INTERVIEW
Zemeth
2019.11.25UPDATE
2019年11月号掲載
Interviewer:山本 真由
-前作は、ミドル・テンポで少し違った雰囲気で聴かせる楽曲もありましたが、今回は緩急こそあれど、休憩処一切なしというような怒濤のリズムで畳み掛けていますね。これはもう、いい曲を繋いだら単にこうなったということでしょうか?
Track.1の「ORIGIN」が唯一スロー・テンポな楽曲となっておりますが、今作はなるべくコンパクトに収めたかったので時間も短めでテンポ速めの曲が多いです。メタルでよくあるTrack.2がキラーチューンどころか、Track.2から全部キラーチューンというような流れが作れていいと思いました。もちろんキラーチューンと言われる要素はテンポだけではないので、Track.1も強烈なメロディで攻めています。全曲キラーチューンはZemethの個性だと誇っていますし、ここまで築き上げてきたこのスタイルを崩すのはダサいので一生このスタイルのままでいたいです。
-もちろん作品全体が自信作ではあると思いますが、特にここを聴いてほしいというポイントを挙げるとしたら? また、ご自身が演奏されていて楽しんでできた部分というのはどのあたりでしょうか?
やはり自分自身の好みのメロディは、4度進行や小室進行といったコード進行に乗るドラマチックなメロディなので、そこに注目してほしいです。しかし、それは毎度のことですので、今作は今までやったことがない雰囲気のフレーズも多かったりします。特にTrack.8の「KILL THEM ALL WITH MELODY」の間奏は、日本的な要素とラテンの要素が交差するギター・ソロとなっておりまして、キメのフレーズもキャッチー且つ泣けるメロディでレコーディングもかなり楽しんでできました。
-Zemethとしては、とりあえず3枚アルバムを制作することを目標に活動されていたようですが、プロジェクトを始めたころと比べ、音楽に対する気持ちや姿勢などに変化はありましたか?
3枚作ってみて現在の自分の課題や弱点が浮き彫りになってきて、自信喪失することが多かったです。多くの方々に評価していただけるのはとても嬉しいことですが、結局は自分の中での戦いですので......もちろん全力で取り組んでいますが、まだ目標には達していないと感じているので、Zemethはまだ目標へ辿り着く道の途中ということになります。将来的には、誰かが作った強いメロディに嫉妬しなくなるほどのメロディが完成すれば音楽活動の終着点が見えてくるかなと。結局は自分を納得させられる音楽を求めているのだと思います。
-今後の活動についても少し教えてください。Twitter内の発言で、"来年はメロいリフ爆裂するデスメタルやりたいな、クサメロやりません、全く違うベクトルも目指します"とのことでしたが、すでに何か決まっている計画があるのでしょうか?
Zemethは一応真面目に目標に向かっているプロジェクトなので、自分が世に出したい曲のみを作っていますが、真逆なジャンルや挑戦したい音楽性はZemethでやることと違ってくるので、その表現ができる息抜き的なプロジェクトを作ろうかと考えています。ただサブ・プロジェクトだと認知されてしまったら意識してしまってZemeth寄りの音楽性になってしまうと思うので、誰にも名前も国籍も公表せずBandcampあたりにまず音源を出していきたいと思っています。ジャンル的にはスウェディッシュ・デス・メタル、シンフォニック・ブラック・メタル、ブルータル・デス・メタルをやるつもりです。
-バンド形式やライヴ活動など、Zemethでは見られなかったシーンでの活躍にも期待が高まります。今はいろいろな形式のライヴがありますが、映像をふんだんに使ったものなどアーティスティックな視覚表現にも興味がありますか?
正直視覚的なものにはZemethを始めた当初よりも興味は薄れてきてしまっています。時間も労力も金銭的にも力の入れ所が音源に集中していたものですので、他のことも考えてしまうとキャパオーバーになると思いますね。また、もともと予定していたのですが、数年以内に地元に戻るので、リアルでの活動は今まで以上に難しいものになってくるかなと。北海道の北の辺境に住んでいても音楽の発信ができるようZemethで基盤作りはできたと思うので、あとはインターネットの発展に適応しつつ活動を続けられたらと思います。
-また、他アーティストのプロデュースや、映画/ミュージカルなどの劇伴など、演者以外の活動にも興味はありますか?
実は今年公開のオーストラリア映画"Song without words"に楽曲提供いたしまして、来年の活動はそういった制作が中心になる予定です。また"Beat Saber"という音楽ゲームで1stアルバムの「DEADLY NOSTALGIA」の譜面が非公式で制作、公開されて中堅YouTuberがプレイ動画を上げたことによって海外からのリスナーも多くなってきたこともあり、やはり自分のルーツであるインストのゲームの音楽を作ってみたいとは思っています。最近のゲーム事情は詳しくないので勉強が必要そうですが......。
-これだけ完成度の高い3部作を作ってしまうと、次の構想はなかなか出てこないかもしれないですが、リスナーとしては、他の活動を数年挟んだあとにでも、またZemethとして哀愁たっぷりのクサメロを響かせてくれたら嬉しいです。Zemeth名義はまだ残しておく予定ですか?
Zemethは、もともと自分が音楽に目覚めたきっかけである「MIGHTY OBSTACLE」(ゲーム"イースVI-ナピシュテムの匣-"内の楽曲)のメロディを超えるメロディを作り世に残すために始動したプロジェクトなので、その目標を達成するまでは名義を降ろすことはありません。これもある意味懐古主義的な面もあるかもしれませんが、これがなければ音楽自体に無縁な人生だったでしょうし。しかし自分も他に優先しなければいけないものもあり、インターネットの進化と共に活動の形態の変化やリリースの完全デジタル移行など、時代に合わせていく形になると思います。実はCDの中身のどこかに次作の予告が密かに載っていたりするので......ぜひ今作はフィジカルを手に入れてほしいです。
-最後に、激ロック読者へのメッセージをお願いします。
激ロックをご覧のみなさま、ZemethのJUNYAと申します! 世の中にはいろんな要素に特化したアーティストの方々が居ますが、このプロジェクトは特に最高のメロディを必死に追い続けています! いつか自分のメロディで人間に限らず犬や猫やペンギンの感動すら作れるように努力していますので、どうか音楽の、メロディの持つ魅力や力に注目して音楽を聴くことも意識してみてほしいです! 泣きメロは人生!! メロディ・イズ・ジャスティス!!