INTERVIEW
KILLSWITCH ENGAGE
2025.02.22UPDATE
Member:Jesse Leach(Vo)
Interviewer:菅谷 透 Translator:金子みちる
-「Abandon Us」はキャッチーなクリーン・ヴォーカルが耳を惹くナンバーです。クライマックスではかなり高いトーンも出していますが、ヴォーカリストとしてどのようなことを意識されましたか?
自分が抱いていた物悲しさ、切迫感、フラストレーション、悲哀感を声を通して表現したかったんだ。だからメロディを選ぶ際には、自分の声の響き方を非常に意識しているよ。ヴォーカリストの多くは、低音域では声に厚みがあるけれども、高音域の上限に近付けば近付く程声が細くなるというか、もっと集中したような感じになり、より切迫感が増すんだ。
「Abandon Us」では天辺から崩れ落ちるような感覚や、言葉を失うような感覚、"お前は俺たちを見捨てたんだ"というような感情を伝えたかった。誰かに裏切られたり、背を向けられたり、もう自分と関わりたくないと思われたりするときの痛みを、人々に感じてもらいたかったんだ。それは本当につらい感情だ。ただの口論とか意見の相違でお互いに怒りをぶつけ合うのとは全く違う。誰かがただ去ってしまって、もういない。もう会話をするつもりもなく、問題を解決しようともしない。ただそれで終わりなんだ。
それは人間関係にも当てはまるけれど、権力者を見ていても同じことが言える。例えば、今のロサンゼルス(の大火災)の状況を見てみれば、あの街が文字通り焼け野原になっちまったのは、明らかに手抜きがあったから。つまり、ああいう状況になったのは見捨てられたからなんだ。そして家を失って、行き場を無くした人たちは今まさにその感情を味わっている。彼等は見捨てられたと感じているんだ。誰が何と言おうと、そこで対処が適切に行われなかったのは明らかだよ。だから、そこには喪失感しかないんだ。それをどうやって声で伝えたらいいのか? を考えて、俺が世界を眺めているときに感じていた感情を、パフォーマンスに全て込めるように最善を尽くしたよ。
-アルバムの第1弾シングル「Forever Aligned」は、人々の繋がりをテーマにしたドラマチックな楽曲ですね。
「Forever Aligned」は何よりもまず、愛と繋がりから生まれた曲だ。俺が今の妻と出会ったとき、彼女はそれまで俺が知らなかった形の愛を教えてくれたんだ。それは、ただ愛するだけじゃなくて、もっと良くなれるように背中を押してくれるような愛だった。その愛が俺の人生を大きく変えたんだよ。そして今度は俺が振り返って、他の人々やこれまで経験してきた人間関係を見つめ直し、同じように接するようになった。だから、愛は伝染するし、愛はまさに全てを包み込む。
愛は俺たち人間が触れることができるものだけど、その本質を完全に理解している人は誰もいないと思う。俺は、愛は神聖なものだと考えているよ。愛とは人間の理解を超越したもので、美しさと無私の絶対的存在であり、俺が信じる神に最も近いものなんだ。だからこの曲では、俺にとって人生のより深い部分――つまり存在について熟考し、愛が俺たち人間にとってなんなのか、そして愛を通じてお互いに持つことができる繋がりがどれ程力強いものなのか、ということを見つめているよ。
-MVはライヴの模様やオフショットも交えた、ユニークな内容に仕上がっています。
俺たちにはそれを表現することができるビデオを作る時間も予算も手段もなかった。今話したようなことを映像で表現するのはめちゃくちゃ難しいからね。だから、一番簡単で自然な方法は、バンドとしての俺たちをそのまま映し出すことだった。俺たちはバンドとして25~6年も一緒にやってきて、兄弟のような絆があるし、ツアーでの様子をそのまま見せるのが一番しっくりくると思ったんだよ。もちろん、いつも楽しいことばかりあるわけじゃないけれども、俺たちにはお互いがいるし、ファンがいる。それにオーディエンスがいて、オーディエンスのみんなとの繋がりも感じているし、それをビデオで見せることによって、一体感のようなものを感じて、まるで好きなことをしながら世界を旅する仲間たちを観ているような気分になれると思ったんだ。
