INTERVIEW
GRANRODEO
2020.09.07UPDATE
Member:KISHOW(Vo) e-ZUKA(Gt)
Interviewer:吉羽 さおり
-アニメのOPテーマということで、作品のテーマやムードを汲んで書くところもあると思うんですが、そこにご自身の思いというものはどのくらい反映されるんですか?
KISHOW:そういうのをあえて出すというのは、あまりないんです。僕は(歌詞にあるような)こんな感じはないですしね。例えば、"絶対負けんな"とか、"頑張れ"とかいう歌詞を書いても、結構負けるし、逃げるしなぁっていうのはあります(笑)。ただ言葉使いとかは自分の持っているものしか出ないと思うので、結果的に、パーソナルな部分が歌詞に出ちゃってるんだろうなとは思いますけど。自分のすべての経験を反映させてやろうとか思いながら、日々生きているわけでもないんですよね。
-もともとテーマがあったほうが書きやすいというのはありますか?
KISHOW:歌詞は毎回難しいですね。まだBメロか......っていう(笑)。A、Bメロでやりたいこと終わっちゃったよっていうか。e-ZUKAさんの書く曲が年々シンプルじゃなくなってきている気もしているんです。
e-ZUKA:うんうん。
KISHOW:"こねくり回しやがって"というね(笑)。そういうので歌詞は大変だったりしますよ。でも、楽しみながらチャレンジしていますね。
-先ほど"負けるし、逃げるしなぁ"と言っていましたが、"バキ"のようなハングリーさに共鳴するようなところはあまりないですか?
KISHOW:ないんです。僕は、負けず嫌いみたいなところはあるけど。負けていいと言うとおかしいですが、僕は絶対に逃げるんです。くだらない世の中だからとか、ことさら言いたいわけじゃないけど、あまり真正面からぶつかりすぎても病むなって思っていて。結局、及び腰で生きてますね(笑)。基本、いつでも逃げられるようには生きてるというか。人生これからあと何年生きるのかわからないですけど、訪れる困難から全部逃げ切ってやるって。影も踏ませねぇと思ってます(笑)。かっこ悪いですけど。
-KISHOWさんからは、どんどん曲が濃く難しくなっているというお話でしたが、曲作りにおいてはGRANRODEOが進んでいくに連れてもっと面白いもの、もっとこれまでと違ったものをっていうのはあるんですか?
e-ZUKA:曲調によるんですけどね。特にタイアップとなると。そんなに観ているわけではないですけど、昨今のアニメのオープニングとかを観ていても、展開が激しかったりするんです。最近はまた1周してシンプルなものもあるんだと思うんですけどね。でも、飽きさせないものにとか、アニメのオープニングとなると、90秒でどれだけ画との相乗効果でアニメを表現するかとか、どう引き込むかというのがあるじゃないですか。そこで必要になってくるのは、フックなんですね。フックって逆にいうと違和感や、"なんでそうなっちゃったの?"みたいなところが引っ掛かるわけじゃないですか。癖になったり、変なんだけどまた口ずさんじゃう中毒性であったりが、アニメに限らずですけど、オープニングに相応しいという流れがあって。そういうのはありますよね。あとは意識して最近の音楽や若い人の音楽を聴いて、なんでこういうのがいいのかなって思いつつも、聴いているうちに"なるほどね"と。それが自分のフィルターを通して出てくるとか。そういうことは意識的にはやっているかもしれないですね。
-なるほど。
e-ZUKA:だから、なるべく前回の曲とかこれまでの曲と被らないように、次のものを出すときには1ヶ所でも新しい、今までになかったものを入れるということは思っていますね。
-GRANRODEOと言えば、重厚で華やかなギター・サウンドの面白さというのも、肝になっていますね。
e-ZUKA:それが入らないと僕がいる意味がないですからね。ステージで何したらいいんだっていう。たまにそういう曲もあって、そのときは踊るんですけど(笑)。だから、そういうのも実はありなんです。ただやっぱり、あまりにそうじゃないだろう感のあるものを出すと、いや、求めてるのはそうじゃないんだよなっていうのもあると思うんですよ。あまりファンを裏切りたくないんですよね。だから、"これがGRANRODEOだ"みたいになるところもありますよ。そういうのを入れると安心しちゃうところはあるんですけど、なるべく"じゃない"ところで成立させて、そこに必要なギターを入れたいなと。
-メタルやハード・ロック的な要素というのは、このGRANRODEOではずっと入っているものですかね。
e-ZUKA:僕のルーツがやっぱりそうなので、入っちゃうんです。(※激ロック2020年3月号を手に取って)Ozzy Osbourne......もう中学生くらいでOzzyのバンドに入りたかったですよね。ギターの速弾きする人を"シュレッダー"っていうんですけど、1983年くらいからグランジが出てくる直前くらいまでは、Yngwie Malmsteenが出てきたりして、誰が一番速いかみたいな、そういうなかでいっぱい上手い人がいたし。今のようなラウドロック、というとどこらへんのものを指すのかというのはあまりわからないですけど、言葉的なところではニューメタルとかはわりと無理して聴いた感じはありましたね。僕はGRANRODEOをやる前に専門学校の先生をやっていたんです。そうなると毎年18歳が入学してくるんですけど、その時代時代でいろんな流行りのようなものがあったので、"こういうのが流行ってるんだ、ちょっと聴かせてよ"っていうのはしましたけどね。
-そういういろんな年代の音楽というのも聴きながら、でも、一番に出てくるのは自分のルーツなんですか?
