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INTERVIEW

KILLSWITCH ENGAGE

2025.02.22UPDATE

KILLSWITCH ENGAGE

Member:Jesse Leach(Vo)

Interviewer:菅谷 透 Translator:金子みちる

KILLSWITCH ENGAGEが、通算9作目となるオリジナル・スタジオ・アルバム『This Consequence』を完成させた。前作『Atonement』以来約5年半ぶりのリリースとなる本アルバムは、作品を通して強烈なエネルギーに満ちた内容に仕上がっているが、Jesse Leachによるとその根源は不満や怒り、悲しみや喪失感といった感情なのだという。"歌詞を読んで、アルバムを聴いて、タイトルの意味をよく考えてほしい"と語る彼の言葉を踏まえて、ぜひ本作に触れてほしい。


俺がこのアルバムの歌詞でやりたいと願っていることは、人々をインスパイアして、人間として共通の基盤を見いだし、世界をより良い場所にすることだ


-最新アルバム『This Consequence』の発売を控えた(※取材は1月中旬)、今の心境を教えていただけますか?

興奮と希望に満ちているし、使命感にも満ちている。というのも、このアルバムのメッセージやテーマは俺にとって重要であり、世の中に発信することが大切だと感じているからね。

-前作『Atonement』以来約5年半ぶりのリリースと、キャリアの中で最も期間の空いたアルバムとなりましたが、制作期間が長引いたのでしょうか? それともなんらかの要因があったのでしょうか? 前作リリース後にパンデミックに突入したのも影響しているのでしょうか。

ああ、その通りだよ。ちょうど『Atonement』を完成したところで、パンデミックに見舞われ、ツアーができなくなったんだ。レコードを作り終えたばかりだったから、正直に言ってバンドの誰もがまたすぐに曲作りを始める気にはなれなかったんだと思う。それにもちろん、パンデミックの最中は生活するのもままならなくて大変な時期だったしね。その後ツアーに戻れるようになったとき、まずは『Atonement』をしっかりプロモートしたいって気持ちが自然に湧いてきたんだ。当時はパンデミックのせいで、あのアルバムには必要な時間をちゃんと掛けてあげられなかったからね。だから、『Atonement』のために約2年間ツアーをした。俺たちとしては、あのアルバムにはそれだけ時間をかける価値があると思ったからね。

そんなわけで、パンデミックの期間も含めて4年が過ぎ5年目に入ったときに"さぁ、次のアルバムを作らなきゃならない"と思ったんだよ。前作から数年経っていたから早くレコードを出したいという切迫感はあったけれども、みんなで話し合った結果、このアルバムをできる限り最高の作品に仕上げるためには、じっくり時間をかける必要があると思ったんだ。俺たちにとって重要だったのは、自分たちらしさが全面に感じられる、本物で情熱に満ちたレコードを出すことだった。だからこそ、このアルバムを思い通りのものに仕上げるべく時間をかけたんだ。

-本作の制作では『Alive Or Just Breathing』(2002年リリースの2ndアルバム)以降初めて、メンバーが同じ部屋で一緒に全てを話し合ったそうですが、この手法をとったきっかけはあったのでしょうか?

まず、長い間そういうことをやっていないバンドにはぜひお薦めするよ。音楽を始めた理由に立ち返るような感じで、本当に素晴らしいんだ。一方『Atonement』のときはかなり違ったな。あのときは22曲くらい作ったんだけど、メールのやりとりで進めることが多かった。Adam(Dutkiewicz/Gt/Vo)がかなりの部分を1人で書いたりプロデュースしたりしていたから、彼は昔みたいにみんなを巻き込んで、もっと共同で作業をしたいと本気で思うようになったんだ。

仲間と同じ部屋で音楽を作るときのエネルギーとか雰囲気って、まさにマジカルで、美しいしワクワクするものがあるよ。それが俺たちに影響を与えたのは間違いない。楽曲がリアルタイムで作られていく様子を見られるという環境は本当に素晴らしかった。俺はヴォーカリストとして、それを観察しながら、アイディアを書き留めたり、マイクを掴んで何かに合わせて歌い始めたりして、自然に音楽が形になっていったんだ。それは本当にとても良かったよ。何回かそういうセッションをやったんだけど、そうすることでレコードを書く道筋が開かれたんだ。ぜひともまたやりたいね。きっとやることになると思うよ。ああいうやり方に戻れて本当に楽しかったからね。

-アルバムを通して、エネルギーに満ちたフレッシュなサウンドが展開されているように感じました。こうした作品になったのはどんな要因があったと考えていますか?

