INTERVIEW
GRANRODEO
2020.11.04UPDATE
2020年11月号掲載
Member:KISHOW(Vo) e-ZUKA(Gt)
Interviewer:吉羽 さおり
今こそ我々みたいな、エンターテイメントのところにいる人間の出番――"出番、来てるよ"っていう
-アニメ"黒子のバスケ"との出会いですね。
e-ZUKA:この曲からDisc 2は"黒バス(黒子のバスケ)"だらけですね(笑)。
-大きな手応えというのを得た作品でもあったんですか?
KISHOW:正直「Can Do」を世に出した時点ではまだそこまで手応えはなかったんです。「Can Do」という曲がこんなに受け入れられていたんだとわかりましたね。そのくらい本人たちが、肩の力が抜けてたほうが、世間は受け入れてくれるんだなとは思いました。もちろん作品の力もすごく大きいですし、あとはMVがポップで、転機と言えば転機ですよね。ただこれは結果的に「Can Do」だったなという感じで、どちらかというと「ROSE HIP-BULLET」のほうが初めてオリコンの週間で7位になって、1桁になったというのもあったし、未だにライヴで必ずやる曲なので。みんなこんな曲を待っていたんだな、これがGRANRODEOらしさなのかなっていうのを最初に思った曲だったかな。ヘヴィネスというか、シリアスで遊びがない感じの曲ですけどね。
-そうですね。
KISHOW:でも、こうしてシングル・コレクションとして並んでみると、「Can Do」から始まる"黒バス"の弾幕というか、全7曲あるというのは大きいですね。
-「Can Do」があったからこそ、こうして続いていったというところですしね。ひとつの作品にここまで長く関わることもなかなかないでしょうし。
KISHOW:思ってもみませんでした(笑)。「変幻自在のマジカルスター」や、「Punky Funky Love」、そして「メモリーズ」ときて、もう「メモリーズ」で終わりかと思っていたんですけど、劇場版がありますっていう(笑)。どうするんだよ、「メモリーズ」で思い出にしちゃったよって。それで書いたのが「Glorious days」、栄光の日々でしたね。
-同じシリーズの曲を書き続ける難しさというのはありそうです。
KISHOW:歌詞に関してはそうですね、言いたいことはもうすべて出てるよっていうのはありました。でも、楽曲は7種類全部違うので、すごいなと思いますよね。
e-ZUKA:「RIMFIRE」や、「メモリーズ」なんかはすごく苦労して作りましたね。あとは僕にしては順調にできた感じでした。「The Other self」なんかは、始めに出した曲が1回ボツになったんです。もともと"黒子のバスケ"では制作側からの指定というのがあまりなく"テンポ速めで"くらいのオーダーはあったかな。最初に、僕の中ではこういうのがいいなと思ってメロスピみたいな曲を作ったんです。自分で、仮タイトルで"グローリー"と付けちゃったりして、勝利の歌だって出したら"なんかエンディングみたいだね"とスタッフに言われて。そう言われてみればそうだなと。"もう1回違うタイプの曲にトライしてくれないか"ということだったんですけど、そのときにもう締め切りまで2日しかなかったんです。1日は別のセッション・ライヴの仕事が入っていたので、そのライヴをやりながら、休憩のときや帰りに頭の中で作って、次の日に速攻で録音してというのが「The Other self」で。わりと一筆書きには近い感じでしたね。
-そして、あの疾走感のある曲が誕生したんですね。
e-ZUKA:「Punky Funky Love」も、"パーティー感"みたいなキーワードを言われたのかな。それで作った曲で。"黒バス"はすごく自由なんですよね。
-タイアップは多いですが、面白いのが、自由度がとにかく高いし、新しいところに踏み込む曲にそれぞれがちゃんとなっているということですよね。
e-ZUKA:もちろんアニメのタイアップ曲ということで作品に寄せるというか、作品に沿った表現はするんですけど。それとは別に、GRANRODEOの新しい作品としてのフレッシュ感、GRANRODEOの新しい作品として見たときにどんな感じになるかというのを、僕らもスタッフも考えているんですよね。
-だからこそ、こうして一挙に並んだときの威力はあります。
e-ZUKA:そうですね。特にアニメのオープニングとかだと、だいたい頭の1分半くらいのところで表現しきっちゃってる感じがあるんですよね。だから、どうしても構成的に似ちゃうんです。それにしては、僕も全部続けて聴いたときに、わりと楽しめるなと思って。面白いのは、ものによっては1分半に収めるにはこのBメロ部分を半分にしようというのがあったり、でも、シングルとして出すときには戻そうというのもあったりするんですよね。「偏愛の輪舞曲」とか、最近では「情熱は覚えている」もそうですけど、アニメ・サイズだと全然構成が違うんです。KISHOWは、最初はアニメ・サイズの曲しか知らないわけだから、シングル化するにあたって急に"ここに歌詞入れてくれ"っていうのもあるんですよ(笑)。アニメ・サイズ版でも歌詞が繋がってたのに、ここにもう1個入れてくれっていう。
KISHOW:そういうのはありますね(笑)。そこは無理矢理、自分の中で整合性をつける感じかな。完璧主義者じゃないから。悪い言い方ですけど、"ま、いっか"というのはある。
-趣旨さえ合っていればいいと?