e-ZUKA:初期は特にそうでしたね。まだ曲が全然ない頃、ライヴをやるために自分たちの持ち曲を増やしていくのに、自分が好きだったあんな感じの曲をやりたい、こんな感じの曲をやりたいというのをやっぱり入れたりしました。でも、曲と言っても、核になるところはギターのリフとか、雰囲気のところなので、メロディはまた全然違いますよね。メロディはやっぱりどちらかというとメロウな、洋楽でもAOR的なものであるとか、あとは歌謡曲とかも大好きだったし、そういう影響は強いと思います。
-ヴォーカリストとしてKISHOWさんがいて。この声の存在感は曲にも影響を及ぼすことは多いですか?
e-ZUKA:メロディ・ラインということでいうと、あまりKISHOWのことを意識して作っていないんです。"こういうスタイルで、これしか歌えません"という感じじゃないので。いろんなタイプを歌うし、歌いたがるし。だから、なんでもありだっていう感じには作ってますね。自分で作ってみて、これはちょっとイマイチだったかなっていう曲もあるじゃないですか。あとは歌でなんとかしてもらうしかないなっていう感じで、歌ってもらうと、"あぁ、やっぱGRANRODEOだね、いいね"ってなるので歌の力はデカいと思いますね。
-KISHOWさんは意識的なところでヴォーカリストとして、GRANRODEOとして、どう表現するかというのはありますか?
KISHOW:僕は、歌い手としては"なんでも屋"だと思っているので。はっきり言えば、カラオケ出身なんです。だからなんでもたしかに歌いたがるし、歌いたいし、どんな曲がきても、バッチこいっていうスタンスではいるんですよ。"これは俺っぽくないから、歌いたくねぇな"っていうのは、ないんです。極論を言えば、演歌でもいいんですよ。少し前も、カラオケで石川さゆりさんを歌ってきましたし(笑)。
-そういうことではリスナーとしてもいろんなタイプの音楽を聴くんですか?
KISHOW:最近は、耳馴染みのいいニューソウル的な感じが多いですかね。I Don't Like Mondays.とか。
-それは意外というか、GRANRODEOとは温度感がかなり違いますね。
KISHOW:自分が歌うのと聴く音楽は違います。おそらく今は、生活にそういうものを求めちゃってるんでしょうね。(※iTunesを見ながら)今、入ってるのも......今さらですけど、昨日EURYTHMICSとか買ってます(笑)。あとは、土岐麻子さんとか、Awesome City Clubとか、あのへんも好きですね。
-ジャジーだったり、ソウルっぽいものが多いんですね。
KISHOW:GRANRODEOでは披露する機会はほとんどないんですけどね。そういうシンガーの人たちの歌い方というのも真似たりして、いつ何がきても、なんでも歌えるようにというスタンスではいます。勝手にですけどね。
-自分の歌唱スタイルを作ったのは、どういうものだと思いますか?
KISHOW:僕はフェイクでもなんでも、ブラック・ミュージックのような崩し方とか、ちょっとでも、そういうことができそうだったらやってみるくらいの探究心が、歌に関しては常にあるんです。だから、自分のルーツって言われても、いっぱいありすぎて何がヴォーカリストとしてのルーツなのかがもうわからないし。単純になんでも歌えればいいなっていうのが、未だにあって。飽きないなっていう感じなんですよね。
-そこでいろんなものを吸収して、こうしてふくよかな歌となっていくわけですが、KISHOWさんから、今度はこういうタイプの曲をやってみたいとオーダーするようなこともあるんですか?
KISHOW:そこは、あまりないですね(笑)。"こんなのをやりたいんだけど"って言うのは、恥ずかしいんですよ。そういうのやりたがってるって思われるのが、嫌なんですよね(笑)。非常にシャイなんです。意思表示できる人がうらやましくもありますね......俺があまりにもなさすぎるのかな。本当はあるんだろうけど、あまり言いたくないような感じで。e-ZUKAさん次第というか、与えられたものをこなす、そこにむしろ美学を感じていますね。やれって言われたものがちゃんとできるという。ちょっとかっこ良く言っちゃいましたけど(笑)。
-こうしてKISHOWさんが確かにヴォーカリストとしてレンジを広げていると、作り手としてはそこから触発されることは大いにありそうですね。
e-ZUKA:ありますよ。きーやん(KISHOW)から直接言われたことはないけど、楽屋とかでよく音楽を流しているので、聴いていて、いいなって思うとそういう感じを入れるとか。忖度っていうんですかね(笑)。あとは、彼は声優もやっているので、キャラソンとかも歌うじゃないですか。キャラソンっていろんなタイプの曲があるので、こういうの歌われて悔しいなというのもあるんですよ。こういう声の感じはGRANRODEOでも使いたいなとか。それでちょっとキーを低めの曲にしたり、すごくかわいいのにしたり、そういうのはやりますけどね。いろんなタイプのものをGRANRODEOというフィルターを通して、ふたりで表現するという。そういうことは面白いなと思っていますね。