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INTERVIEW

BRIDEAR

2022.04.19UPDATE

2022年04月号掲載

BRIDEAR

Member:KIMI(Vo) MISAKI(Gt) AYUMI(Gt) HARU(Ba) NATSUMI(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

守るべきもののために戦うこと。BRIDEARは今その意志を固めたうえで、アルバムに"AEGIS OF ATHENA"というタイトルを冠することにしたようだ。AEGIS=イージスとは、つまりギリシア神話における都市の守護を司る女神、アテナが携える聖盾のことを指す。彼女たちにとっての盾とは音楽そのものであり、今作で具現化された音は日本のみならず、世界をも視野に入れた新領域に踏み込んだものにほかならない。なお、今回のインタビューでは、「Greed」を楽曲提供することになった元Janne Da Arcのメンバーであり、現在はNicori Light Toursにて活動中のkiyoが途中からゲスト参加してくれることに。最後までお楽しみあれ。

-最新アルバム『AEGIS OF ATHENA』についてのお話をうかがう前に、今回はまず、昨秋に行ったというドイツやイギリスなどを回ったEUツアー("ヨーロッパツアーINTO THE DARK FOREVER TOUR 2021 -EU-")にまつわるお話を聞かせてください。日本のバンドとしてはいち早い海外ツアー復帰になったのではないかと思うのですけれど、やってみての手応えはみなさんいかがでした?

HARU:どうもタイミングがすごく良かったみたいで、行った先々で"よく来たね。君たちのために久しぶりにライヴハウスを開けたよ!"って言われることが多かったです。私たち的に3回も延期してそのつど仕切り直したうえでのツアーだったし、今回も1公演だけはキャンセルになっちゃいましたが、それでも他は全部やって無事に帰ってこられたので本当に行って良かったと思います。

KIMI:お客さんたちの雰囲気からも、思っていた以上に"待ってたよ!"という気持ちを感じることができて感激しました。

NATSUMI:しかも、日本はまだ規制があるんですけど、向こうはワクチン・パスポートがあればフルキャパのギュウ詰めでも大丈夫だったんですよ。ステージから客席のほうを見たときに、その感覚がなんだか懐かしかったです。

AYUMI:私とNATSUMIは海外ツアーというもの自体が初めてだったので、いろんな意味で新鮮な体験ができましたね。ライヴに来てくれたお客さんたちの感情もステージにストレートに伝わってきて、すごく受け入れられているなと感じて嬉しくなりました。

MISAKI:さすがに、移動中はいろいろと制限もあってまだまだコロナ禍だなと感じることも多かったですけど、ライヴ中はそういうこともすべて忘れてしまうくらいに無心で楽しめたので、逆に私たちのほうが向こうのみんなからたくさんの元気を貰った感じもありましたね。

-ちなみに、昨秋だとまだ帰国後隔離が大変だったのではないですか?

HARU:2週間は自宅隔離でした。でも、わりとうちのメンバーはみんな普段からインドア派なので、それぞれ有意義に過ごせてたと思います(笑)。

-かくして、そんなEUツアーからみなさんが帰国したのが昨年の10月だったわけですけれど、そのあとアルバム『AEGIS OF ATHENA』の制作に入られたのは、いつごろからだったのでしょうか。

KIMI:それぞれの曲ができた時期は結構バラバラで、もともと作ってあったものもあれば、EUから帰ってきてから作ったものもありますけど、レコーディング自体は1月から2月にかけてやっていた感じでした。

-なお、今作『AEGIS OF ATHENA』は、前作『Bloody Bride』(2021年リリースのアルバム)と比べて格段に英語詞の楽曲が増えていますよね。それによって歌とサウンドのバランスや立ち位置、さらには曲そのものの聴こえ方もかなり変化したように感じているのですけれど、バンド側からすると今作ではどのような方向に舵を切りたいと考えていらしたのです?

