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INTERVIEW

SOFTSPOKEN

2024.05.24UPDATE

2024年06月号掲載

SOFTSPOKEN

Member:Sam Scheuer(Vo) Chris Wethington(Gt)

Interviewer:山本 真由 Translator:安江 幸子

YouTubeの公式チャンネルには、PARAMOREのカバーもアップされていますが、女性ヴォーカルのHayley(Williams)の楽曲を原曲キーで歌っていましたよね?

Sam:原曲キーだって気づいてくれたんだ(笑)!

-あまりに自然に歌っていてびっくりしました。確かに男性の声なんですが、女性のキーで見事に歌っていましたね。

Sam:ありがとう!

-日頃から高音を安定して出せるようなトレーニングを行っているのでしょうか? それとも美しいハイトーンは天性のものなのでしょうか。

Sam:天性の......とまでは言わないけど、もとの声が高いんだろうな。特にトレーニングしているわけじゃないから(笑)。俺がやっているレベルのトレーニングは、単に身体に気を使うだけだからね。身体が楽器のようなものだから。単発ではヴォーカルのトレーニングを受けたこともあるけど、日常的ではないんだ。才能のある人たちの近くにいることによって耳を養ってはいるけど。

-耳と声帯がいいんですね。

Sam:そうだね。

-"身体が楽器のようなもの"だと。

Sam:ああ。本当にそうだからね。ツアーでは何杯も飲んでしまうようなこともあるけど、アルコールは心にも身体にも影響するから、できるだけ水をたくさん飲むようにしているよ。そのへんの自己管理は妻のほうが俺よりうんとうまいけどね(笑)。あとはよく眠ることだね。妻も睡眠を重視しているから、いいモチベーションになる。周りにいいモチベーションがあるのも秘訣だね(笑)。そういう人たちに助けてもらいながらやっている。

-天然の素質だけでなく、それを維持する努力も欠かせないんですね。

Sam:もちろんだよ! ただ、人によるとは思うけどね。俺はSOFTSPOKENに入る前に煙草をやめたんだ。この手の音楽はスクリームとクリーン・ヴォーカルを使い分けることも多いし、煙草を吸っていたら無理だよ。ライヴのあとで1本くらい吸えたらすごくクールだろうなって思うけど(笑)、俺には無理だね。でもそれでいいんだ。SOFTSPOKENは俺にとってヘルシーな活動なんだ。身も心もね。"SOFTSPOKEN、ありがとう!"って感じだよ(笑)。

Chris:どういたしまして(笑)。

Sam:ともあれ、身体は楽器だと思うよ。

-ちなみに、女性シンガーの曲は歌い慣れているんでしょうか。

Sam:大学時代、フラタニティ(社交団体)に入っていた関係で、歌のコンテストに出たことが何度かあって、Taylor Swiftのカバーを歌ったことがあるよ。地声であれくらいの高さが出せるってわかったからね。それに子供の頃から音楽が大好きだったから、好きになった曲ならなんでも歌っていたんだ。女性の歌う曲に惹かれたことも多かったね。母もいるし、女兄弟もふたりいるから、その影響で女性のポップ・ヴォーカルはよく聴いていたな。Britney(Spears)、Christina(Aguilera)......。

-ハイトーンのヴォーカルからロートーンやグロウルへの切り替えや、ダイナミクスが大胆ですよね。Chrisのギターもそれをいい感じに惹き立てている気がします。

Sam:さっきこいつも言っていたけど、俺たちにとってダイナミクスは重要だからね。意外なときに切り替えることでインパクトを出すことができるし。それに俺はバンド名がSOFTSPOKENなのにそうじゃないときもあるという皮肉なところが気に入っているんだ(笑)。でもSOFTSPOKENなときもある。そこを生かすようにしているよ。

-なるほど。そもそもどうしてこのバンド名になったんでしょう?

Chris:それはね、俺が日本に住んでいた頃のエピソードから来ているんだ。さっきも話したけど、俺は英語の先生をしていた。そのなかで、ボスに評価してもらうための授業があってさ。俺が授業をしているのをボスが見ているんだ。たしか初めての授業から2週間目くらいだったと思う。アメリカでは教えたことがなかったから、日本で初めて教壇に立ったんだ。授業のあとでボスと面談があった。"ここが良かった、ここはもう少しうまくできるんじゃないか"、とボスが批評する場だね。で、ボスには俺が地味あるいはSoftspokenすぎるから、先生には向いていないんじゃないかって言われたんだ。本人はそのつもりじゃなかったかもしれないけど、俺には酷に聞こえて、すごく動揺してしまった。俺が配属された学校では、研修のときも"バカっぽい感じでやって、道化師みたいに子供たちを笑わせましょう"みたいな感じだったんだ。生徒たちはありのままの俺を好きでいてくれたから、こっちの言うことに耳を傾けてもらうのにバカっぽく振る舞う必要はなかったんだけどね。俺がそこにいることを気に入ってくれていたから。だから彼の言っていることには納得がいかなかった。当時俺はバンドをやっていなかったけど手元にギターはあって、アイディアを録音していたんだ。家に帰って、もう先生を辞めてアメリカに帰ろうかと思った。あまりに動揺してしまったからね。