そんな楽しい映像とは対照的に、ステージで俺が叫んだり激しく歌ったりしている映像もある。ビデオではその両方を捉えているんだ。それって人生そのものだと思うからね。つまり、困難や苦しみ、つらさがある一方で勝利や団結、楽しさもあり、バランスが取れている。このビデオはそういった繋がりという概念を上手く捉えている気がするよ。
-「I Believe」では、クリーン・ヴォーカルを主体とした非常にポジティヴな雰囲気のサウンドが展開されていて、より幅広い層に届きそうな楽曲になっていますね。
「I Believe」はこのアルバムのアンセムだね。正直なところ、このアルバムを書き始めた当初から書きたかった曲だよ。人々に希望を与え、物事はきっと良くなっていくと感じさせるようなものを世に出したかったんだ。
でも、この曲は信念についても語っている。信念とは信仰なんだよ。証拠がないからこそ、努力が必要なものだと言える。信仰とは、触れることも味わうこともできないものを信じることであり、ただ自分の中に力を集め、物事が良くなるという希望を抱くことなんだ。それは事実に基づいているわけじゃない。だからこそ、俺にとって信念は美しいものなんだよ。信仰や信念は人間が生み出した魔法みたいなものだね。それは理屈から生まれるものじゃなく、美しいものなんだ。
この曲を書こうとしたとき、Bob Marleyの「Three Little Birds」を思い浮かべていた。"心配するなよ。何もかも全て上手くいくから"と歌っている曲だ。10代の頃にこの曲を聴いて、"誰かが良くなるって言ってくれるのは嬉しいな"と思って涙が溢れたのを覚えている。だから、俺もそういう曲を書きたかったんだ。つまり、聴いたら気分が良くなるような、自分が理解されていると感じられるような、全てが失われたわけではないという希望を与えられるような曲をね。
実のところ、インターネットやメディアが信じ込ませようとしているよりも、世界はずっといい場所だよ。世の中にはいい人が山程いるし、世界がより良くなることを望んでいる善良な人々も大勢いる。自分の人生を変えたいなら、いいことが起こってほしいなら、それを顕在化させなければならない。そのためには良くなると信じること、祈ること、エネルギーを集中すること、美しいものやポジティヴなものに目を向けること、瞑想することなんかが必要なんだ。というように、俺にとってこれは俺が世に送り出す必要性を切実に感じていた希望のアンセムなんだよ。
-一方で「The Fall Of Us」はデス・メタルに接近したサウンドで、バンドのディスコグラフィの中でもかなりアグレッシヴなサウンドですね。
「The Fall Of Us」は二重性を念頭に置いて書かれた曲で、その二重性というのは、この曲を誰かとの関係に当てはめて解釈することもできれば、別の文脈で捉えることもできるということだ。 1つの解釈としては、誰かとの関係において、自分の涙も血も心も魂も全て捧げて物事を上手く運ぶために必死に努力してきたのに、結局これ以上何をしても、この関係は修復できないと悟った瞬間と捉えることもできる。そしてもう1つの解釈としては、自分を世話してくれるはずの人々、社会を気に掛けてくれるはずの人々――つまり権力者たち、あるいは父親や母親のような尊敬すべき存在に対する失望という側面もあり、要するに自分が信じて頼りにしてきた物事や人物が、もはや信頼に値しないと悟る瞬間と捉えることもできるね。そしてその時点でそれがもう自分には必要ないと理解して手放し、消滅させ、その人物を自分から切り離すんだ。というのも、それはもはや自分にとってなんの役にも立たないからね。
-近年ではSHADOWS FALLが再始動したり、ALL THAT REMAINS、UNEARTHも活発な動きを見せたりと、メタルコア・シーンの確立に貢献した同世代のバンドが今なお第一線で活動しています。彼等の動向は皆さんにとっても刺激になりますか?