KIMI:やっぱり、ワールドワイドな視野で作っていくアルバムにしたいということは、当初から考えていましたね。

MISAKI:そのうえ、EUツアーから帰ってきたあとは、海外で戦える曲を作ろうという気持ちがさらに強くなったので、そこは曲作りをしていくときにも反映されて、強気な感じの曲が増えていくことになったと思います。メンバー間でも、"ヴォーカルはキャッチーだとしても演奏は難解でテクニカルで壮大みたいな、バンドとしての存在感をより強めたものを作っていきたいよね"というような話が出てましたね。

AYUMI:私も曲作りはEUツアーから帰ってきて始めたので、今回は最初から、英語の歌詞の曲が増えるんだろうなということを予測しながら作っていたところがありました。

NATSUMI:私にとっては英語詞ということを前提に曲を作っていくのは初めてのことだったんですけど、自分なりに英語詞が乗りやすいようなメロディにしていくようには心掛けました。英語はよくわかんないので、適当に"♪○$▽≠※☆§?♪"って謎の言葉で歌いながらやっていきましたね(笑)。

-配分として今作『AEGIS OF ATHENA』には英語詞のものが8曲、日本語詞のものが3曲収録されることになりましたが、正直なことを言うとそれぞれが"別のバンド"の曲に聴こえてくるくらいに、詞の言語が変わることで全体的な響きまでもがずいぶんと違って聴こえてきました。そして、その中でも1曲目にあたる「Side of a Bullet」にはとにかく驚かされましたよ。いきなり9分超えの大曲をぶつけてくるとは......!

HARU:これは曲ができたときから、今回のアルバムの1曲目にしようという話になっていたものなんですよ。まずはこれを聴いてほしかったんです。

-もはやメタルも通り越してのプログレ的な構成の曲ですよね、これは。

MISAKI:曲としては私が原形を作って、そこからアレンジを手伝ってくださっているYAMATOさんと一緒に、より壮大に仕上げていくかたちになったんですよ。

NATSUMI:リズムの切り替わりがすごく多いので、叩いていくときには曲に置いていかれないようにするのが大変で、これはかなり頑張りました(苦笑)。

MISAKI:「Side of a Bullet」のレコーディングのときに私からNATSUMIちゃんにお願いしたのは、"ぶっ飛ばすぞ!"っていうテンションで思いっきり強気に叩いてねっていうことだったんですね。そうしたら、こんなに完璧なテイクを決めてくれたんです。ほんと天才かと思いました。

-リズム隊の相方であるHARUさんは、この「Side of a Bullet」をどのようなスタンスでプレイされていきました?

HARU:基本的には激しくて速い曲なんですけど、ベース・パートに関しては、あえて少しゆったりめに置いていくように弾くことを心掛けました。というか、前半の3分くらいはベースの音自体が出てこないんですよね。途中から参加していくようなかたちで、フレーズ的には同じようなものを何回か繰り返す展開もあるものの、そこは少しずつニュアンスを変化させて場面を変えていくことを意識しながら、聴かせ方を工夫しました。

-AYUMIさんが「Side of a Bullet」をプレイしていくうえで、ギタリストとして大切にされたのはどのようなことでしたか。

AYUMI:MISAKIちゃんの作ったデモをコピーしていくときに、意外なハモりというか、"ここでこのフレーズが入ってくるんかー!"みたいな部分が結構あって、この曲には今までにないスリルを感じたんですよね。そういうところは、自分としてもできるだけ生かすように弾いていきました。

-一方で、ギタリストとしてのMISAKIさんは、この「Side of a Bullet」とはどのような姿勢で向き合われていったのでしょう。

MISAKI:この曲に関してはギターのバッキングをやりたい放題に凝って、完璧に作り込んでいったので、イントロにしてもサビにしても我ながら"このギターのリズム感、めちゃめちゃカッコいい!"って満足しながら弾けました(笑)。

-いい意味での自己陶酔をしながらプレイできたというのは理想的ですね。

MISAKI:もちろん、各パートの絡み合いとかもすごく面白いし、AYUMIちゃんとのギターの絡みもすごくいいポイントになってるので、自分のギターだけがどうこうということではないんですけど、とにかく曲としての完成度に自分でも納得してるんです。

-そして、「Side of a Bullet」はこれだけの9分超えの大曲で、なおかつ詞の内容もなかなかシリアスですから、そうなってくると、ヴォーカリストとしては心身ともに相当なスタミナを要求されたのではありませんか。

