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INTERVIEW

KILLSWITCH ENGAGE

2019.08.19UPDATE

2019年08月号掲載

KILLSWITCH ENGAGE

Member:Jesse Leach(Vo)

Interviewer:米沢 彰

人生経験が豊富になるとそのぶん賢明になるし、俺にとってはそういうメッセージを歌詞に織り込むことが大事なんだ


-この曲に限らずですが、相変わらずグルーヴ感が素晴らしいですね。バンドとして20周年を迎えましたが、長く続けていること以外に、このグルーヴ感はどこから来ているとご自身では思いますか?

メンバーの多くは1990年代の北東部のハードコア・シーンを通ってきているんだ。ヒップホップととても関係が深いシーンでね。1990年代はハードコアとヒップホップがカルチャーとして近い存在にあった。ハードコアに夢中なキッズがヒップホップのショーに行くのも、ヒップホップのキッズがハードコアのショーを観に行くのも珍しいことじゃなかった。特にここニューヨーク、ボストン、プロビデンス(ロードアイランド州)、コネチカット州はそういう感じだったね。交流も盛んだったから、ハードコアにもグルーヴがあるのが多かった。あの時代のバンドを思い出してみてくれ。SICK OF IT ALL、AGNOSTIC FRONTなんかもそうだったけど、すごくグルーヴ主導のフィーリングがあるよね。俺たちの場合はそれにメタル色をもっと足した感じで、ハードコアとメタルのミクスチャーだけど、グルーヴのリズムは間違いなくヒップホップやアーバン・ミュージックの影響を受けているんだ。それが俺たちのバンドとしての個性の一部だね。

-なるほど。ものすごくメタルなのに身体がリズムに乗って動くような感じになるのはそういうことですね。

うん。それって大切なことだと思うんだ。それも表現のひとつの形だしね。俺たちの出す曲はだいたいどれもみんながグルーヴに乗れるようにしてあるよ。またはヘッドバンギングできるようにね。俺は自分たちのそういうところが大好きだし、俺たちのやり方のいいところだと思う。

-続く「The Signal Fire」では前ヴォーカリストのHoward Jonesがゲスト参加されていますね。どういった経緯で参加に至ったのでしょうか?

実はこの曲はもともとあいつのために書いた曲なんだ。あいつとは友達になって2年くらいかな。ティーンエイジャーのころから知ってはいたんだけどね。あいつはDRIVENという名前のバンドにいて、俺はCORRINというバンドをやっていた。お互い存在は知っていたけど、親しい存在にはならなかったんだ。2年くらい前にあいつがカナダのショーを観に来てくれたんだ。単にメンバーに"ハーイ"って挨拶するためにね。やめるときにちょっとギクシャクしたこともあったらしいから、みんなもう大丈夫ってことを確認するような感じだった。楽しく会話していたよ。メンバーは久しぶりだったから近況報告なんかをして。あいつの脱退後から何かわだかまりがあったとしたらそれを払拭できたという感じだった。5人がまた仲良く喋っているのを見て俺も嬉しくなったよ。俺も同じ部屋にいてその一部になれて、最終的には楽屋の雰囲気がすごくポジティヴなものになったよ。俺もHowardと話し始めて、お互いのことを少しずつ知るようになっていった。15~20分も話していたら、あまりに共通点が多いことに気づいたんだ。あっという間に友達になったよ。結局あいつは俺たちのツアー・バスに乗り込んできて、午前2時くらいまでずっといた(笑)。バスでは普通にくつろいで、クサを吸って音楽を聴いて。あいつは今やっているバンド LIGHT THE TORCHの曲を聴かせてくれた。すごくいい曲だったよ。しかもバンド名(トーチに点火せよ)がいいよね。そんなことがあってから、あいつと一緒に歌うのに良さそうな曲を書き始めたんだ。曲の内容は結束や、共通点を見いだすことについて。許しを見いだすこと、そしてひとつになってお互いが頼れる存在になることについて歌っているんだ。KILLSWITCH ENGAGEのファンにとってだけじゃなくて、音楽シーン全体にとってパーフェクトな機会だと思ってね。バンドが解散したとか脱退があったからといって、その状態が永遠でなければいけないわけじゃない。汗や血を流したり、クソみたいな記事をゴシップで書かれたりすることがあってもね。俺たちはそういうのに屈するやつらじゃない。だから、俺たちに今もブラザーフッド(※兄弟愛)があって、今も同志だってことをこの曲を通じて伝えたかったんだ。俺たちはLIGHT THE TORCHを応援しているし、Howardのことも応援しているし、あいつが今うまくいっていることが本当に嬉しい。俺にとっての「The Signal Fire」は、バンドとしての結束、俺とHowardとの友情を表している曲なんだ。

-個人的に今でもシーンの名盤だと思っている2ndアルバム『Alive Or Just Breathing』(2002年リリース)のころと比較しても、この曲は特にアグレッションや抒情性がまったく衰えることなく、むしろさらに洗練されていることに驚かされました。どういう信条や姿勢があなた方の今を支えているのでしょうか?

