INTERVIEW
HEAVEN SHALL BURN
2013.07.08UPDATE
2013年07月号掲載
Member:Matthias Voigt (Dr)
Interviewer:藤崎 実
-ニュー・アルバム『Veto』がリリースされます。改めて本作を振り返ってみてどう感じていますか?
実はまだ自分たちの作品を客観的に見られる段階ではないんだよね。全てがまだフレッシュだから。通常大体完成から2年くらい経ってやっと自分たちの作品と適度な距離を作って客観的に評価できるようになる。今はとにかく全て終わって安心したってことと、自分たちが成し遂げたことに満足しているってことしか言えないなぁ。間違いなく正しい方向への新たな1歩だと思うし、評価も今のところ良いから、まずは安心って感じだよ。
-本作のジャケットには何かストーリーがあるのでしょうか?
この絵画は19世紀後半にJohn Collierによって描かれたものなんだ。この絵の女性はLady Godiva。伝説では高貴な生まれの女性で、彼女の夫が市民に対して過酷な税金を課していることに抗議をしたとされている。彼女は民衆のことを本当に気遣っている上流階級の人間なんだ。この伝説自体が凄く感動する内容だということに加えて、俺たちがコンピューターを使ったような現代アートよりも、よりクラシックなアートを使いたかったということがあるんだ。今までもずっと、一度は有名な絵画をジャケットに使いたいっていう気持ちがあったんだけど、機会がなくてね。手描きの有名絵画って、やっぱりそれに見合う独特の雰囲気を持っているからね。
-楽曲制作時のエピソードがあれば教えて下さい。
1つレコーディング中にあった話をするよ。レコーディングの途中で大雪でとても仕事ができそうにない日があったんだ。Colin RichardsonがイギリスでウチのギターのMaikとAlexaと一緒にミックスをする日だったんだけど、飛行機が吹雪で飛ばなくて。空港も封鎖されるし、道路も閉鎖されていた。自然がいかに人間の行為を阻む力を持ってるかってのにいつも驚かされる。こんな時は特にね。そして人間はそんな中でどうしたらいいかって道を見つけて行ったりしてね。困るには困ったんだけど、そんなことに感心してしまったエピソードだよ。
-壮大な展開を見せる「Hunters Will Be Hunted」や凄まじいまでにヘヴィな「You Will Be Godless」など、素晴らしい楽曲が並んでいますね。幾つかの楽曲についてコメントをいただけますか?
俺たちはあまり1曲1曲で分割してアルバムを考えることはないんだよね。全部一緒になって、それぞれの曲が影響しあってアルバムっていう1つの作品を作り上げていると思っているから、それぞれを独立したものとして考えていないんだ。「Godiva」は今までのHSBの曲とは違ったタイプの曲なんだけど、俺たちの今回のアルバムのオープニングとしては最適の曲だった。「Land Of The Upright Ones」に至っては今までに全くないタイプの曲なんだけど、それでもどこかHSBっぽいテイストを持ち合わせている曲だと思う。今回、色んなタイプのリフやムードを使い分けられたことは大きな成果だと思ってる。「You Will Be Godless」も、君が言ってくれた様に特別な曲だね。ブルータルで怒りに満ちている。俺たちが心掛けていることは、全ての曲に共通してHSBの1つの方向性を指し示す要素を持たせるということなんだ。
-ジャーマン・メタル史に残る名曲「Valhalla」がカヴァーされていますが、美しいメロディのツイン・リードなどBLIND GUARDIANの世界観を残しつつも、HEAVEN SHALL BURN独特の狂暴さを孕んでいるアレンジに仕上っていますね。
この曲は俺たちが2013年時点でカヴァーできる唯一の本当の傑作だと思う。俺たちはこの曲をより現代的なサウンドにして、それから自分たちの色も加えようと思ったんだ。結果として曲が少し速くなって、俺たちのヴォーカルが入って、BLIND GUARDIANのヴォーカルHansi Kurschが入ってっていう形になった。だからこの1989年の曲を2013年バージョンとして再生することができたと思っているんだ。Hansiはヴォーカルのアレンジメントとかのアイディア出しまでしてくれたんだよ。彼に参加してもらったことは凄く誇りに思うし、それに彼の熱心さにも触れることができた素晴らしい経験になった。
-ドイツではACCEPTやSCORPIONS、HELLOWEENといった世界的にも有名なヘヴィ・メタル・バンドが活動しています。やはり彼等の存在は今現在のシーンでも絶大な影響力を持っているのでしょうか?
そうだね。そう思うよ。今活躍しているたくさんのミュージシャンは80年代のヘヴィ・メタルを聴いて育ったんだ。ACCEPTは俺が最初に聴いたヘヴィなバンドで「Fast As A Shark」なんかはヘヴィ・ミュージック・シーンの全てを変えたんじゃないかな。SCORPIONSやHELLOWEENもシーンに大きなインパクトを与えたと思う。俺なんかは今でもACCEPTを聴いているしね。彼らは今でも新譜を出しているから。そのこと自体も俺にとっては大きな意味を持っているよ。