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INTERVIEW

FIVE FINGER DEATH PUNCH

2020.02.28UPDATE

2020年03月号掲載

FIVE FINGER DEATH PUNCH

Member:Zoltan Bathory(Gt)

Interviewer:菅谷 透

-本編の最後を飾る「Brighter Side Of Grey」についてもお訊きします。"I'm writing this in case I'm gone tomorrow"から始まる歌詞が胸を打つ、エモーショナルなバラードで、あれは歌詞が先なんじゃないかと思ったんですが、エモーショナルな曲が先にできて、そこにあのエモーショナルな歌詞をIvanか誰かがつけたということなんでしょうか。

会話から曲が生まれることもあるんだ。Ivanが俺のところにやってきて何かアイディアがあると言ってくる。それにまつわる、あいつの曲の書き方の様子を見るんだ。あるいは曲を書いたあとで"この曲を書いたとき何を考えていた?"なんて聞いたりする。そうすることによって曲と歌詞がシンクロするんだ。ただ「Brighter Side Of Grey」は、Ivanがしばらく書いていた歌詞があって......あの歌詞のことだけど、あいつが前から書いていた歌詞の断片がいくつかあったんだ。かなり前からあったと思う。その歌詞にフィットする曲が生まれるのを、あいつが待っていた感じだね。歌詞を書き終わっていても、"この曲に合わせたい"と思える曲が出てくるまで取っていたんだ。たしかそうやってできた曲じゃなかったかな。とても興味深い曲だよ。何についての曲か知ってる?

-"I'm writing this in case I'm gone tomorrow"から始まりますよね。自殺するときの遺書みたいでなんだか悲しい感じがしたんですが。Ivanが苦しんでいるころに書いた歌詞のように思えます。

そう。あれはあいつがまだ飲んでいて、なんとかシラフになりたいと頑張っていたころに書いた曲なんだ。自殺するときの遺書というより、シラフになれずに終わってしまうかもしれないという恐怖があったころだ。ちょっとシラフになっては、また飲んでしまっていたからね。それからまたシラフになって、また飲んでしまって......という感じだった。その苦しみのなかで書いたものだった。あいつには子供たちもいるし、ちゃんとシラフになれるかわからないから、この歌詞を書いておくと言っていた。もしシラフになれずに終わってしまったら、子供たちや世間の人たちにこれを読んでほしい。これが俺からのさよならなんだってね。そんなわけで、すごく悲しくもあり、すごく奇妙な曲でもある。実際はシラフになれたわけだから、希望のある曲でもあるんだ。

-彼がその状況を克服して、みなさんと一緒にこの曲を作ることができて本当に良かったですね。そういうことを経てできたからこそ、よりスペシャルなアルバムに思えます。ファンにとってもあなた方自身にとっても。

そりゃそうさ。いろんな意味でとてもパーソナルでエモーショナルな作品だよ。アルコール中毒というのは奇妙なもので、俺みたいにずっとシラフなやつは、この状況が理解できなかったんだ。がっかりもしたし、怒りを覚えたこともあった。"ただ酒を止めるだけなのに、どうしてできないんだ?"と思っていたんだ。なんで心がそんなに弱いんだと思っていた。でも、あいつのことを理解したかったから、アルコール中毒について勉強することにしたんだ。それでわかったんだけど、アルコール中毒っていうのは単純に化学的なプロセスなんだよね。アルコールを飲むと体内で分解されるけど、その分解の仕方は人によって違うんだ。アルコール中毒の人はアルコールを分解する段階の中で、もっと欲しがるようになってしまう。中毒者が酒を飲むと止めることができない。飲んだが最後、身体が反応して、もっと欲しがるようになってしまうからなんだ。そういう体内システムを持たないやつは......例えば、俺がアルコールを飲んでも何も起こらない。君が飲んでもきっと何も起こらないだろうね(笑)。好きなときに飲めるし止められるだろう? でも、アルコール中毒者はそれができないんだ。血液中にその成分が入ったが最後、もっともっと飲みたくなってしまう。ある意味病気だよね。生理的な病気だ。で、自分がアルコール中毒の気があるかどうかは飲むまでわからない。飲んでもっと飲みたくなったらもう遅いんだ。飲んでしまうだけだからね。そうやって、自分に教養をつける必要があった。知識を身につけたんだ。誰かが病気になると、みんな気の毒に思う。でも、誰かが依存症になるとみんなその人に怒りを覚える。"なんでやめられないんだ"ってね。でも、他の病気と同じだって、周りの人は知識を身につけないといけない。依存症の人にとって酒を止めることはとても難しいから、サポートが必要なんだ。でないと止められないからね。