俺自身に関して言えば、俺は昔から人に共感することが多くて、人に対して思いやりを持っていたいと意識してきたんだ。それは両親の育て方によるものが大きいと思う。と同時に、俺が聴いて育ってきたハードコアのカルチャーにも織り込まれてきたものじゃないかな。例えば俺の青春時代、ベジタリアンであるということは動物に対する共感を表したものだった。そういうものを抱えてここまで来たんだと思うんだよね。俺が今もこの音楽をやっているのは、愛があるからというのもあるけど、目的意識があるからだと思う。世界が変わる手助けになりたいね。その一部として、世の中に無関心が蔓延していること、腐敗した政府のシステムが世の中をコントロールして俺たちの頭を操作しているために世の中が分断されてしまっていることを自覚させないといけない。特にこの国の今の状態は分断がはびこっている。だから俺は自分のミッションが愛や思いやりについて声を上げることだって情熱を持っているんだ。人間が持っている一番パワフルなものだと思うしね。憎悪や腐敗に立ち向かう武器なんだ。そういう意識は以前から俺の一部になっていた。人生経験だね。成長して、大人の男になっていくにつれて培ってきた意識なんだ。それが身になるといいね。人生経験が豊富になるとそのぶん賢明になるし、俺にとってはそういうメッセージを歌詞に織り込むことが大事なんだ。

-今はそういうことを音楽に織り込むノウハウやテクニックも身につけていますしね。

あぁ。ありがたいことにおかげで今もやれているよ(笑)。

-この曲はHowardとパートを歌い分けていて、ふたりのヴォーカル・キャラクターが見事に交錯していますね。レコーディングはお互い立ち会ったりしたのでしょうか?

俺は、自分のぶんの録音と曲全体を書くのを自分でやったんだ。Howardのぶんの歌詞とメロディも含めてね。それでHowardを連れてきて"この部分を歌ったらいいと思うんだ"と言った。"もし他のアイディアがあったら書き直してもいいし、これを気に入ってくれたら俺の(デモで)やった音を真似てくれれば"ってね。で、俺はあいつが取り組むのに立ち会った。あのエネルギーに触れることができて本当にクールだったよ。AdamとHowardが久しぶりに一緒に作業しているのを見るのも嬉しかった。友達としても、ファンとしても、Howardが歌うのに立ち会う身としてもね。スタジオでの感動的な、忘れられないひとときだったよ。

-ヴォーカルのパート分けはふたりの得意なパートを考えながら必然的に決まっていったのでしょうか?

そうだね。あいつはハーモニーとコーラス担当なんだけど、あいつなら絶対上手くやれると思ったからなんだ。あいつは俺より高いピッチの声が出せるしね。高くてなおかつパワフルなんだ。それをちゃんと曲に織り込みたかったんだよね。Howardの声を思い浮かべながら書いていた箇所は確実にあるよ。あいつの声が俺の声とどう噛み合うかとかね。Howardと俺は全然違うシンガーなんだ。だからあいつの強みがしっかり出るものにしたかった。あいつが歌っているとそのソウルフルさを聴き取ることができると思う。スクリーミングにもね。それは狙ってやったことなんだ。

-ここまでの先行シングル2曲(「Unleashed」と「I Am Broken Too」)がミッド・テンポで、エモーショナルなメロディが印象的なトラックでしたが、リリース直前に公開される今作から3曲目となる先行シングルはこの「The Signal Fire」が予定されていて、本当にファンの心を刺激するのが上手いと思いました。シングル曲をどれにするかはすんなりと決まったのでしょうか?

そうだね、そんなに難しい選択ではなかったよ。俺たちの内部ではだいたい意見が一致するし、そうでなくても多数決で決まる。同じくらい大事なのが、Metal BladeのBrianがどう思うかなんだ。俺たちは彼の意見を信頼しているからね。あの男はメタルにあれほどの貢献をしてくれているから、"俺たちが考えているのはこういうことなんだけど、あなたはどう思う?"と意見をぶつけることができる。でもそんなに討論し合うこともなかった。かなりスムーズだったし、決まったあともとても気分が良かった。俺にとって個人的に重要だったのは「I Am Broken Too」だった。あと、Howardが参加している曲は出さない手はないよね。考える必要もない。「Unleashed」はアルバムの1曲目だし、(最初に出すのが)自然な気がしたんだ。実際1曲目っぽく聴こえるしね。そんな感じで、自然に決まっていったんだ。