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INTERVIEW

THOUSAND EYES

2022.07.11UPDATE

2022年07月号掲載

THOUSAND EYES

Member:DOUGEN(Vo) KOUTA(Gt)

Interviewer:山口 哲生

-一緒に微調整していくという。お話に出た「Dogmatic Stigma」も、かなり攻撃的ですね。どっしりとしたところから一気に疾走して、ひたすら畳み掛けていくという。

KOUTA:僕の中では、80年代スラッシュ・メタルの息吹をイントロにちょっと盛り込んで、そこからは90年代以降のデスラッシュのスタイルで突っ走っていくみたいな。で、Bメロとかサビはリズミカルなパターンを入れて、ちょっと冒険してみようっていう。あとは、ギター・ソロ明けも、また別のスタイルというか。90年代のメロディック・デス・メタル的な、シンプルに単音でダーっと鳴らすみたいなことをやっていなかったので、そういうものを入れたりして、ちょっとずつ展開を変えて作ってみた感じでしたね。

DOUGEN:「Dogmatic Stigma」に関しては、"ワル"を目指しているのかなと思って。喧嘩っ早そうな、デスラッシュのスピード感とかは今まであんまりやっていなかったから、これは普通にかっこいいなと。最初の80年代スラッシュのスロウなパートもワルっちゃあワルだと思うんですよ。それは新しい切り口だったなと思って。

-個人的に「Behind Blue Tears」のAメロの感じはワルだなって思いました。

DOUGEN:あれはYU-TOも"これ悪いっすね!"って言ってましたね。

KOUTA:この曲は"踊れるメロディック・デス・メタル"っていうコンセプトがあって(笑)。ワルよりは、どっちかというと、DOUGENが酔っ払って素っ裸になって踊っちゃってる感じ。

DOUGEN:俺を踊らせる感じ?

KOUTA:曲自体のイメージはそんな感じ(笑)。バリエーションをつける意味で、ちょっと踊りの要素を入れてみました。

DOUGEN:僕はPANTERA大好きなんですけど、リズム隊がそれにちょっと近いというか。縦ノリみたいな感じですね。

KOUTA:こういうパターンの曲って、意外と僕らのお客さんとかがライヴで聴くと、どうやってノっていいのかわからないって感じになりがちなんですよ。それをステージ上からDOUGENと眺めて楽しむっていう(笑)。そういう意図も込めての"踊れるメロディック・デス・メタル"ですね。

-お客さんからしてみたらわかりにくい、ノリにくいと思われるかもしれないから、そういう意味では"BETRAYER"的というか。

DOUGEN:まさに。

KOUTA:そうだと思います。これはもう本当に僕らの趣味です(笑)。

-あと、ミディアム・ナンバーの「Everlasting Trail」は、イントロからしてしっかりとギターを聴かせる感じがより強くなっている印象を受けました。

KOUTA:この曲が、さっきDOUGENが話していたIN FLAMESだったんですよ(笑)。最初は、ネタ的な感じで作って、DOUGENに聴かせて笑ってもらって終わろうかなっていうぐらいの曲だったんです。で、聴かせたら"バカなんじゃないですか?"って言われて。

DOUGEN:普段"いいね"しか言わない俺が止めましたからね(笑)。

KOUTA:"これは入れちゃダメです"と言われて、まぁそうですよねって。でも、念のため、他のメンバーにも聴かせたら、AKIRA(Ba)さんに"これは入れなきゃダメでしょ? 絶対にボツにしたらダメ"って言われたので、じゃあもうちょっと形にしようかと思ったんです。で、ギター・ソロとかでそうじゃないっぽいテイストをいろいろ入れて、なんとか形にした感じでしたね。あと、何回かDOUGENに聴かせていたら、ついつい良くなってきちゃったっていう。

DOUGEN:最初はもう本当にみなさんに聴かせられないぐらい酷かったんですよ。でも、アレンジを加えていくうちに、IN FLAMESっぽさは残っているんですけど、結果的にTHOUSAND EYESになったかなって思えるぐらいのレベルにまでは行けたので、ギリセーフかなって。

