INTERVIEW
HAGANE
2025.04.30UPDATE
2025年05月号掲載
Member:凪希(Vo) Sakura(Gt) Sayaka(Ba) JUNNA(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
勇者は帰還せり。昨年から新体制となって再始動したHAGANEは、今回のフル・アルバムに"TOP OF THE TOWER"と冠した。メロスピ感の濃くなった今作において、メタル・ヴォーカリストの枠にとどまらない貫録ある歌を聴かせる凪希と、可憐な見た目とは裏腹にエグい圧倒的なドラミングを展開するJUNNAは、共に新たなる逸材としての存在を発揮しているが、技巧派ギタリスト Sakuraと芸術肌のベーシスト Sayakaの健在ぶりも顕著だ。HAGANE、完全復活!
-HAGANEにとって、現体制となってからは初のフル・アルバムとなる『TOP OF THE TOWER』が完成しましたけれども、激ロックでのインタビューは久々になりますので、まずここでは2024年にドラマー、JUNNAさんとヴォーカリスト、凪希さんが相次いで新加入されることになった経緯から振り返らせてください。
Sakura:流れとしては、前任のヴォーカリストとドラマーが脱退した時点から、すぐに新メンバーを探し始めたんですけど、最初にお声掛けしたのがJUNNAちゃんだったんです。というのも、JUNNAちゃんとは他のサポート現場とかで以前から繋がっていたんですよ。だから、LINEですぐ連絡してみたんです。当時のJUNNAちゃんは大阪在住だったので、最初はZoomで"バンドに興味ないですか?"っていう話をしたんですよ。
-もともとJUNNAさんは、ご自身のYouTubeチャンネルで"叩いてみた"動画を上げたりされていたのですよね。
JUNNA:はい、以前から動画投稿等はよくしていました。
Sakura:私たちはそういう動画も観ていたんで、Sayakaとの間ではドラマーを探し出した時点ですでに"彼女しかいないよね!"って感じになってましたね(笑)。
-ちなみに、その段階でHAGANE側が"ドラマー、JUNNAさんに対して求めていたもの"は言葉にするとどのようなものなんでしょうね。
Sakura:そこはまさに今回のアルバム『TOP OF THE TOWER』でも表現されているところで。HAGANEとして自分たちのやっていきたい音楽をより実現していくためには、以前よりもっと激しいアプローチで、さらにメロスピの方向性を色濃くして音楽を追求していく必要があったんですね。じゃあ、それだけの速い曲を叩き切れるドラミングを誰ができるのかな? と考えたら、やっぱりJUNNAちゃんしか思い付かなかったんです。
-リズム隊としての新しい相棒を迎えることになったSayakaさんからすると、ドラマー、JUNNAさんとはいかなる存在ですか。
Sayaka:私も以前から、Sakuraのお父さんからのお薦めでJUNNAちゃんの動画はよく観てたんですよね。そして、同世代のメタル・バンドでガールズでドラマーっていったら、本当にJUNNAちゃんしか思い付きませんでした。ただ、JUNNAちゃんって本当にすごいYouTuberなので、HAGANEに誘ってまさかこんなにもすぐに"入るよ!"と応えてくれるなんて思ってなくて、そこはちょっと意外だったというか驚きました。その意味では、入ってもらってから"......やっぱり違うかも?"ってJUNNAちゃんに言われないように、私も頑張ってもっと練習しなきゃ! という気持ちになったんですよ。
JUNNA:大丈夫です。そんなこと言わないですよ(笑)。
-JUNNAさんがすごいドラマーだということは、私も昨年末に下北沢シャングリラで開催されたワンマン・ライヴ("HAGANE Live Tour 「Phoenix Journey 2024 Last Rampage」")を拝見したときに、ひしひしと感じました。半ば偏見のようで大変恐縮ではあるのですけれど、JUNNAさんは小柄でとてもかわいらしいルックスをしていらっしゃるではないですか。ところが、いざドラムを叩き出すとあまりにプレイがエグすぎて"なんだこのギャップは!"と度肝を抜かれてしまったのです。
Sayaka:その気持ち、よく分かります。JUNNAちゃんってほんとすごいんですよ!
JUNNA:......ありがとうございます(照笑)。
-JUNNAさんがそもそもドラムを始められたのはいつからのことだったのですか?
JUNNA:高校生になるちょっと前からだったので、15歳から始めました。もともと和太鼓や吹奏楽部でパーカッションをやっていて、打楽器全般に興味があったところから、お父さんに"ドラムをやりたい"と頼んでスタジオに連れて行ってもらって、初めてドラム・セットに触れたんですよ。
-今の"和太鼓"という言葉。その要素は、まさに今作『TOP OF THE TOWER』の収録曲「Kagome」のドラミングにおいて、絶妙に活かされている印象です。
JUNNA:たしかに、あの「Kagome」は、最初に曲を聴いたときから和太鼓のようなニュアンスを入れたドラムが似合う曲だなと感じていました。
-JUNNAさんはロック・ドラムにとどまらない、幅広い下地を持ったプレイヤーでいらっしゃるわけですね。そんなJUNNAさんからしてみると、HAGANEからのお誘いというのは、当時どのような心境で受け止めることになられたのかも教えてください。
JUNNA:前からHAGANEのことは知っていたので、声を掛けてもらったときはすごく嬉しかったですし、その段階から"じゃあ、上京しようかな"とも考えてました。いつかは上京したいと思ってましたし、自分の好きな音楽ができるようなバンドもずっとやりたいと考えていたので、私にとってはすごくいいタイミングでお話をいただけたんですよ。だから、すんなりと加入することが決まりました。
-なお、資料によるとJUNNAさんの好きなアーティストは、DRAGONFORCEとCozy Powellとのこと。この名前の並びからして"筋金入り"ですね!
