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INTERVIEW

HEAVEN SHALL BURN

2020.03.31UPDATE

2020年04月号掲載

HEAVEN SHALL BURN

メンバー:Maik Weichert(Gt)

インタビュアー:菅谷 透

ジャーマン・メタルコアの絶対的存在 HEAVEN SHALL BURN(以下:HSB)が、ニュー・アルバム『Of Truth And Sacrifice』を完成させた。前作『Wanderer』から約4年ぶりとなる新作は、なんと"Of Truth"と"Of Sacrifice"の2枚組アルバム。結成以来ブレることなく自らのスタンスを貫いてきたバンドがその哲学と信念を詰め込んだ、まさに金字塔的な作品に仕上がっている。今回はオリジナル・メンバーでギタリストのMaik Weichertに、アルバムを構成する多様な音楽性や、バンドの根底をなす政治的主張まで、様々な話を訊いた。

-約4年ぶりとなるニュー・アルバム『‎Of Truth And Sacrifice』がついに完成しましたね。リリースを控えた今の心境をうかがえますか?

すごくナーバスだよ! レビューもそろそろ出てくるころだしね。アーティストはアルバムを作るたび、リリースの時期にナーバスになるんだ。やっぱりファンやメディアの受け取り方を知りたいしね。"自分はナーバスじゃない"なんて言っているやつらは嘘つきだ(笑)。誰だってナーバスだよ! だからポジティヴなフィードバックが来ると自尊心が高まるし、いい気分になれるんだ。

-今作はバンド初となる2枚組のアルバムとしてリリースされます。2枚組でアルバムを作るというアイディアは制作当初からあったのでしょうか? それともアルバムを制作していくなかで生まれたのでしょうか?

アルバム向けにソングライティングを始めたころはライヴ活動からも離れていて、2年もショーをやっていなかったんだ。アルバム作りに集中するためにね。そのおかげで頭の中のクリエイティヴィティに余裕がたくさんできて、ソングライティングのセッション1回目から"これはクリエイティヴィティが爆発するぞ。きっとたくさん素材ができる"という確信があった。それから間もなくタイトルも"Truth(真実)"と"Sacrifice(犠牲)"を使ったものにしようという話が持ち上がってきた。ふたつともとても強烈な言葉だから、ダブル・スタンダードみたいに掲げられるように思えたんだ。そこからわりとすぐに2枚組にしようというアイディアが出てきた。曲を書き始めてからすぐだったね。タイトルもあったし、素材もたくさんあったから。

-ソングライティングに入る前から、素材がそんなにたくさんあったということでしょうか?

形になったものというよりフィーリングだね。最初のリフを録ろうとしただけでいろんなアイディアが湧き上がってきて、これはものすごくクリエイティヴな作業になるぞと思ったんだ。いくつ準備してあったというより、とにかくそういう感覚があったんだ。"じゃあいっそのこと2枚組にして、通常のアルバムだったら大胆すぎてできないような実験もやってみよう"と思った。すごく気分が良かったよ。クリエイティヴィティに任せる余地がたくさんあったんだ。

-今回はアルバム制作に締め切りを設けなかったようですが、それも役立ちましたか?

そうだね。曲を書き始めた時点でレコーディングすべき時期がわかっていることも多いけど、そういうのはクソだ。今回はちゃんとスタジオに行って作りたいと思ったしね。レーベルには、アルバムが仕上がってからリリース日を相談させてくれと話したんだ。仕上がる前じゃなくてね。そうすることができて本当に気分が良かった。いろいろ試せるし、スタジオでもプレッシャーに苛まれることがないし。その間は、ショーも一切やらなかった。レコーディングの真っ最中に何かに思ったより時間がかかっているのに、ツアーやフェスに出ないといけないから中断しないといけないなんてことになると、プロセス全体に影響してしまうんだ。今回はそういうことがなかったから、プロセスに思い切り集中できたし、心から楽しむことができたよ。

-アルバムのジャケットは、盾を持った女戦士が子供を守るため槍に貫かれるというイラストになっています。ショッキングでありつつ見る側のイマジネーションが爆発しそうなデザインです。ストーリーやジャケットに込められた意図を教えていただけますか?

ジャケットのデザインを手掛けたのはEliran Kantorだ。彼にアルバム・タイトルについて説明したら"すごく強力なトピックだね。昔の絵画みたいなデザインにしよう"と言ってくれたよ。アレゴリー(※寓意的な芸術作品)路線で行こうってね。裸の子供は"naked truth(ありのままの真実)"を表していて、その子供を身体を張って守っている母親は"sacrifice(犠牲)"のシンボルなんだ。それがジャケットの意味だよ。真実のために犠牲になっている、"truth"と"sacrifice"の関係を表しているんだ。ジャケットにはいろいろな要素があるよ。例えば母親の服装は、ジャンヌ・ダルクを描いた古い絵画に似せてあるんだ。

-ジャンヌ・ダルクも犠牲の象徴として、という意味合いもあったのでしょうか。

そうそう。母親像のロール・モデルみたいなところがあったというか。ああいうアートワークに仕上がってとても嬉しいよ。素晴らしい仕事をしてくれたね。

-今作はデス・メタル、ハードコアをはじめとして、ブラック・メタルやゴス、インダストリアルなど、バンドの持っている音楽性をすべて出しきった、多様性のあるアルバムだと感じました。制作過程ではどのようなサウンドを目指しましたか?