KOUTA:ヴォーカルを入れたときにDOUGENに言われたんですよ。"これ、結構良くないですか?"って。今回はそういう曲がほとんどでしたね。実際にヴォーカルを入れてみて、これかっこいいかもっていう。「Dogmatic Stigma」もそうだったし、あとは「Crimson Sentinel」も。

DOUGEN:(笑)

KOUTA:笑ってますけど(笑)、この曲は"磨く"という作業を一切してなくて、秒でできたんですよ。アルバムの中でも唯一、肩の力を抜いて作った曲と言ってもいいぐらいで。なんていうか、"こんなメロディック・デス・メタルは恥ずかしい"みたいな感じ(笑)。

DOUGEN:仮タイトルが"初心者向けメロデス"みたいな感じだったんですよ。

KOUTA:アルバムの中盤以降に入っている、ちょっとわかりやすめのキラーチューンみたいな。そういうのを狙って作ったんですけど、本当に何もひねらなかったんです。でも、もしかしたらこれも、ヴォーカルを入れたらカッコ良くなっちゃうんじゃないかなと思って。入れてみたら、案の定、DOUGENも大喜びでした。

DOUGEN:バンド・マジックというか、THOUSAND EYESマジックというか。デモの段階ではふたりとも"いや~......"とか言っているんですけど、ふたりで話し合いながらヴォーカルを録って、聴いてみると"あれ? かっこ良くない?"っていう。

KOUTA:そのときのテンションが上がっているDOUGENの姿を撮った動画があるんですよ。"これめっちゃかっこ良くないですかー!?"って叫んでるやつが。

DOUGEN:(笑)そういうのは1stの頃からあったんですけど、今回は一番顕著だったのかなって。

KOUTA:そうだね。「Eye Of The Hate」のサビとか(笑)。

DOUGEN:あぁ。こんな恥ずかしいサビはできない! って。

KOUTA:ネタぐらいの感じでぶっ込んだんですよ。最初はめちゃくちゃ嫌がっていたんですけど、できあがってみたら─―

DOUGEN:これかっこいいっすね! って(笑)。だから、とりあえず1回やってみるんです。嫌がりはするけど、やってはみるっていう。

KOUTA:でも、これはもはやルーティンですよ、1stのときから。

-前例があるからこそ、一度試してみようっていう気持ちにもなりますよね。あと、今作には"Deluxe Edition"もあって、こちらにはレア・トラックとデモ音源を収録したボーナス・ディスクが付属されています。収録曲としては、アコースティック・アレンジをされた「Last Rebellion (Acoustic)」、「Black Sun (Acoustic)」があって。どちらも1stアルバムに収録されていた曲ですけども。

KOUTA:アコギ・アレンジ自体は、特典につけたことがあって。アコギにしたらかっこ良くなりそうだなと思った曲を、1stアルバムから選んでみたっていう感じではあるんですけど、僕自身がもともと東方アレンジをやっていたんですよね。メタル・アレンジもそうですけど、原曲を破壊してアレンジするパターンが結構得意というか。長年そういうのをやっていたので、今回のアコースティック・アレンジに関しても、リフとかAメロとかはもう関係なく、いろんなところからメロディを持ってきて、入れ替えて1曲にしていて。もともと「Black Sun」は趣味的にそういうアレンジで一回作ったこともあったんですけど、今回はこの2曲を仕上げたっていう感じでした。

-ギターのみではなく、打楽器やストリングスも入ったアレンジですね。

KOUTA:どうしてもアコギだけだと、やっぱりちょっとバリエーションがないというか。僕もこういったアレンジの引き出しがめっちゃあるわけじゃないので、「Last Rebellion (Acoustic)」に関してはストリングスとかを入れて差をつけたり、「Black Sun (Acoustic)」は中東の太鼓みたいなやつを入れてみたりしたんですけど、めっちゃくちゃ笑ってたよね?

DOUGEN:"太鼓を入れてみたから聴いてくれ"って言われて、"バカなのかな?"って返した気がするんですよね。

KOUTA:ほんとに口が悪い。そしてそれをひょうきんさでごまかしている。

DOUGEN:まぁ、これもある意味"BETRAYER"なのかもしれないですけど、(KOUTAは)人が思いつかないことをすぐにやりたがる節があって。その確認をされるんですよ。"これどう思う?"って。でも、僕は真人間なので(笑)。

-でも"バカなのかな?"は、="面白いね"でもあるっていうことですよね?

