INTERVIEW
HAGANE
2025.04.30UPDATE
2025年05月号掲載
Member:凪希(Vo) Sakura(Gt) Sayaka(Ba) JUNNA(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
みんなと一緒にもっと高いところに登っていきたいという思いがあったんです
-しかも、凪希さんはレンジも広いですよね。ハイトーンだけではなく、低いところまで幅広くしっかりと出せるタイプのヴォーカリストだと感じます。高域も変にキンキンすることなく伸びてくる印象で、つくづくHAGANEはいい人材と出会えましたね。
Sakura:ほんとにいいヴォーカリストが来てくれたなと思います。HAGANEとしての可能性もここでめちゃめちゃ広がったし、この4人になったからこそできることがたくさん増えたなと感じてますね。
-かくして、昨年から万全なる新体制で再始動したHAGANEですが、今回のフル・アルバム『TOP OF THE TOWER』の制作にあたり、当初から何かコンセプトのようなものは意識されていたのでしょうか。
Sakura:実は、曲が揃う前から"TOP OF THE TOWER"というタイトルは決まっていたんですよ。私が提案したものでした。
Sayaka:他に別の言葉が出てくることもなく、すんなり決まったよね。
Sakura:イメージとしては、みんなと一緒にもっと高いところに登っていきたいという思いがあったんですよ。
-つまりそれは、HAGANEがここから目指す場所を指しているわけですか。
Sakura:です!
-まさに今作はそう言い切ってくださるだけの音に仕上がっておりますが、その中でも「Not Lose」はHAGANEの王道的な部分が前面に出ている印象です。
Sakura:王道なところは強く出てますね。ただ、この曲はメンバー・チェンジが起きた頃の、精神的にすごく落ち込んでいた時期に作っていたものだったんですよ。タイトルの"Not Lose"も、その頃に思ってた"負けない"っていう気持ちから付けたものです。
-展開的には、SE「Top Of The Tower」を受けての実質的な1曲目となるのが「Not Lose」ですので、今作は、危機的状況において不屈の魂を解き放っていくところから物語が始まっていくことになるのですね。
Sakura:アルバムとしては山あり谷ありな感じになってるんですけど、ほんとに谷底まで行ってるなかで作ったのが「Not Lose」でした。でも、歌詞はそのときには付けてなかったんです。それで、今回この詞は凪希ちゃんに書いてもらうことにしました。
凪希:Sakuraさんからこの曲ができたときの背景は聞いていたので、私なりに"負けない"っていう気持ちを表現していったんですけど、気が付いたら前半のほうはどっちかというと、"自分のことかもな"って内容になってました。Bメロの"僕ら何度も何度も転んで"とか、それこそオーディションに落ちまくってたときのことなんですよ。
Sayaka:あと、メンバーみんなにも"負の感情"についていろいろ聞いてたよね。私やSakuraにはHAGANEが止まってしまったときのこと、JUNNAちゃんには上京する前の不安とか、そういうエピソードも参考にしながら書いてました。
凪希:もう、みんな長文でくれて助かりましたよ。もともと感情の起伏が激しいタイプっていうのもあるんですけど、みんなの文を読んでたら泣いちゃうくらいに感情移入しちゃって(苦笑)。それぞれつらい経験をして今ここに集まったんだなと思ったときに、サビの"歩んできた道が例えどれだけ違おうとも僕らは出会う運命(さだめ)だった"っていう部分が生まれてきたんです。
-思うに、きっと"あのときはしんどかったが、今思うとあれは全てこの今に繋がっているのだな"と感じたことがある人は、意外といるはずで、綺麗事ではなく"あの挫折があったからこそ、今の自分がいる"となるケースは誰しもに起こりうるはずですよね。
Sayaka:だと思います。そこをすごく味わってきたからこそ、もう今が幸せで幸せで(笑)。
Sakura:逆に言うと、これは今じゃ書けない曲にもなってると思いますね。
JUNNA:私にとっての「Not Lose」は、自分のドラムと改めて向き合えた曲のような気がしてます。これまでもフットワークの練習はしてたつもりだったんですけど、得意ではないリズムもあったので、そこはかなり練習しました。そして、ライヴに向けて今もずっと練習してます。
-ライヴでも「Not Lose」はきっと大活躍してくれるに違いありません。それから、先程も少し触れましたが、今作中では「Kagome」も特筆すべき楽曲だと言えるでしょう。HAGANEがここまで"和"に振り切ったのは恐らく初めてですよね?
Sakura:新体制になるまで、HAGANEに和風の曲ってなかったんですよ。だけど、ずっと作りたいとは思ってたんです。それで、初めてその方向性を形にしたのが、前作のEP『Life Goes On!』(2024年リリース)に入れた「天下五剣」だったんですが、YouTubeでの再生回数があの曲はすごく伸びたんですね。これは私たちにとっての新しい武器になるなということで、次なる和風曲としてフル・アルバムのために作ったのが「Kagome」になります。
-「Kagome」は「天下五剣」以上に和ですよね。「天下五剣」は和の要素も持ちつつのアニソン風味も感じる楽曲でしたが、この「Kagome」は猟奇性さえ感じるおどろおどろしい和メタルの風情が漂っております。
Sakura:この独特な世界はSayakaが詞で表現してくれました。「Kagome」は童歌の「かごめかごめ」をモチーフにしているので、詞もその内容に沿っているんですよ。
凪希:この詞はすごいです。私じゃこんな言葉は絶対に出て来ないですね(笑)。
-Sayakaさん、もしや古文あたりがお得意だったりしました?