KIMI:幸いキーがものすごく高いみたいなタイプの曲ではないので、フィジカルの面でのスタミナは大丈夫でした。ただ、心情的な面ではこの曲を歌で表現していくのにはたしかにスタミナが必要でしたね。自分が書いたわけではなくてMISAKIの書いたものではありますけど、何しろ内容が重いですから。そこを理解しながら、英語の発音も外国の人たちが最低限は聴き取れるレベルまで近づけるように、気を使いながら歌っていくのは難しかったし、疲れたというと言い方は悪いですけど(笑)、初めての感覚だなと感じるところもありました。

-その甲斐あって、冒頭の「Side of a Bullet」を筆頭に、今作でのKIMIさんはヴォーカリストとしての新境地を切り拓けたのではないですか?

KIMI:そうですね。今はまさに英語の勉強も続けているところなんですけど、少なくとも前作のときよりは英語詞を自分らしく歌えるようになった気がします。今回の英語詞はメッセージ性もかなり強いので、とにかくそこを歌でどれだけ伝えられるのかが自分にとっては大きなポイントでした。

-メッセージ性という部分に関しては、ここで作詞をされたMISAKIさんに、「Side of a Bullet」についての解説を少しばかりしていただけますと幸いです。ちなみに、英語で文を書くことはもともとお得意だったのですか?

MISAKI:いやもう、全然そんなことはなかったです。英語詞というもの自体、私はこの曲で初めて書きましたから。英語指導のスタッフさんに相談しながら、なんとかかたちにした感じだったんですよ。

-「Side of a Bullet」の詞は、あらすじ的に言うと"ビフォー・コロナの世界とアフター・コロナの世界を対比させながら、今この苦境と戦っていくことで自由を手に入れよう"というメッセージが、凝縮されたものになっているのだと思います。しかし、解釈の仕方によっては、平時と戦時を対比した歌ともとれるように感じるところもありまして。"Don't tolerate violence as the supreme authority=強大な権力の暴力を許すな!"といったくだりなどは、今般の世界情勢を彷彿とさせるところがありますよね。

MISAKI:まさに、もともとはコロナ禍のことを詞にしたんです。アルバム・タイトルの"AEGIS OF ATHENA"も、改めて音楽の力を信じながら、希望を持ってコロナ禍を戦い抜いていこうと覚悟した自分たちの決心や姿勢を、ギリシア神話の中で都市の守護をする女神として出てくるアテナが持つ聖盾、イージスに例えて付けたものなんですよ。だけど、実はコロナだけじゃなく別の現実ともシンクロしちゃったんだな、ということに一昨日初めて気づきました......。

HARU:このところのニュースを見ていて、私もBRIDEARから予言者が出ちゃった!?って思いましたね。

-いずれにせよ、社会心理学などの面から見ても、世相が荒れているときほど人は音楽に救いを求めたくなる傾向にあるはずですので。この機にBRIDEARが力強く「Side of a Bullet」を提示し、アルバム『AEGIS OF ATHENA』でバンドとしての姿勢を打ち出すことは、とても大切なことなのではないかと思いますよ。

KIMI:実際、こういう時代だからこそ作った曲というのもあるんです。「Preference」はコール&レスポンスを入れたくて作り出したもので、まだ日本だと今の段階では、ライヴでみんなとのコール&レスポンスは実現できないかもしれないですけど、海外ではもうOKなところもあるし、近い将来には絶対それが叶うことを願いながら作りました。

-KIMIさんは「With Me」も作られていますけれど、こちらはどのようなヴィジョンを持ちながら作られたものでした?

KIMI:最初はバラード的なものを目指してたんです。でも、アレンジの結果バラードとはまた少し違う雰囲気になったので、詞も音に合わせて練り直しました。

-「With Me」はギター・ソロの構成も素敵ですね。

MISAKI:あのソロは前半が私で、後半をAYUMIちゃんが弾いてます。個人的には、ギター・ロックっぽくどこか不安定な感情を爆発させるようなつもりで弾き倒しました。

AYUMI:このソロは、シンプルに自分の中の泣きのギターをかたちにしましたね。音数も少なくしてじっくり聴いてもらえるようにしてますし、チョーキング多めです。