DOUGEN:そういうことです!

KOUTA:"面白いよね"のあとに"俺はやらないけど"がつくでしょ?

DOUGEN:そういうこと!

-(笑)「Under The Red Sky」や「Fictional Vision」(ボーナス・ディスク収録曲)はいつ頃に作られたんですか?

KOUTA:この2曲は『BETRAYER』の制作期間中に生まれた、普通だったらゴミ箱に行く曲でしたね。どっちも今回のアルバムで挑戦してみようと思って作ったものではあって。「Under The Red Sky」だったら、普段だったらやらないような、ピアノとのユニゾンをしていたり、Aメロでヴォーカルが囁いていたりとか。でも、さすがにちょっとこれはやりすぎかなと思って。「Fictional Vision」は、方向性としては「Shadow Dancer」とか「Everlasting Trail」にちょっと似ているところはあるんですけど、アルバム本編に入れるにはちょっと強さが足りないかなと。でも、どっちもボーナス・トラックとしてなら、むしろ絶対に聴くことができないタイプの曲でもあるからいいかなって。こういう機会がないと、陽の目を見ることは絶対になかっただろうなってタイプの曲だと思います。

DOUGEN:この2曲は、これまでの曲と比べて本当に毛色が違うし、俺の中ではトゥー・マッチ・メロデスみたいなイメージがあるんですけど。でも、昔は完璧に、ギチギチに構築されたアルバムを出さなきゃいけない気持ちもあったんですけど、ちょっと年齢を経たことで、こういうのって俺がキッズだったら嬉しいよなと昔を思い出したりして。ボーナス・トラックとかデモ集とかって結構嬉しかったじゃないですか。そういうのを聴きたい人もいるのを思い出して。だから、これを聴いて"ダサい"って言われてもいいけど、まぁ、言ってもこれ、2軍選手だからね? という(笑)。

-あくまでもそういう立ち位置の曲だからという。

DOUGEN:昔だったらムキー! ってなってたかもしれないですけど、そんなことを言われても全然許せるというか。そういうマインドにもなった感じですかね。こういう切り口の曲もあったんですよ的な感じで楽しんでもらえたらなって。

-昔は完璧に構築した部分以外のものは出してはいけないという気持ちもあったんですね。

DOUGEN:ありましたね。そこは俺個人の話になってくるんですけど、"怒れるデス・メタル・ヴォーカリストはこうあるべき"みたいな、自分に課していたヴォーカル像みたいなものがあって。笑顔とか一切見せず、キレ散らかして帰るみたいな。でも、根がこんな感じなんで、どんどん崩れていくんですよ(笑)。昔はそれが許せなかったけど、今となってはっていう。

KOUTA:ついつい楽しくなっちゃうんだよね? ライヴのときとかも。

DOUGEN:そうそう。ニヤニヤしちゃうから。そうやって自分に課していたものが、どんどん剥がれてきて。この2曲のヴォーカルも、激烈本テイクっていうわけではないけど、それでもいいかなと思えるようになってきた。

-KOUTAさんは自分に何かイメージを課していたことって過去にありました?

KOUTA:ライヴに関していうと、僕も最初の頃は"怒れるメロディック・デス・メタル・バンドのギタリストたるもの、常に客席を睨み続けなければいけない"みたいな。前にやっていたバンドがそんな感じで、アンダーグラウンドの帝王になるんだ! みたいなスタイルでやっていたのもあって、最初は刺々しい表情をなんとか頑張って出していたかもしれないですね。今はわりと自然体かもしれないです。

-"こうあらねばならない"みたいなイメージを排除できたからこそ、"BETRAYER"というタイトルを付けることができたところもあるんでしょうか。

DOUGEN&KOUTA :あぁ、なるほど(笑)。

KOUTA:そうかもしれないですね。タイトルについて"誰かに裏切られたんですか?"とか"誰かのことを指しているんですか?"みたいな質問を受けたこともあったんですけど。もしかしたら昔であれば、何か嫌なことがあったりして、それに対して怒りをぶつける意味で"BETRAYER"ってタイトルを付けていたのかもしれないけど、これは自分側の目線というか。自分を見つめている、自分が"BETRAYER"であるという発信をするのは、たしかに今だからこそできたのかもしれないです。