Sayaka:私、大学が哲学科だったんですよ。そこで学んだことをようやくここで活かすことができました。
-「かごめかごめ」はもとの詞もそこそこ不穏な内容ですけれど、この「Kagome」ではそこがさらにブーストされている上に、それを歌う凪希さんの歌にもある種のドスが利いていて、和ホラーな雰囲気を絶妙に伝えてくれている気がします。
凪希:この歌は苦戦しました。詞の内容を理解するのに時間がかかってSayakaさんに細かく解説してもらって、本番の歌録りではSayakaさんと事務所の社長もディレクションをしてくれて、結果的にはメタルじゃない歌い方をしていきましたね。
-歌もサウンドも全体の重心が低くなっているところが面白いです。
JUNNA:ドラムもタムやフロアを効果的に使ったり、あとはタムとフロアを重ねたりしてます。ただ単発で行くんじゃなくてフラムを使って装飾音符にしたりもしていて、タム周りのフィルインもこの曲だからこそのアプローチをしてますね。
Sakura:異世界っぽい地獄祭りをHAGANEとして表現することができました(笑)。
-その他にも今作には素晴らしい楽曲たちが多く詰め込まれておりますが、ここからは各人から"特に思い入れの強い曲"をご紹介いただけますと幸いです。
Sayaka:では、私はインストゥルメンタルの「Over the fate」でお願いします。この曲はまだ私とSakuraでしか表立った活動をしてなかった時期に、2人で2回くらい演奏したことがある曲で、タイトルの"運命を超えて行く"っていう意味もそこと関係しているんです。今この時期に出す新体制でのアルバムだけに、どうしてもこの曲は入れておきたいという気持ちがありました。とはいえ、まだこの曲は4人で生演奏していないんですよね。ここからツアーでやっていくのも今からとても楽しみです。
JUNNA:私は「Catch the star」です。この曲で私は作詞をさせてもらっていて、詞を書くこと自体が初めての挑戦だったんですけど、タイトルは先にあったので、そこから広げていくのであれば"書けるかも!"と思ったんですよね。そして、この詞の中には、自分がこれまで影響を受けてきた作品のイメージも入れていくようにしました。完成してから聴いてみても、改めて"この詞は全て自分の中にあったものなんだな"と再確認できましたし、今のHAGANEについて書いているところもあって、その両方をちゃんと言葉にすることができて良かったなと思いました。初挑戦の作詞がこの曲で良かったなとも感じてます。
凪希:私は「剣のレコード -Records of TSURUGI-」ですね。これはSayakaさんとJUNNAちゃんが一緒に作ってくれた曲で、このベース始まりなところがすごく好きなんです。この低音って聴いていると本当に落ち着くし、自分の歌が入って完成形になったときにも"これいいなぁ!"って思いました。
Sakura:これはだいぶ個人的な思い入れの話になってしまうんですけど、私は「Salvation」を挙げたいと思います。これは"BANANA FISH"というアニメから発想した曲で、結構前の作品ではあるんですけど、友達に薦められて観たらすごく良くて、全話一気見しながらもう号泣号泣の嵐になってしまったんですよ(笑)。それで、この歌詞は主人公、アッシュ(・リンクス)の感情をめちゃめちゃ落とし込んだものにしてみました。曲もこの詞のために作ったものです。あと、ギター・ソロに関しては少し渋味を入れたところもポイントですね。我ながらいいソロが弾けました。
-アルバムの最後を締める「Heart Scream」の激速チューンぶり等も全てひっくるめて、今作『TOP OF THE TOWER』は、HAGANEにとって輝かしい未来へと繋がる傑作に仕上がりましたね。今作を実演していくことになるツアー("HAGANE Full Album Release Tour「TOP OF THE TOWER」")にも期待しております。
Sakura:「Heart Scream」なんか200テンポですし(笑)。ツアーではアルバムの曲を全てやっていくので、すごいことになると思います。
凪希:これを全部歌うなんて、ヴォーカリスト的にはゲッソリですよ(苦笑)。でも、またそこで鍛えられていくことになるでしょうね。
JUNNA:HAGANEにとっても、自分にとっても、今回のツアーは大事な挑戦になっていくと思います。各地のファンの皆さんに、アルバムを聴いた上でライヴも楽しんでもらうのはもちろんなんですけど、自分自身がこのアルバムとツアーを通して成長していけるように一生懸命頑張りたいです。
Sayaka:私たちの見た目しか知らない人にとっては、"これ全部あなたたちが本当にライヴでやるんですか?"って感じるかもしれないですよね(笑)。でも、この曲たちを実際に音源を超えるレベルで生演奏することができたら、HAGANEは本当に"TOP OF THE TOWER"まで行けると思うんですよ。今回はHAGANEにとって初めての全国ツアーでもありますので、約1ヶ月半かけてそこを目指していきます!