕等にとっては1つの晴れ舞台だし、ある意味、もうこの瞬間は二度とやってこないかもしれないっていうくらいの気持ちで、やりたいと思います。
TAICHI:ちなみに、毎年この生誕ライヴでは最後に"来年は●●で会いましょう!"みたいに次の目標を言うのが恒例になってるんですよ。でも、今の段階では別にまだ何も決まってないんで。前も何も決まってないのに"来年は(Spotify)O-WESTで会いましょう!"って言っちゃって、オトナたちが"マジかよ!?"ってなっちゃったことがありましたけど、結果ちゃんとやりましたからね("蘭 TAICHI生誕単独公演「STIMULANT」")。口に出せば叶うもんなんだなと思ったんで、今年どうなるかも楽しみにしててください(笑)。
-RANは自由奔放なバンドなのですね。
TAICHI:RANはライヴで全てを証明していくバンドなんですよ。お客さんたちだけじゃなく、関係者やバンドマンからも"マジでライヴ良かった!"っていうこともよく言われるし、観た人の心が動くライヴをしたいと常々思ってるんで、ライヴに対しては絶対的な自信があります。そして、自分等がバンドを続ける理由もそこにあるんです。