INTERVIEW
鬱P(おはようございます)× ゆよゆっぺ(GRILLED MEAT YOUNGMANS)
2017.12.06UPDATE
2017年12月号掲載
おはようございます:鬱P(Ba)
GRILLED MEAT YOUNGMANS:ゆよゆっぺ(Vo)
インタビュアー:吉羽 さおり
Photo by 上溝恭香
-鬱Pさんは、ボーカロイドのどんなところに面白さを見いだしていたんですか。
鬱P:最初は、ひとりで全部完結できるっていうことが面白くて。要はDTMの楽しさですよね。それにハマっていって、そこからだんだんと、このラウドなジャンルのまま、キャラソンとか普通の邦ロックみたいな曲がボカロ・チャートの上位にいる中に、どうやったらラウドをブチ込めるだろうっていうか。
ゆよゆっぺ:そういうのはあったね。当時は、ボーカロイドだからこそ、ニッチなジャンルでも受け入れてもらえるというのもありましたし。そこでどうやってみんなより一歩先にいけるかは、僕も常に考えていましたね。
-そこでの試行錯誤が曲作りにも反映していたんですね。
鬱P:そうですね。だから、バンドばかりやっていたら、今のような曲には絶対になっていないと思うんです。本当にバンドだけやっていたら、ひたすらメタルを追求する路線だったと思うんですよね。
ゆよゆっぺ:俺が見ていた限り、鬱Pは当時から、楽曲のセンスがあったっていうか、楽曲の中で印象を残すというのがうまいなっていうのは思っていて。テーマもしっかりとしているし。ジャンル問わず楽曲として、且つひとりの楽曲を作る人間として受け入れられたのは、当たり前だったんじゃないかなと思いますね。センスっていう意味では、さっきから真面目な話をしてますけど、鬱Pが頭を下げるたびに、(鬱Pが被っているキャップの)"ポケットモンスター"っていう文字が目に入ってきて(笑)。そういうところなんですよね、ちょっと"抜き"を用意しておくというか。そのうまさが、楽曲からも伝わってくるし。
鬱P:はははは(笑)。
ゆよゆっぺ:キャッチーなんですよ。どの曲もそうで、テーマがぶれている曲がない。音色や使っている音が、本筋の人から見たら"これは邪道じゃない?"って思われることが僕たちの楽曲の中ではあると思うんですけど、そのなかで鬱Pは芯がしっかりしていて。伝えたいことやテーマに一本筋が通っているんですよね。だから、僕は鬱Pが受け入れられるのは当たり前だろうなと、ずっと思ってますね。
-先ほど鬱Pさんから、バンドだけやっていたらメタルに突き進んでいただろうという話がありましたが、ルーツ的にもメタルが強いんですか。
鬱P:ルーツはそこまでメタルっていうわけでもないんですよ。軸が3つくらいあって、それこそメタルがあって、あとはJ-POP──とにかく僕はB'zが大好きなので。あとは、もともと中学時代からメロコアが好きで、HAWAIIAN6とかB-DASH、F.I.Bなどのライヴにもよく行っていたんです。メタルは、それだけ分けられたうちのひとつなので、20パーセントくらいだと思います。
ゆよゆっぺ:そうなんだ(笑)。それは初めて聞いた。
-ゆよゆっぺさんはルーツというとどんなところですか。
ゆよゆっぺ:僕は、ありがたいことに幼いころから音楽に触れさせてもらっていたんです。そういうなかで、父や母の影響でなく、最初に自分でバンド・サウンドっていうものに触れたのが、BUMP OF CHICKENでしたね。それで、ギターを始めました。僕の場合は、柱が何本かあるというよりは、昔から柱が入れ替わる感じがして。17~18歳で、エモ、スクリーモにどんどん傾倒していって、当時だとSAOSINとかSTORY OF THE YEARとかしか聴かない時期があって。でもそういうラウドなジャンルでも、メタルとかスクリーモ、ハードコア......っていろいろあるじゃないですか。とりあえずその端から端まで全部知りたいっていうのがあって、聴きまくってましたね。たぶん、鬱Pと共通点として言えるのは、SYSTEM OF A DOWNなんですよ。
鬱P:ハードなサウンドの柱はそうですね。さっき、ゆっぺさんはとにかく全部聴くみたいなことを言ってたけど、僕の場合はそのへんが違って。これを公の場で言うとすごく怒られるけど、めっちゃくちゃつまみ食いをするんですよ。このバンドのここの部分がすげぇいいじゃんとか、このアルバムの特定の曲だけを聴いたりとか。メタルが好きっていうのも、もっと突き詰めて言うと、ギターが好きなんですよね、ギターの音が。この世にいろいろな音色がある中で一番かっこいいのは、ギターの刻み音だと思っているので。
ゆよゆっぺ:そんな人が、このバンドでベースやってるんだもんね(笑)。
鬱P:ベースやってるのはまた全然違う理由なんだけどね(笑)。
ゆよゆっぺ:なんでベースやってるの?
鬱P:すごく単純な話で、おはようございますのギター(梛)は中学の同級生なんです。それも、さっき言ってた、高校生でやっていたバンドのときもそいつがギターだったので、最初に会ったときに、"俺ギターやってるから、お前ベースやれ"って言われたんですよね。
-ずっとボーカロイドで、クリエイティヴな環境で制作も発表もできたなかで、なぜ改めてバンドをやろうと思ったんですか。
鬱P:ボーカロイド後期くらいからバンドをまたやりたいなというのはあって。ボーカロイドで一番厳しいのはライヴができないことなんですよね。それでもいいジャンルもあるんですけど、やっぱりこの手のラウドなジャンルだとライヴをやらないとなっていう気持ちがあったし、"ライヴやってください"っていう声もあったんです。2013年に僕がメジャーでアルバム(『悪巫山戯』)をリリースして、それをきっかけにタワレコさん主催イベントでボーカロイドでも初めてライヴ(2013年10月に赤坂BLITZで開催した[タワーレコード新宿店15周年大感謝祭スペシャル"15の夜。"])をやったんですよ。それは、バンドと、声はシャウトだけ人間がやって、クリーンは同期でボーカロイドが出すっていうスタイルだったんですけど。
ゆよゆっぺ:僕はそのときサイドDJをやってたんですよ。
鬱P:ボーカロイドでライヴもやったし、メジャー・アルバムをリリースしてひと段落ついたし、バンドもやりたいなと思ったのは、そこらへんからですね。まずギターを誘って、ヴォーカルを探そうとなって、結構オーディションをしましたね。それで今のヴォーカルの鯖に出会って。