-心が折れてしまったと。

Chris:そう。でも辞める代わりに、ギターを弾きながら思いの丈を吐き出すことにしたんだ。今でもそうしている。俺は曲に名前を付けるときは、書きながら頭の中にパッと浮かんだものをなんの気なしに付けることが多いんだ。でそのとき曲に付けた名前が"Softspoken"だった。"Softspoken Demo"、"Softspoken 1"みたいな感じ。それがそもそもの由来だね。彼に自分のやり方を指図されてたまるか、俺は俺らしくやるぞ、と決心したことの表れだった。今は彼に"ありがとう"と言いたい気持ちだよ。俺のインスピレーションになってくれたわけだからね。

-感銘を受けるお話をありがとうございます。SOFTSPOKENというのはご自分のプライドの表れなのかもしれないですね。"自分はこれでいい、こういう自分を誇りに思っている"、と。

Chris:そうだね。ありがとう。

-でも音楽的には先ほどご自分でもおっしゃっていましたが、ソフトな面もあれば非常にアグレッシヴな面もありますよね。バンド名を変えようかと考えたことはありますか(笑)?

Chris:ノー。一度もないよ。もうひとつインスピレーションとしてはLED ZEPPELINもあるんだ。実話かどうかはわからないけど、誰かがメンバーに"このバンドはZeppelin(硬式飛行船)みたいに沈む"と言ったのがきっかけで、その言葉がバンド名に採用された、というエピソードがあってね。それが頭にあって、"よし、この言葉(Softspoken)をパワー・ワードとして使おう"と思うようになったんだ。

-SOFTSPOKENも活動歴をかなり重ねてきて、パワフルな意味を持つようになったのではないでしょうか。一見地味でおとなしそうな人でも、内側には情熱を秘めているから、それを表に出しながらも、控えめな自分の個性も守りつつ。励まされるバンド名だと思います。

Chris:ありがとう! 俺たちはファンやサポーターのことをSpeakers(話者)と呼んでいるんだけど、それは誰だって語るべきストーリーがある、表現するものがあると考えているからなんだ。それをどんなやり方であれ語ることが大事だと思っている。俺たちの音楽は自分たちのために作っているけど、できたものは人々が自分たちのために何かをするインスピレーションに使ってほしいよ。

-Samは加入したとき、バンド名や音楽性についてどのような感想を持ちましたか。

Sam:今Chrisが話していたようなことや、こいつの音楽全般に対する熱意、音楽を作ることを真面目に考えていること、より大きなショーを目指していることに感銘を受けたし、その姿を見て、"あぁ、何があっても少なくとも週1回はこいつに会わないと"と思ったよ(笑)。初めは趣味の延長みたいなものだったけど、今は愛着のあるビジネスになったんだ。何よりChrisの熱意に打たれたよ。

-5月10日には、新曲「I Against Me」がリリースされます(※取材は5月上旬)ね。これは現ラインナップで作った最初の楽曲なのでしょうか。

Chris&Sam:(※頷く)

-こちらは、どういったテーマの楽曲なのでしょうか?

Sam:俺はヴォーカリストだから好き勝手に歌えるはずだけど、必ずしもそういうわけじゃないんだ。

Chris:だね(笑)。

Sam:というか、みんなが歌詞にインプットしてくれるのが大好きなんだ。実は自分にとって一番大変なのが歌詞を書くことって場合が多いからね。言いたいことがあまりにあって、どう言葉に落とし込むかというのが難しくてさ。「I Against Me」は、今はだいぶマシになったけど、いろんな信念のバランスを自分の中で取るのに苦心した時期があったんだよね。人は今の世の中の状態に影響されるものだと思うんだ。中にはうまく折り合いをつけられる人もいるけど、時にはハリケーンみたいな嵐の波に直撃されることもある。俺が「I Against Me」を書いていたときは、自分ではどうにもならないようなことに対して、何もできない罪悪感を抱えていたんだ。すでに終わってしまったことに対してもね。妻はいつも"大丈夫、(そんなに悩まなくても)みんなちゃんと眠りにつけるから"なんて言ってくれるけど......むしろ俺が寝たくないんだよね(苦笑)。それって問題なんだけど(笑)、そうやって深く悩んでしまう人たちや自分のために書いた曲だよ。

-歌詞はあなたが書いたということですか。

Sam:大半はね。でももちろんこいつや他のメンバーの助けあってこそだよ。みんな付き合ってくれて"それは書かないほうが"、"これは書くべきだ"、"いいね、響きもクールだ"なんてアドバイスしてくれた。

Chris:俺は英語の先生だったから......。

Sam:"文法!"

Chris:"それは英語として良くない"と指摘する役なんだ。