友達が今でも続けているのを見るのは、とても刺激になると思う。本当にすごいことだよ。今名前を挙げたバンドは全部、一緒に育った仲間であり、10代の頃からの知り合いなんだ。16~7歳の頃から彼等全員を知っていて、昔からの友達だよ。そんな俺たちが今でもこうして活動を続けているというのは、信じられない程素晴らしいことだと思う。一緒に育った友達とツアーに出て、"俺たちはここにいるぜ。なんとかまだやってるんだ"って思えるのは、ちょっとワイルドな感じがするよ。90年代のシアトルのシーンとか80年代のロサンゼルスのシーンにいた連中も、きっと同じように感じているんじゃないかな。周りを見回して、"うわ、こいつらとは25年来の付き合いなのに、みんなまだ頑張っているんだ"って。
インスピレーションと言えば、このアルバムを作っている間、すごくインスパイアされたバンドは、スウェーデンのIN FLAMESだった。俺がこのアルバムを作っている最中に、彼らは最新作(『Foregone』)をリリースしたんだけど、それを聴いたとき"うわ、こいつはすごい"って思ったのを覚えているよ。IN FLAMESはずっと好きなバンドの1つだったけど、その最新作では、彼等が次の段階に進もうとしているような感じがしたんだ。実のところ、ヴォーカルのAnders(Fridén)に連絡を取って、素晴らしいレコードができたことを祝福し、"君の声、そしてこのアルバムに込められた切迫感と情熱に本当にインスパイアされたよ"って伝えたんだ。
俺たちが育ったシーンの仲間たちだけでなく、長年尊敬してきたIN FLAMESのAndersのような人たちとも、友情を育むことができたのは素晴らしいことだし、そういう人たち全員が、今でも音楽で生計を立てているのを見られるのは、信じられない程すごいことだと思う。
-今年はアルバム『Killswitch Engage』でバンドが2000年にデビューしてから、25周年のメモリアル・イヤーでもありますね。何か特別な計画等は立てているのでしょうか?
ああ、(地元マサチューセッツ州の)ウースターで25周年を祝うライヴ("New England Metal And Hardcore Festival"内にて)をやったよ。1stアルバムについては特に考えもしなかったけど、久しくやってない昔の曲を何曲かセットリストに戻すのはすごく楽しそうだな。ただ、目下のところは新しいアルバムに集中しているから、1stアルバムの郷愁よりも、新しいアルバムが優先されると思う。もちろん最初のアルバムも大好きだし今でも1、2曲は演奏しているけれど、今君が言ってくれたおかげで、もしかしたら昔の曲を引っ張り出してセットに入れるのもアリかなって気がしてきたよ。しばらく演奏してない曲もあるからね。
-それはぜひ期待したいですね! ところで来日公演は2016年の"LOUD PARK 16"が最後になっています。来日のプランは検討されているのでしょうか?
俺達5人全員が日本にまた行きたくてたまらないということは間違いないよ。最後に日本でヘッドライナーのツアー("KILLSWITCH ENGAGE『Japan Tour in 2014』")をやったのは、"LOUD PARK"の前だったと思う。そのときのことは、今でもメンバー全員が話しているんだ。単にライヴが素晴らしかったということだけじゃなく、日本にいて文化や和食を体験したことについてもね。俺たちはみんな日本を心から愛していて、また行きたいと思っているけど、そのためにはちゃんと筋が通ってないといけない。需要がないといけないし、プロモーターは俺たちが日本に行く価値のある条件を提示してくれないといけない。だから、ここで声を大にして言わせてもらうよ。俺たちはまたぜひとも日本に行きたいんだ! 日本のプロモーターのみんな、俺たちを日本に呼んでくれ。俺たちは日本にまた行きたいんだよ!
-最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。
長らく日本に行っていないにもかかわらず、みんな応援してくれたり、辛抱強く待っていてくれたりして、本当にありがとう! みんなが俺たちにしてくれた全てのサポートに心から感謝しているよ。新しいアルバムを楽しんでもらえると嬉しいな。