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INTERVIEW

HEAVEN SHALL BURN

2020.03.31UPDATE

2020年04月号掲載

HEAVEN SHALL BURN

Member:Maik Weichert(Gt)

Interviewer:菅谷 透

常に学んで前進して、自分の地平線を広げていきたいと思っている


-ここからは、楽曲やMVについてうかがっていきます。アルバムのリリース発表と同時に「Protector」、「Weakness Leaving My Heart」のMVが公開されましたが、タイプの異なる2曲をひとつのMVにするアイディアはどこからきたのでしょうか?

そうだな......正直言って理由はふたつあったんだ。ひとつ目の理由はとてもシンプルで、どの曲を最初に出せばいいかわからなかったから(笑)。だったらいっそ、まったく違うタイプの曲をふたつ出して、今回のアルバムがどれほど幅広いかを打ち出そうという話になったんだ。「Protector」はいかにもHSBらしいメロディック且つアグレッシヴな曲だし、「Weakness Leaving My Heart」はかなり実験的な曲で、このアルバムの別の顔を見せてくれる。このアルバムの多様性をはじめからアピールしたらすごくクールなことになると思ったんだ。ふたつ目の理由は、今回はダブル・アルバムだから、そのコンセプトをビデオの中でも見せたかったんだよね。ダブル・アルバムの両方のディスクから1曲ずつ選んだんだ。それからビデオのストーリーも関連づけたら、すごくいいものができたと思うよ。

-なるほど。たしかに「Protector」は"Of Truth"、「Weakness Leaving My Heart」は"Of Sacrifice"からの楽曲ですね。個人的には、演奏シーンをフィーチャーした前半の「Protector」でライヴ・バンドとしてのHSB、ドラマ・パートの後半でポリティカルなバンドとしてのHSBが表された秀逸な作品だと思いました。

ありがとう! それも狙いではあったよ。ライヴ・ビデオとストーリー・ビデオの両方を兼ね備えたかったんだ。ふたつのパートがお互いを引き立ててもいる。前半はエネルギッシュでアグレッシヴ、後半は陰鬱でヘヴィで、前半で気分が上がったのが嘘みたいな感じになるんだ。そういうコントラストも持ったビデオにしたかったんだよね。

-あの1本のビデオだけで今作の多彩さがよく表れていますよね。また、「My Heart And The Ocean」は環境保護/反捕鯨団体"シー・シェパード"の活動をフィーチャーしたMVを制作しています。制作の背景を教えていただけますか?

俺たちは"シー・シェパード"ととても親しいんだ。例えば"サム・サイモン号(※"シー・シェパード"の捕鯨妨害船)"のキャプテンとかね。ビデオの撮影や編集を担当した人も"シー・シェパード"のベテラン・メンバーだよ。あのビデオは何かオーセンティックなものを作りたいと思った。俺たちは"シー・シェパード"の傘下にいるわけじゃないけど、"シー・シェパード"の人たちの手によるビデオが欲しかったんだ。彼らをサポートするためにね。それから、"シー・シェパード"のことを知らない人たちや、彼らのやっていることに賛成できない人たちにもわかりやすいものにするために、海がどういうふうに汚染されているか、海における環境問題についてアピールしようと考えた。それなら誰もが自分のこととして考えてくれるだろうから。今の海の状態を人々に見せて、それぞれに考えるきっかけにしてほしいんだ。

-"シー・シェパード"への支持表明もさることながら、環境問題にどういうふうに取り組めばいいのかを考えさせるものにしたかったということですね。

そのとおりだよ。もちろん"シー・シェパード"をサポートするためでもあったし、彼らへのトリビュートでもあるけど、一般論としての環境問題について考えるきっかけにしてもらえたらと思ってね。

-「My Heart And The Ocean」に限らず、バンドが社会的なメッセージを投げ掛けることに対してオープンな姿勢をとっていることをリスペクトしていますし、おっしゃるとおりリスナーに新たな視点や知識を与えてくれると考えています。しかしその一方で、リスナーによっては耳の痛い、ともすれば反感を生むものにもなるのではないでしょうか。つまり、強いメッセージを打ち立てるというのは諸刃の剣だと思うのです。それでもリスクを厭わず主張を続ける理由はなんでしょうか?

そもそもこのバンドを結成した理由がそれだからね。俺たちがバンドを始めたのはロック・スターになりたいからでも音楽をやりたいからでもなく、自分の意見を主張するためだったんだ。

-そうなんですね。

そう。俺は学生のころから強い政治的主張を持っていたけど、俺がギターを持っているときのほうがみんな俺の話を聞いてくれるってことに気づいたんだ。俺が新聞に記事を書いたところで誰も読んでくれないけど(笑)、ギターを弾きながら自分の意見を歌うと、みんな耳を傾けてくれる。すごく興味深かったよ。それでバンドを結成したんだ。自分たちの意見を主張したかったからね。全員が好きとは限らないことに関して意見を主張するなんてことをしていなかったら、もっと商業的に成功していたと思うよ。"シー・シェパード"の歌を歌っていなかったら、日本でももっとビッグになれるだろうね(笑)。

-あはは(笑)。

ただ、俺たちが、自分たちとは違う意見の人たちのことも好きだってことも理解してほしいんだ。彼らと語り合って、物事を独断的に見ることをせずに、一緒に解決策を見いだしたい。様々な意見を持つ人たちと一緒に取り組んでいきたいんだ。意見の違うグループがいくつもできて、そのグループ間で戦争が起こるなんていうのは俺たちの望むところじゃない。今の世の中で間違っているのはそれだからね。俺たちは意見を主張するためにバンドを組んだのであって、売れたいとかそういう目的で始めたんじゃないんだ。

-ファンにとっては、きっとHSBのおかげで社会問題がより身近なものになりますよね。例えば、あなたと違う意見を持っているファンに話し掛けられたり、彼らと社会問題について話し合ったりすることは実際にありますか?

もちろんだよ! 結構よくあるし、そうしてくれることが嬉しいんだ。時には俺が考えもしなかったことに気づかせてもらえることもあるし、違う意見から説得されることもあるよ。そういうことがあると、自分が賢くなったような気がするんだ。俺は自分の意見が何よりも尊重されるべきだなんて思っていないし、自分が世界一賢い男だとも思っていない。常に学んで前進して、自分の地平線を広げていきたいと思っているよ。そのベストな方法は語り合うことだ。バンドとまったく違う意見が出てくることもあるからとても興味深いよ。でもその人たちは"このバンドがはっきり意見を主張してくれることがありがたいと思っている。もう誰もそんなことはしていないから"と言ってくれるんだ。"偏見だ"とファンを失うのが怖くて、意見がなくなってしまうバンドがあまりにも多いけど、それは意見が異なることよりタチが悪いと思う。