音楽の世界という劇場を見せたいと思ったんだ。今まで影響を受けてきたすべてのスタイルや俺たちが好んで聴いてきたすべての音楽、それらには境界線なんてないんだって実感してね。でもHSBのアルバムの場合は――ほら、Devin Townsendみたいなアーティストのアルバムを聴くと、たった1曲に本当にたくさんのスタイルが詰まっているだろう?――でもHSBのアルバムの場合は、ひとつの曲がひとつのスタイルという感じなんだ。これはブリティッシュ・デス・メタルっぽい、これはNINE INCH NAILSの曲っぽい、これはROB ZOMBIE、これはIN FLAMES......といったようにね。それぞれの曲に、特定のタイプの音楽からの影響が表れているんだ。

-曲それぞれは違った感じではありますが、「Expatriate」と「Weakness Leaving My Heart」で同じモチーフのメロディが使われるなど、楽曲同士で横の繋がりも感じられます。これは意図的なものなのでしょうか?

歌詞的にはあの2曲は繋がっていないんだけど、音楽的には繋がっているよ。クラシックのモチーフ部分はSven Helbigというクラシックの作曲家が手掛けてくれたんだけど、彼はRAMMSTEINなんかとも仕事をしたことがあるんだ(※4thアルバム『Reise, Reise』などに参加)。あの2曲は、たしかにソングライティング的には繋がっているよ。あのふたつはアルバムの中でも特にエモーショナルだよね。

-SvenはRAMMSTEINと仕事をしたことがあるということは、みなさんのようなメタル・バンドとの音楽の作り方に慣れているのでしょうか。

もちろん! でもPET SHOP BOYSやSNOOP DOGGとも仕事をしたことがあるらしいよ。とても有名な作曲家で、才能も素晴らしいんだ。一緒に仕事ができて本当に光栄だったよ。プロ意識がとても高いしね。言うまでもなくメタル・バンドとの仕事の仕方を心得ているしね。俺たちが何を望んでいるかを深く理解してくれたんだ。とても興味深い経験だったよ。

-なるほど。ところで、そもそもどうしてこのアルバムにストリングス・セクションを取り入れようと思ったのしょうか?

過去にもやったことがあるよ。アイスランドの友人、Ólafur Arnaldsにね。この人も著名な作曲家なんだけど、彼にストリングスを手掛けてもらった(※代表曲「Endzeit」、「The Weapon They Fear」などのイントロはÓlafurによるもの)。でも今回彼とは時間が合わなかったから、作曲は俺たちが自ら手掛けたんだけど、どうやって録音すればいいのかわからなかった。クラシック・ミュージシャンの知り合いもいないし、あの手のものを録音するのにどういうスタジオを使えばいいのかも知らなかった。それで、経験豊富なSvenに声を掛けたんだ。

-ストリングスを取り入れたのは、バンドの表現を広げたかったからでしょうか?

エモーショナルなアルバムにしたかったんだ。攻撃的だけじゃなくて、メランコリックな意味でもね。そうすると俺たちのサウンドにまた新しい広がりができる。穏やかなストリングス・セクションがあるからこそ、アグレッシヴな部分はさらにアグレッシヴでラウドに聞こえるからね。

-また、今作でも「The Sorrows Of Victory」や「Critical Mass」などでゲスト・ミュージシャンがフィーチャーされていますね。彼らが参加した経緯を教えていただけますか?

俺たちがアルバムにゲスト・ミュージシャンをフィーチャーするときは、"アルバムが売れるための目玉として、有名なあいつを入れよう"って理由では起用しない。通常は、自分たちでは再現できないような箇所が曲にあるときに声を掛けるんだ。例えば「The Sorrows Of Victory」ではTYPE O NEGATIVEやMANOWARにも近い、あのゴシック的な声が必要だった。それでLORD OF THE LOST(※ドイツのゴシック・メタル・バンド)のChris Harmsに声を掛けたんだ。ああいう歌い方が得意だって知っていたからね。彼に音を送ったらすごく気に入ってくれたし、俺たちのために一役買ってくれて嬉しかったよ。「Critical Mass」の場合はダーティなハードコアが必要だった。俺たちはNASTY(※ベルギーのハードコア・バンド)という素晴らしいバンドと仲が良くて、ヴォーカルのMatthi(Matthias Tarnath)がああいう感じの歌い方ができることも知っていたから声を掛けたんだ。――自分たちだけでは作れない音を作るときに外部に声を掛ける感じだね。その人が有名か無名かなんて関係ない。その人が曲にどんなことをしてくれるのかが大事なんだ。

-彼らとはこのプロジェクト以前から交流があるのでしょうか?

ふたりとも友人だよ。Chris HarmsはうちのギタリストのAlex(Alexander Dietz)と親しいんだ。NASTYはバンドぐるみの付き合いで、日本で一緒にツアーしたこともあるよ(※2014年9月開催の、LOYAL TO THE GRAVE主催ハードコア・フェス"BLOODAXE FESTIVAL 2014")。