INTERVIEW
BLOODYWOOD
2025.05.16UPDATE
Member:Karan Katiyar(Gt/Fl)
Interviewer:菅谷 透 Translator:染谷 和美
インドはニューデリー発のメタル・バンド BLOODYWOODが、ニュー・アルバム『Nu Delhi』を引っ提げてのジャパン・ツアー"RETURN OF THE SINGH - JAPAN TOUR '25 -"を開催した。初来日の"FUJI ROCK FESTIVAL '22"で強烈なインパクトを残し、その後も急速にファン・ベースを拡大してきた彼等は、3度目の来日となった今回も大反響を呼んでいた。激ロックでは東京公演の開演前に、バンドを率いるKaran Katiyarへインタビューを実施。最新アルバムやBABYMETALとのコラボ曲「Bekhauf」について等、様々な話を訊いた。なおKaranは取材後に"今日のライヴではサプライズがあるんだ"という言葉を残していたが、ショー本編でまさかの公開プロポーズを敢行! 会場からは惜しみない祝福の拍手が送られていた。
-来日は今回で3回目になりますが、日本でのライヴの印象はいかがですか?
驚いたこととしては、おとなしくて礼儀正しくリスペクトを持った人たちが、いざライヴが始まるとあんなにやかましく盛り上がるとはということだね。その振り幅が半端ないよ(笑)。僕たちは南米とアフリカを除く大陸でプレイしてきたけど、日本のファンが地球上で最もエネルギッシュなのは間違いないね。脱帽だよ(笑)!
-(笑)ライヴ中のMCのときは静かなのに、曲が始まると盛り上がるというのは海外アーティストからよく聞く感想ですが、皆さんもそう感じたんですね。
(笑)いつもそうなんだ。共通の現象ってことだね。
-今回は数日前から日本に来られていますが、観光等はできましたか?
すでに2公演連続でライヴをやっていて、これが3公演目なんだ。訪れた都市を少し探検する程度しかできなかったよ。今のところはラーメンを食べたり、いくつかの店に立ち寄ったりする程度で、あまりたくさんのことはできなかった。でも公演後も1週間程滞在する予定だから、そのときにいろいろ楽しみたいと思っているよ。
-ライヴが終わった後にも、楽しみなことがまだ残っているんですね。
そう、仕事を済ませてからホリデーを楽しむんだ(笑)。
-(笑)続いて、バンドの成り立ちについても伺います。ボリウッド音楽のメタル・カバーからスタートされたと聞いていますが、活動のきっかけを教えていただけますか?
少し違うかな。僕たちがやっていたのは、ボリウッドに限らず世界中のポップ・ソングのメタル・バージョンを作ることだったんだ。でも単なる"カバー"ではなくて、曲の構成やメロディを変えた"メタル・バージョン"を作っていた。だから完成させたときには、全く別の曲になっていたんだ。誰もやっていないユニークなサウンドを探求するという狙いがあったから、カバーするたびに僕たちのサウンドを変えていった。ある意味、秘密の実験のようなものだったね(笑)。そして最終的にインドの楽器とインドのフィーリングを音楽に取り入れたとき、人々が注目してくれるようになったんだ。
-そのとき注目されたのは、インド国内からですか? それとも海外から?
海外からだね。インドでは今でも観客が多くはないんだ。インドでの僕たちのファン層はとても小さいよ。
-そうだったんですね。先日インドでフェス("Outrage Festival")のヘッドライナーを務めていらっしゃいましたよね。
2024年に新しいフェスティバルでヘッドライナーになったんだ。だから、ごく最近のことだね。それまではせいぜいフェスで日中の出番で演奏するくらいだった。2024年から状況が変わり始めてきたけど、それでもインドではまだあまり知られていないと思う。フェスや、そのキュレーターには知られているけどね。彼等はインドのバンドが海外でプレイしていること、そして多くの大きなフェスで演奏していることに注目しているから、僕たちをチェックしたいと思ってブッキングしてくれるようになった。
インドでのヘヴィ・ミュージック自体まだまだ発展途上なんだ。まだ初期段階だから、これから成長することを期待しているけど、僕等の望むレベルには達していないね。"ここまで盛り上がったら、他のいろんなメタル・バンドも生活していけるのにな"っていう程には、大きくなっていないんだ。
-なるほど。ちなみにKaranさんご自身は、どのようにしてヘヴィな音楽を知ったのでしょうか?
インドではヘヴィ・メタルを知っている人はあまり多くないんだ。ヘヴィ・ミュージックを聴くことはまだ普通ではないからね。僕がメタルを知ったのは学生時代だった。友達が僕にカセットをくれたんだ。それはLINKIN PARKの1stアルバム(『Hybrid Theory』)で、それを聴いた瞬間今までにない程音楽と繋がりを感じてね。初めてヘヴィ・ミュージックを聴いたときが僕の人生が決まった瞬間だったよ。それまではあまり音楽を聴いてなくて、(※取材陣がシャツを着ていた)SLAYERやMETALLICAにも触れる機会がなかったから(笑)、LINKIN PARKを聴いた後に初めてヘヴィ・ミュージックの世界に入って、いろいろ探求してきたんだ。彼等が僕にとってのヘヴィ・ミュージックの入り口だね。
ただ、インドではこういう音楽を聴く人は少ないけど、みんなお互いを知っているんだ。そうやって僕はこのバンドのメンバーたちと出会ったからね(笑)。輪が小さいから、みんなが知り合いなんだ。
-BLOODYWOODの音楽はクラシックなメタルというよりも、モダンな要素が多く含まれていますが、それもLINKIN PARKの影響が大きいのでしょうか?
その通りだよ。
-BLOODYWOODのサウンドはお祭り的な雰囲気が感じられますが、歌詞は政治やメンタル・ヘルス等シリアスな題材も扱っていてギャップがありますよね。なぜこれらの要素を組み合わせるようになったのでしょうか?
シリアスなことを歌う曲はシリアスな響きで、怒りを表現する曲は怒りの響きで、ということを僕等はやっているつもりだけど、その間に位置するものもある。もしかしたら政治的なことについて歌っているときがそうかもしれないね。そこには怒りもあるけど、楽しさの要素もあって、歌詞で遊んだり、人々を茶化したりしている。みんなには歌詞の行間を読んでほしいと思っているから、そういったところに楽しさや面白さの要素を感じるのかもしれない。
でも、これは僕たちにとって恵みでもあり呪いでもあるね。やりたいことや、できる音楽がたくさんあるから、曲ごとにどの方向に進むかを決めるのに迷ってしまうこともあるんだ。それだけ多くのオプションがあるというのはいいことでもあると思うけどね。本当にダークなことについても、本当に楽しいことについても歌えるし、本当に怒っていることについても歌える。僕たちは、自分たちのパレットをほんの数色だけに制限したくないんだ。