-リハビリ施設などですね。

そうだ。そして、依存症の人はシラフになってもやっぱり依存症なんだ。その病気はまだそこにある。なんとか飲まずにいられているだけでね。一生その危険と付き合っていかないといけない。例えば、Ivanはいろんなものの表示に気を付けないといけないんだ。マウスウォッシュ、歯磨き粉、それから手を消毒するやつまで、アルコールが入っていないことを確認しないといけない。

-そんなものまで。お酒に限らないんですね。

そうなんだよ。手を消毒するやつは普通アルコールが入っているからね。リキッドソープみたいなやつもアルコールが入っているんだ。そういうのの表示を確認しないと、もしアルコールが身体を刺激したら、また飲みたくなってしまう。アルコール中毒になってしまったらそれは一生ものだから、食べ物も飲み物も気をつけないといけないんだ。アルコールが入っていたら、それがきっかけになってしまうからね。

-大変なんですね......。

そう、大変なんだ。周りの人間は、それに対して共感することが必要だよ。今は俺も知識があるから、昔とは見方が変わった。どんな社会にもこの問題はあると思うよ。日本にだってあるはずだ。

-ええ、あると思います。

酔っぱらったやつがいたら、そいつはみんなに見下される。"なんだ、自己管理のできないやつめ"みたいにね。でも、事実はそんなシンプルな話じゃない。ただ酔っぱらいになるわけじゃなくて、そういう体質だからそうなってしまうんだ。そういうことを理解できるようになるには時間もかかるし、そういう人をサポートできるようになるには忍耐力も必要だと思うよ。

-そういう人たちをよりよく理解できるようになったからこそ、今回のような素晴らしいアルバムを作ることができたんですね。さて、今後のバンドの予定についてうかがえますか? 今日がヨーロッパ・ツアーのブルガリア公演で、その後はフェス出演もあるみたいですが。

もうすぐアルバムが出るだろ。それから春の全米ツアーに出て、3ヶ月くらいオフがあって、夏はオフなんだけど、完全にはオフじゃなくて、ショーの構成を作り直すんだ。ステージも、何もかも新しくするよ。すごく有能な照明デザイナーや舞台監督を起用したから、すごいものができると思う。秋からはワールド・ツアーだね。カナダにも行きたいし、1年半くらいは回ることになるんじゃないかな。今年と来年いっぱい。俺は格闘技が好きだし自分でもやっていて、大会に出たりしているから......。

-今もツアーに畳を持ち歩いているんですか?

そうだね。道具もキモノも全部持ち歩いているよ。タタミもね! そんなこともあって日本の文化にはすごく親しみを感じているんだ。柔道用語から日本語の単語も少しわかるよ。"ネワザ"とか"テワザ"とか。俺の著作権管理会社も"テワザ"という名前なんだ。ギタリストだからね、ジョークで付けたんだ。"ハンド・テクニック"という意味だろう(笑)? そんな感じで、日本文化は昔から身近に感じてきた。自宅のデコレーションとか、楽屋まで日本風にしているくらいだよ。それに日本には仲のいい友達がたくさんいるんだ。そういうこともあって、今度こそは日本にまた行きたいと考えているよ。

-激ロックが今作のリリース・パーティーをするのはご存じですか?

ああ、行きたくてたまらないんだ。実はコンサートではしばらく来ていないけど、日本には結構よく行っているんだよね。いるだけですごく楽しいから。たぶん昔から言っていたと思うけど、いつかは家を買って住みたいくらいなんだ。日本のことはいつも頭の中にあるから、今回のアルバムのサイクルでは心から行きたいと思っているよ。現地の友達にも"いつだ?"ってしつこく聞かれているしね(笑)。今度は旅行者としてじゃなくて、バンドとして行きたい。向こう1年半の間に行けることを願っているよ。

-最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

日本のファンのみんな! 今回こそそっちに行けることをメンバー一同願っているよ。いつも言っているけど、俺自身柔道家でもあるから、みんなの文化にとても親しみを感じているんだ。だけど、バンドとしては長い間そっちに行けていない。俺たちの望みに反してね。だから、今度はできるだけ早い段階で行きたい。日本を避けていたわけじゃないからね(笑)! 今度こそは実現できるように戦うよ!

EVENT INFORMATION
"FIVE FINGER DEATH PUNCH
8th ALBUM『F8』OFFICIAL RELEASE PARTY"

2月28日(金)19:00~23:00
Music Bar ROCKAHOLIC-Shibuya-
※入場無料

MUSIC BAR ROCKAHOLIC-Shibuya-
東京都渋谷区宇田川町11-1 柳光ビル別館B1
TEL : 03-6416-9469
E-Mail:bar@bar-rockaholic.jp

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