INTERVIEW
waterweed
2024.05.23UPDATE
2024年06月号掲載
Member:Tomohiro Ohga(Ba/Vo) Shigeo Matsubara(Dr)
Interviewer:荒金 良介
waterweedのニュー・アルバム『Departures』が素晴らしい。TVアニメ"キングダム"エンディングテーマ「Deep inside」、TVアニメ"治癒魔法の間違った使い方"オープニング主題歌「Cure」を含む今作は、先述曲を筆頭に日本語詞にも果敢にチャレンジした意欲作である。従来の英語歌詞メロディック・ハードコアを基軸に、かつてなくバラエティに富んだ作風とアレンジが冴える1枚に仕上がった。Tomohiro Ohga、Shigeo Matsubaraのメンバーふたりに話を訊いた。
-早速ですが、今作はwaterweedが掲げるメロディック・ハードコアの幹はさらに図太くしたうえで、サウンド自体が更新/進化というか、もっと言えば殻を破ったような聴き応えがありました。これは最高傑作と言ってもいい出来栄えだと思います。
Ohga&Shigeo:ありがとうございます!
-作品の中身についてはあとでじっくり聞くとして、僕が前回取材したのは前々作『Brightest』(2017年リリースのアルバム)のタイミング(※2017年4月号掲載)で、あれから約7年の月日が流れました。バンド的にはどんな期間でしたか?
Ohga:『Brightest』から遡ると、3ピースから4ピースになり、また作る楽曲の幅も広がり、ライヴもいっぱいやっていたんですよ。初めてタイアップの曲(TVアニメ"キングダム"エンディング・テーマ)をやったりして......昔だったらやれなかったと思うから。
-「Deep inside」のことですね。
Ohga:そうです。そのリリース(2021年のアルバム『Deep inside + Unknown best』)もあったり、コロナもあったりしたけど、そのなかでもできる限り俺たちはライヴを続けていたんですよ。そこで生まれた曲たちがたくさん入ってます。
-今作はコロナ禍に作られた曲が多いんですね。Matsubaraさんはいかがですか?
Shigeo:コロナ禍やメンバー交代もあり、予期せぬ経験もしましたからね。「Deep inside」の頃から考えると、また状況も変わりましたし、とりあえず今の集大成ではあるかなと。
-『Brightest』は3ピースとしての音が固まった作品でした。再び4ピースに戻した理由は?
Ohga:3ピースでやっていて、どうしても表現できない部分もあったから。単純にギターの本数もあるけど、僕らはシンガロングやコーラスの厚みも大事にしているし、ライヴの勢いを考えて、ツイン・ギターのほうが自分たちらしいなと考えたんです。3ピースの頃は意地になって、それでも続けることに意味があると思ってた。でも、前作『Diffuse』(2019年リリースのアルバム)では4ピースじゃないとできないことを詰め込みましたね。
-ライヴの表現力、再現性を考えると、4ピースが最良の形だと。それで先ほどタイアップの話をされてましたが、"昔だったらやれなかった"とおっしゃってましたね。
Ohga:日本語って指定もあったし、"こういうふうな曲を作ってほしい"と言われて作る感じでもなかったので......。でも、ちょうど日本語詞に挑戦してもいいかなと思ってた時期だったし、自分たちの音楽性で応えられそうなオファーだったので。僕は、はっきりと日本語で歌うバンドが好きで、今回も最初はそういうイメージで(歌を)乗せていたんです。でも自分らしさがないと思って、「Deep inside」を作った頃はすごく悩みました。日本語で歌う友達のバンドにも相談して、waterweedらしく歌ったほうがいいんじゃないと言われて、英語のニュアンスで日本語を歌おうと。それが「Deep inside」だったんですよ。
Shigeo:(日本語で歌っても)waterweedっぽさはなくならなかったし、Ohga君が歌えばwaterweedになるところが強味だと思うんです。日本語にしたことで表現の幅も広がったし、今後にも繋がるかなと感じます。
-他にも日本語の曲は収録されてますが、まったく違和感がなかったです。むしろ日本語のほうが本来持っている男臭さ、哀愁度がさらに増していて、全曲日本語の作品を聴いてみたいと思いましたよ。
Ohga:はははは(笑)。
Shigeo:1枚ぐらいそういう作品があってもいいかもしれないですね(笑)。
Ohga:日本語で歌うことによって離れる人もいるかなと思ったら、そうでもなかったから、いきなり全曲日本語というより、みんなに聴いてもらいつつ、という感じですね。海外のことを考えると、英語も捨てがたいし、曲によって変えていこうと。
-表現の選択肢がひとつ増えたという感覚ですね。そして、2018年にはフェス("Manchester Punk Festival")出演を含めてイギリス、フランス、オランダ、チェコ、ドイツとヨーロッパ・ツアー("Brightest EU TOUR 2018")も行いましたが、感触はいかがでした?
Ohga:ドサ回りツアーという感じだったけど、めちゃくちゃ熱狂的なファンもいて、海外ツアーは得るものが多かったです。自分たちもタフになれたし、どこでもやれる自信はつきました。
-それで「Deep inside」に続き、2024年頭にまたアニメのタイアップ曲("治癒魔法の間違った使い方"オープニング主題歌)「Cure」が出ましたよね。
Ohga:「Deep inside」と同じで、泥臭く努力して這い上がることがテーマで、それがこのバンドにもフィットしていると思いました。自分たちらしい曲を作ればいいんだなって。
-「Cure」は諦めない心を歌っていて、聴き手の背中を押す応援ソングですね。その2曲を収録した今作の最初のヴィジョンというと?
Ohga:曲を死ぬほど作って、初めてたくさんある中から曲を選んだんですよ。
-とはいえ、今作は全18曲収録してますよね。
Ohga&Shigeo:ははははは(笑)。
Ohga:多いっすよね。これも入れたい、あれも入れたいとなってしまって、全部入れてしまおうと。Matsubaraがアルバムのバランスに関しては気にしてくれるから。
Shigeo:言うても18曲あるので(笑)、日本語というカテゴリがひとつ増えたから、それを踏まえて、いろんな曲を混ぜたいなと思ったんです。「Deep inside」、「Cure」と立て続けにタイアップの話をいただいた流れもあり、他にも日本語の曲を入れたいなと考えて。
-「The only way」、「Hope」も日本語曲ですからね。結果、様々なタイプの楽曲が揃っているし、作品トータルの流れも素晴らしいなと。話が前後して恐縮ですが、今作に先駆けて5枚のシングルを配信リリースしましたけど、この狙いは?
Ohga:久々のリリースだし、18曲を一気に聴いてもらうんじゃなく、これまでと変わらない部分も、新しい部分も、少しずつアイドリングみたいな感じで聴いてもらって、最後にアルバムって思ったんです。半分くらいは事前に聴ける状態にしました。