理解するのに時間がかかったけど、俺は自分たちが経験してきたことに対して、不満や怒り、悲しみや喪失感を山程抱いていて、それを抑え込んでいたことに気付いたんだ。それは単にパンデミックのせいだけじゃなくて――特に俺たちの国(アメリカ)では人々が互いに激しく争ったり、口論したり、意見が合わなかったりしてまともな議論なんてほとんどなかった。道理なんて吹っ飛んじまって、人々は感情と憎しみに突き動かされ、政治的イデオロギーが違うというだけで、相手をひどく傷つけるようなことを平気で言い合っていた。俺にはそれが本当にひどいことに思えたんだ。俺はそういう争いに巻き込まれるタイプの人間じゃないけど、傍観者としてただ見ているだけでも心が痛んだよ。互いの人間性を考慮するやり方は、まさに闇の中といった感じだった。

このアルバムを書く段階になった際、俺はその感情を再び直視して向き合わざるを得なかったんだ。そして、それを言葉に変える方法を見つけなきゃならなかった。このアルバムの真の攻撃性と情熱は、そういう怒りやフラストレーションから生まれたものだけど、それは正当な怒りであり、その怒りにはちゃんとした目的がある。それは人々にもっと良くなってほしい、目を開いて、分断の流れに巻き込まれる必要なんてないってことに気付いてほしいということなんだ。

俺たちはもっとオープンな議論をするべきだし、思いやりや理解を示し、団結する必要がある。人々が集まって、何かをより良くしていくために力を合わせる。それこそが、この世界で俺たちがすべきことだと思う。だけどその境地に辿り着くためには、あらゆる分断、闇や怒りをふるいにかけて、その中から自分の目的を見つける必要があるんだよ。 俺がこのアルバムの歌詞でやりたいと願っていることは、人々をインスパイアして、人間として共通の基盤を見いだし、世界をより良い場所にすることだ。人によっては陳腐な話に聞こえるかもしれないけど、俺は心の底から信じているんだ。"俺たちはもっと上手くやれる"って。

-アルバムの内容としては、アグレッシヴな側面がより強力になっていたり、クリーン・パートでは裏で印象的なギター・フレーズが鳴っていたりと、メロディックなメタルコアがさらに成熟したように感じました。サウンド面で意識したことを伺えますか?

なんて言えばいいのか難しいな。というのも、俺たちみたいに長いことやっていると、曲作りの過程を進めていくなかで、自分の感覚を使って音をなんらかの形に作り上げていくうちに、ある種のゾーンに入っていくような気がするからね。少なくとも俺の場合、自分が何をしているのか認識できないくらい、自分のやっていることにものすごく集中していて、ほとんどトランス状態になっているんだ。バンド内で"こういうふうにしよう"というような言葉による話し合いはしていない。"これが俺たちのサウンドだ。やるべきことなんだ"みたいな感じで、俺たちの中から自然に出てくるものなんだよ。まぁ、途中で誰かが"これはあんまり良くないな"、"こうしたらどうだ?"って言う場合もあるけれどね。ありがたいことに、それは俺たちの一部として存在していて、アーティストとしての自然な流れであり、ただそうなっただけだよ。

-アルバム・タイトル"This Consequence"の由来や、作品のテーマについて伺えますか?

曲作りの過程の中盤くらいで、俺たちのベーシストであり、アート・ディレクションやTシャツのデザイン、ロゴなんかも全部担当しているMike(D'Antonio)と話をしたんだ。彼とは毎回アルバムを作るたびに俺が歌詞を送り、あれこれ話し合うんだけど、今回も俺の歌詞を読んだ後、すぐに"This Consequence"というアイディアを出してくれた。それが俺にはすごくしっくりきたんだよ。"あぁ、それってたしかに理に適っている"ってね。
"Consequence(結果)"というのは非常に重みのある言葉で、それをどう捉えるかによって、ネガティヴな意味にもポジティヴな意味にもなる。例えば、"悪いことをしたからその報いが来る"というふうにも取れるし、"多くの努力の結果として、何か良いものが生まれる"と考えることもできる。いわゆる原因と結果であり、何事も上がれば必ず下がるという自然の法則なんだ。つまり、人生で何をしていても、あるいは何もしていなくても必ず結果が伴うということだね。

そして、今の世界の状況を見ると、残念ながら世界は本当により良い場所になったとは言い難い。それだけに、俺たちはもっと良くするために意識的に努力する必要があると思う。でもそのためには、パンデミックに対して自分がどう反応したかを振り返る必要がある。意見が違う人たちにどう接したのか? 自分自身やコミュニティに対して何をしたのか? 政治的にどう行動したのか? そういったこと全てに最終的な結果がある。自分の行動には必ずなんらかの結果が伴うからね。
俺がこのアイディアを気に入った理由の1つは、すごく普遍的なテーマなので、人々を考えさせることができるからなんだ。"これってどういう意味なんだろう?"ってね。歌詞を読んで、アルバムを聴いて、タイトルの意味をよく考えてほしい。俺の願いは人々が啓蒙の道へと導かれ、人との接し方を考え直し、この世界での自分の居場所を考え直すきっかけになることなんだ。"自分の役割は何か?"、"問題の一部なのか?"、"解決策の一部なのか?"ってね。