INTERVIEW
FIREWIND
2017.01.25UPDATE
2017年01月号掲載
Member:GUS G.
Interviewer:今谷 重治
-なるほど。ということは前回のインタビューの時点では、まだアイディアをひもといている途中だったのかもしれませんね。
そうだろうね。着地点がまったく見えていなかったからね。
-先ほどApolloが脱退してからバンドが休止状態に入ったという話をしていましたが、FIREWINDが新作をリリースするのは、2012年の7作目『Few Against Many』以来5年ぶりということになります。ここまで期間が空いてしまった理由をお聞かせください。Apolloの脱退だけが理由なのでしょうか? それともOZZY OSBOURNE BANDやソロ活動があったから?
いろんな理由の組み合わせだと思うね。正直言ってApolloが脱退したあと、俺はすべてにうんざりして疲れ切ってしまっていたんだ。メンバー・チェンジが結構頻繁にあったうえに、ものすごく多忙だったからね。年中ツアー三昧だったし、その間にアルバムを作って、またツアーに出て......という感じだった。そうすると燃え尽きてしまうことが時としてあるんだよね。俺の場合がまさにそれだった。もうFIREWINDをやりたくないと思うところまで来てしまったんだよ。もう俺としてはやり尽くした、と思ったんだ。7枚アルバムを作ってベストを尽くしてもうまくいかない。Apolloの脱退はヴォーカリストとしては3人目だったこともあって、すっかりやる気をなくしてしまったんだ。そこで、もしかしたら別のことをやるときが来たのかもしれない、と思った。それでソロの作品を作ったんだ。とても新鮮な気持ちになれて、またワクワクできるようになった。またイチからやり直すのはとてもワクワクする出来事だったし、興味深い人たちとも仕事できて、また音楽が楽しくなった。ただ、バンドを解散させるつもりはまったくなかったし、いつかはまた何かやるだろうと思っていて。単純に、いつその気になるかわからなかっただけでね。自分の気持ちを100パーセント向けられない状態ではFIREWINDと向き合いたくなかったんだ。楽しむためには100パーセントであることが大事だからね。
-そもそもどうしてApolloは脱退したんでしょうか。
うーん......わからないなぁ(笑)。
-彼も疲れ切っちゃったんでしょうかね。
あいつはいつも疲れ切ってたような気がするな(笑)。家族もいたし、別に本業(※音楽教師)があったし、それをやめたくなかったからね。思うに、あまりツアーしないバンドだったらもっとハッピーだったんじゃないかな。SPIRITUAL BEGGARSというプロジェクトもやっていたし、そっちの方が地元を離れないから都合がよかったんだと思う。FIREWINDのツアーはいつもキャンセルしないといけなかったし、そうするとバンドとしての本格的な活動には参加できないよね。特に俺たちみたいにある程度歴史ができて、あちこちのファンがライヴを観たがってくれるようになると。あいつも俺たちもお互いを抜きにして先に進む必要があったんだ。
-もちろん、前向きな別れだったことは想像できます。そして2015年に新ヴォーカリストとしてHenning Basseを迎え入れた新体制となってますよね。彼は以前もFIREWINDの活動に起用されていたようですが、正式に加入した経緯はどんな感じだったんでしょうか。
そう、Henningは2007年にワールド・ツアーの大半に同行してもらったから、完全に新しいメンバーというわけじゃないんだ。アメリカも日本もヨーロッパも一緒に行ったし、ヨーロッパではフェスにもたくさん出た。ただ、そのあとはApolloに戻ったんだ。ラインナップを維持したい気持ちがあったからね。それでHenningとは数年音信不通だったけど、2年前にソロのバンドであるフェスに出たときにシンガーが必要になって、声を掛けたんだ。そうしたら参加してくれて、再会することができた。最高の時間を過ごすことができたよ。そのまま俺のソロのヨーロッパ・ツアーに出てもらって、そのあともう1本ツアーを一緒にやった。たぶん50回くらいは一緒にショーをやったんじゃないかな。実はあいつはFIREWIND再開の背中を押してくれたひとりなんだ。そのツアー中ずっと"またFIREWINDをやりなよ。やるべきだ。このまま終わってしまうのはもったいなさすぎる"って言ってくれていた。"ファンも待っているし、俺もあのバンドが大好きなんだ、ぜひ歌いたい"と。そのおかげで、またFIREWINDに対してワクワクした気持ちを持てるようになった。俺も、そうだな、あいつは曲をわかっているし、曲とバンドを愛してくれているし、ファンもあいつのことが大好きだし、なにしろいい奴だし、素晴らしいフロントマンだし......と思った。他のシンガーを探す必要なんてないじゃないか、と思ったよ。
-最高の人材が目の前にいたってことですね。
そのとおり! 解決策が目の前にあるのに見えてないことってあるんだね。どうしてそれまで何年も思いつかなかったのか、自分でもわからないよ。不思議なものだよね。
-彼がこのバンドの一番のファンだったことも決め手として大きいのでは?
俺にとって大切なのは、メンバーが友人であるということなんだ。このバンドがまだやっていけている一番の理由は友情だよ。もし友情がなかったら、とっくの昔に解散していたと思うね。よくあるだろう? バンドが活動休止になって、メンバーがそのあと二度と口も利かない状態になるって。俺たちの場合はそうじゃないんだ。俺がソロ活動をしていたときも、メンバーとはしょっちゅう連絡を取り合っていたよ。
-だからこそ自然にもとに戻れて、Henningもすんなり馴染めたんですね。ファンにとっても嬉しいことだと思います。そのHenningの歌声を聴いていると、本当にFIREWINDの音楽性にぴったり合っているなと何度も感じさせられます。彼の歌声を手に入れたことにより、FIREWINDの目指す音楽的志向がさらに明確になったのでは? と思いましたが、実際のところはいかがでしょうか。
まさにそのとおりだよ。完全に同意するね。今の俺には、FIREWINDがどういう音であるべきかが明確に見えている。このアルバムを作るにあたっては、このバンドを表舞台に出してくれた、過去のいい要素をすべて網羅したものにしたかった。Henningの歌は最高だよ。命懸けで歌っているような感じでね(笑)。あいつの声は俺たちのやっていることにとにかくぴったりと合うんだ。すごく相性がいい。あいつはいま最高のパワー・メタル・シンガーのひとりなんじゃないかな。それに、FIREWINDはメロディック・パワー・メタルをやるべきだと俺は思うんだ。そのためにこのバンドがあると思うしね。このアルバムはそういう方向性がとてもはっきりしている。
-実は「Hands Of Time」(Track.1)を聴いた瞬間から、"お、今作のFIREWINDの切り口は今までと違うな"と感じたんですよ。それはオーセンティックなメロパワ/メロスピ・サウンドを高々と掲げるようなギター・サウンドから、腹の底まで響くような力強いヴォーカル・ワークまでが、今まで以上にSTRATOVARIUSをも想起させるような様式美感を強めた印象を受けたからなんです。意識的に変えていったところはありますか?
そうだね。すべて意識的に作っていった。俺としては、ファンのためにアルバムを作りたかったからね。俺自身のニーズを必ずしも満たさなくてもいいから、ファンを満足させたいと思ったんだ。彼らが何を好きで何を聴きたがっているかはわかっているから、そのとおりのものを作りたいと思ってね。そういう考えが俺にはあった。