JUNNA:これは父親の影響もあるんですが、DRAGONFORCEの曲もコピーしてYouTubeに上げてます。
-一方、ヴォーカリストの凪希さんは、HAGANEに入るまではメタル経験どころかバンド経験自体もなかったそうで、オーディションを経て加入されることになられたのだとか。ある意味、HAGANEにとっては異色のヴォーカリストなのかもしれませんね。
Sakura:ヴォーカリスト探しに関しては、思っていた以上に時間がかかりました。一時は"本当に見つかるのかな"って不安になったくらいで、いろんな人とスタジオに入ったりしたんですけど、なかなか"このヴォーカリストだ!"とはならなかったんですよね。それで、気付いたら2023年の12月くらいになっちゃってたんです。でも、そこでようやく凪希ちゃんが応募して、来てくれることになりました。
凪希:私は、メンバーの皆が好きなDRAGONFORCEやIMPELLITTERIのことを知らないどころか、メタルというジャンル自体のことを全然知らない状態で、オーディションを受けたんですよね。リスペクトしてきたのは、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴(Vo/Gt)さんとMISIAさんが二大巨頭で、歌は専門学校で勉強していたんですが、そこでも基本的にはJ-POPが中心だったのでメタルは全く歌ったことがなかったです。
-だとすると、凪希さんはなぜHAGANEのオーディションを受けられたのです?
凪希:私がHAGANEのオーディションを受けたのは22歳のときだったんですけど、女性ヴォーカリストのオーディションの年齢制限ってだいたいが22歳までなんですよ。私はそこまでずっとどのオーディションでも落ちるか、いいところまで行っても結局ダメでしたということばかりだったので、時期的には、"次で落ちたら就職を考えよう"というくらいのところまで追い込まれていたんですね。
-いわゆる崖っぷち状態だったわけですか。
凪希:そうなんですよ。HAGANEが募集期間を延長していたのは知っていて、最初は"メタル・バンドか......馴染みがないなぁ"と思いながらも学校の先生に相談したら"あぁ、これは凪希ちゃんには合わないと思うよ"って言われて"そうなんですね"と答えて、そのまま過ごしてたんです。でも、期間延長の発表があったときに"あれ? まだ決まってないんだ"と気になって調べてみたんですよ。課題曲がこれですというのも書いてあったので、それも聴いてみて"あぁ、たしかにこれは今まで私が歌ってきたことがないタイプの曲だな"とは思ったんですけど、先生にもう一度"ちょっとやってみたい気持ちはあるんです"って相談してみたんですね。
-先生はなんと?
凪希:"いやー、ダメだと思うけどね。まぁでも、最後のチャンスかもしれないしやってみれば?"って言ってました(苦笑)。
-その貴重なチャンスをものにされたというのはすごいですね。そして、その際の課題曲が具体的になんだったのかも非常に気になります。
Sakura:「BlackCult」(2022年リリースの1stフル・アルバム『Code ; 9021』収録曲)です(笑)。
Sayaka:それと「Labradorite」(2020年リリースの1stシングル表題曲)で、THE HAGANEな2曲でした。
-よりによって激メタルな「BlackCult」とハイトーンが連続する「Labradorite」ですか。課題曲としては難易度がかなり高いではありませんか。
凪希:でも、今思うと、あの2曲を歌えなかったらHAGANEのヴォーカリストとしては通用してなかったと感じます。
Sakura:新体制になっても、HAGANEとして作ってきた過去の曲を、引き継いでやっていくべきだと私たちは考えていましたからね。そうなると、まずは「BlackCult」や「Labradorite」を歌えるヴォーカリストじゃないと! っていうのがあったんです。
凪希:私のほうからしてみれば、HAGANEが前のヴォーカルさんみたいな声質の人を探しているのか、それとも他に何か求めている条件があるのか、そのあたりがよく分からない状態でオーディションを受けることになったので。課題曲をコピーして真似するように歌えばいいのか? それとも自分節をある程度は入れてもいいのか? というのは結構悩みましたね。
Sakura:こちら側としては曲調や音域は原曲のままで、なおかつその人ならではの個性を活かして、パワフルに歌ってもらいたいなと思っていたんですよ。
凪希:「BlackCult」なんて未知の音域で、最後もロング・トーンで終わるじゃないですか。この曲を歌って初めて"私、ここまで出るんだ!?"って気付きました(笑)。
Sakura:"出ると思ってなかった"とは言ってたけど、普通はそういう状態だと出ないからね(笑)。そこがすごいなと思ったんです。
-Sayakaさんは凪希さんの歌を聴いてどのような印象を受けられました?
Sayaka:メタル・バンドって音量も音圧もあるので、そこでちゃんと"抜けてくる"ヴォーカルって本当になかなかいないんですよ。凪希ちゃんが歌ってくれて、初めて"この声量が欲しかった"って感じました。そこでHAGANEの未来が見えたんです。
-ヴォーカリストとドラマーは、ライヴの場でいわゆる"縦ライン"を織り成す関係性にあるかと思います。JUNNAさんからしてみると、凪希さんはどのようなヴォーカリストだと感じられていますか。
JUNNA:オーディションで初めて合わせたときから、凪希ちゃんの声はお腹にズンッ! と深く響いてる感じがして、演奏もすごくしやすかったです。もちろんクリックを聴きながら演奏してはいるんですけど、凪希ちゃんの歌がそこにあると力まずに叩けるというか、のびのび演奏することができるんですよ。そういうヴォーカリストとバンドができることが、とても嬉しいなと感じてます。