KISHOW:もう合ってなくてもいい(笑)。投げっぱなし、ジャーマン・スープレックス・ホールドみたいな。
-15年という長い時間で、初期の頃に書いた言葉や思いに自分が再びかき立てられたり、青臭いこと考えていたなというのも感じたりするものですか?
KISHOW:青臭いですよ。「Infinite Love」なんてすげぇなと。曲が曲だから、しょうがないですけどね(笑)。当時のプロデューサーにダメ出しも貰ったのは覚えてますね、"きーやん(KISHOW)、これはちょっと中学生っぽいよ"って(笑)。でも、「DECADENCE」かな、あのラップ部分で初めてe-ZUKAさんに"歌詞書いたことないわりに、こういうのもできるんだ。器用だね"って感心されたのは覚えてます。ちょっとお褒めをいただいたのは覚えてる。
e-ZUKA:覚えてないなぁ。
KISHOW:なんだよ(笑)。でも、そのあたりから段々と整ってきたのかな、俺のわりにはいい歌詞書くじゃんって。「NOT for SALE」での遊び心とかね。30歳くらいでこうしてGRANRODEOを始めるまで、全部歌詞を書くっていう経験もなかったけど、自由でいいじゃんって。作詞家でもないし誰かに曲を提供するでもないし、最悪整合性がとれなくてもいいかなっていう、面倒臭がりで適当なところがあるんですよ。自分が歌うために書くんだからいいんだっていう隙だらけなところでやってますからね。正解もないから。言葉を制限しないというのは、最初から思ってましたかね。
-こうしてまとまった作品をリリースして、GRANRODEOがこの新しい世界で何をやっていくのか楽しみです。ちょうど「welcome to THE WORLD」のアウトロって、壮大なRPGゲームが始まっていくような、ファンファーレ感があるので、なおさらで。2020年としてはこんな年になってしまってはいますが、そのぶんここからの展望として描いていることはありますか?
KISHOW:特に展望というのはないんですよ。Let it beという感じで。状況に合わせて、色即是空、ジタバタしないっていう。GRANRODEOが何か持っているんだったら、時代にまだ捨てられないんだったら、周りとか、空気みたいなものがなんとかしてくれるって思ってるんですよね(笑)。ちゃんと強い星のもとに生まれてるだろっていうつもりではいるんです。まぁ、ドキドキしながら暮らしてますけどね。食いっぱぐれたらどうしようって(笑)。でも、今こそ我々みたいな、エンターテイメントのところにいる人間の出番だよねというか、"出番、来てるよ"っていうのはある。こういうときに必要とされるみたいなGRANRODEOでありたいし、もうちょっと待ったらまたいいときがくるかもしれないし、観客を入れてライヴをやる日が来るかもしれないし。それまでひたすら、少しでも誰かを勇気づけられる存在ではいたい。きれいごとですけど、そう思いますね。僕らの出番なんじゃないかなって。