INTERVIEW
waterweed
2024.05.23UPDATE
2024年06月号掲載
Member:Tomohiro Ohga(Ba/Vo) Shigeo Matsubara(Dr)
Interviewer:荒金 良介
自分も強い人間ではないし、それに共感してくれる人もいると思うから
-今作は「Terminal」というインスト曲で始まります。"終着駅"という意味ですが、バンドとして終わらせたかったものとは?
Ohga:『Diffuse』リリース以降、バンド的にも周りでいろんな別れがあり......友人を亡くすとか、たくさんの別れを経験したんですよ。ざっくりと決別、別れがテーマではあるけど、制作を通じてその気持ちが浄化される感覚もあって、最終的には晴れやかな気分でこのアルバムを世に送り出せました。昔だったら今回の歌詞は書けなかったと思いますね。「Terminal」もそうだし、他の曲にもそれぞれテーマがあるんですけど、あまり細かく説明するのもあれだから、何か伝わる部分があればいいかなと。
-今作は別れや喪失感、それこそ飾らない弱音の部分まで曝け出した歌詞もあります。ちなみに「Terminal」で使っている楽器はなんですか?
Ohga:琵琶です。元Survive Said The Prophetでベースを弾いていたYudaiとは友達で、彼がバンドをやめたあとに琵琶の人間国宝みたいな人に弟子入りして頑張っていたから、次のアルバムに琵琶を入れてよ、とお願いしていて。
-この1曲で日本のメロディック・ハードコアという出自が伝わってきます。
Ohga:ですよね。初めてああいうインストの曲を作ったんですけど、思い描いていたイメージが実現して良かったです。
-2曲目「Daybreak」はスロー〜アップテンポに展開する曲調で、"夜明けはもうすぐそこだ"という歌詞(和訳)ともリンクしていて引き込まれました。
Ohga:静かな始まりから速くなる、そんな曲を、昔から作りたかったんですよ。ギターもクリーンで、声も落とした感じで。これまでも何度かトライしてきたんですが、やっと完成できました。
-「Clean your hand, Clean your heart」は、ライヴそのままの生々しさ全開の直情ナンバーですね。
Ohga:はははは(笑)、約1分の勢いのある曲を作ろうと。
-「Good luck」はイントロからライトハンド奏法を使っていて、それも新鮮でした。
Ohga:昔の僕たちがやっていたような......。
-RUFIOとか、あのへんですね。
Ohga:そうです! 当時聴いていた人は懐かしいと思うだろうし、若い人には新鮮に映るだろうから、そこは狙って作りました。それこそRUFIO、ジャンルは違うけどPROTEST THE HEROとか、00年代頭に僕が聴いていた音楽ですね。
-今作の中でもヘヴィ/ラウドロック調のテイストが濃厚で、そのへんが好きな人には刺さりますね。
Ohga:人がやっていることはやりたくないタイプなので、自分たちがやりたいこと重視ですね。
-「My excuse」は今作の中でも一番好きで、ギターも爽快感に溢れていて、キャッチーですよね。
Ohga:それはすぐにできた曲なんですよ。ギターを弾きながら歌って、歌詞もスラスラ出てきて......いろんな人にこの曲は気に入ってもらえてますね。めちゃくちゃ練った曲よりも、さらっと作った曲のほうがみんなに気に入ってもらえるっていう(笑)。
-『Brightest』の頃にも歌えるメロディック・ハードコアを目指したとおっしゃってましたが、今作はOhgaさんの歌の強度がより高まった印象です。
Ohga:自分でも歌に関しては成長している実感はあるので、いろんな曲を作って、いろんな歌を歌えることが楽しいですね。ギターも僕が全部作っているので、曲に合ったリフやメロディをちゃんと作れているし。
Shigeo:この曲はレコーディングまでめっちゃ練習したんですけど、なかなかうまくできませんでした(笑)。アレンジにも悩んだし、大変でしたね。僕らは曲が短いので、バババッと終わるものが多いけど、長めの曲で地味に速いから。
-この曲を含めて、今作は4分台の曲も増えてきて、表現力も多彩になってます。
Shigeo:根底はサクサクと短めの曲をやりたいけど、必要であれば曲が長くなるという。今回入っている長い曲は必然でそうなったのかなと。今まで影響を受けたものを自分なりに解釈して表現できたらいいなと思ったんです。メロディック・ハードコアの枠を意識することは年々なくなってますね。
Ohga:ジャンルは意識せずにやっているし、パンク/ハードコア・バンドという意識はそこまでないですね。だから、どんなバンドでも対バンしたいです。
Shigeo:それこそ、「My excuse」はどこでも誰とでも対バンできる曲だなと。
Ohga:「Deep inside」もハードコアの先輩が気に入ってくれたり、パンクの先輩が"うちの娘が好きで聴いていて、めっちゃいい曲!"と言ってくれたりして。前作に「Music is Music」って曲があるんですけど、そのタイトル通り音楽は音楽なので、シンプルに楽しんでもらえたらなと。
-あと、「I against」は777inchという大阪のバンドのカバーを取り上げてますよね?
Ohga:僕らが本格的に活動し始めた頃にはやっていなかったバンドなんですけど、ずっと憧れのバンドだったし、すごく影響も受けたんです。僕が苦しんでいるときに支えてくれた人(maco/Gt/Vo)で、去年5月にその彼が事故で亡くなってしまったから、777inchというバンドを知ってもらえたらなと思って、収録しました。
-アレンジ面で考えたことは?
Ohga:曲自体はほぼ触ってなくて、チューニングが違ったのでキーを変えたぐらいです。一番大変だったのは、歌詞ですね。
-えっ、どういうことですか?
Ohga:彼は、声も楽器と捉えて、歌詞を決めずに歌っていて、正解の歌詞がなかったんです。彼の歌を聴きながら、僕がイチから作り直しました。
-内容的には手紙のような歌詞ですね。そして、最後を締めくくる「Hope」も日本語曲ですが、ラスト2行"夢半ばに消えた火を忘れない/夢ならばとただ望み願うだけ"の歌詞にはどんな思いを込めて?
Ohga:1行目は強がっているし、かっこつけているんですけど、2行目は人間としてリアルな気持ちを書きました。自分の気持ちを鼓舞しているけど、できれば夢であってほしいなと。自分も強い人間ではないし、それに共感してくれる人もいると思うから、とにかくリアルに書こうと考えて。
-現実が夢だったらいいのに、という心情ですね。
Ohga:そうですね。これからも突き進んでいくけど、夢だったらいいのになぁと。
-曲から人間臭さが滲み出ていて、最後に胸を打たれました。では、今作のレコ発ツアー("International You Day")以降はどんな気持ちで回ろうと思っていますか?
Ohga:東名阪のレコ発をやって、長いスパンでツアーをやろうかなと考えています。それこそ、来年はイギリス、ヨーロッパ方面にも行けたらいいですね。前のライヴよりもいいライヴをやって、一生納得することはないだろうけど、みんなにかっこいいと思ってもらえるライヴができるように頑張ります。