-そういった気持ちの持っていき方みたいなものは、積み重ねてきたものがあるからこそできたこと、というか。

KOUTA:そうかもしれないですね。結果的に振り返ってみると、今回は一番自信のある曲が揃ったアルバムになったんですよ。だから、例え話ですけど、仮に3rdアルバムまでの曲が、何かの問題でもう演奏してはいけませんって言われても、なんの問題もないぐらい自信のある11曲が揃ったかなと。自信を持って最高傑作と言えるアルバムになったかなと思います。そういう意味では、本当の意味での"BETRAYER"は、次の作品かもしれない(笑)。次こそ本当に新しいことに挑戦する可能性はあるかもしれないですね。

DOUGEN:今"最高傑作"って言っていたんですけど、個人的に、デモを貰った時点では今までの作品の中で一番微妙だったんですよ。コロナ禍でちょっとやる気がなかったっていうところもあるんですけど(笑)。でも、いざレコーディングが始まったり、最後まで詰めていったりすると、おぉ! っていう。だから、僕としては最高傑作というよりは"今までの中で一番かっこいい曲がたくさんある"みたいな感じで、デモを貰ったときと完成したときの落差が、ある意味、俺にとって"BETRAYER"というか(笑)。あのときデモを貰って、首をひねっていた俺をBETRAYしているっていう感じですね。普段完成品ってあんまり聴かないけど、これは未だに全然聴いてますし、メタルヘッドとしても、おぉーって思うところはあるので。いい意味で、俺は"BETRAY"されたかなと(笑)。

-なるほど(笑)。

DOUGEN:あと、曲に関しても、今までと毛色が違うものを見せたいってKOUTAは言っていたけど、結局、KOUTA節に戻ってきているんですよ。本人はわからないかもしれないけど、ギター・ソロだったり、曲のテクスチャーだったりがやっぱりKOUTA節なんです。そこは"BETRAYER"ではないから、逆に最高だと思います。

-揺るがない幹がしっかりとあるという。

DOUGEN:そうです。さすがリーダー、さすがコンポーザーって思うところはありますね。"BETRAYER"って言ってるのに結局してねぇじゃん! っていう。

KOUTA:してる。してるよ(笑)。

DOUGEN:いや、だからこそ信頼できるヘヴィ・メタル・コンポーザーだってことだよ。

KOUTA:そうですか(笑)。

DOUGEN:そう。より芯を厚くしたっていう感じ。

-本作を持ってのツアー("BETRAYER TOUR 2022")も決定してます。東京、名古屋、大阪、札幌はワンマン公演ですね。

KOUTA:アルバム全曲やろうと思ってます。なので、"踊れるメロディック・デス・メタル"も含めて、全曲披露したいなと考えてますね。

DOUGEN:あと、ツアーでYU-TOのビート感をみんなにも味わってほしくて。バンドがタフになった印象はあるんですよね。より男臭くなったというか。バンド・アンサンブル的に、今回の曲も結構噛みつくようなものが多くて、それがYU-TOのドラムにも合っているから、そこも見てもらいたいです。

KOUTA:「Bastard Angel」のビート感とか、たまらないしね。思い出してみると、正直僕もDOUGENと同じで、今回のアルバムはすごい微妙だなと思いながら作っていたんですよ(笑)。ずっと確信を持てないまま、いろんな曲を作っていて。

-たしかに、KOUTAさんの中で"変化"が重要な要素だったのもあって、そこで確信を掴みにくかったところはあるかもしれないですね。

KOUTA:でも、DOUGENのヴォーカルもそうだし、YU-TOのドラムが最終的に入って曲を並べてみたときに、もしかしたら今回結構いいんじゃない? っていう感覚になったので。そういう意味では、やっぱり彼のビート、ドラムはかなり要になっているんだなって振り返ってみてすごく思いますね。