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INTERVIEW

FIREWIND

2017.01.25UPDATE

2017年01月号掲載

FIREWIND

Member:GUS G.

Interviewer:今谷 重治

-このバンドの一番の強みを強調してああいう音になったということでしょうか?

そう、そう、そう。そういう意図があったんだ。これ(スタイル)にフォーカスして、それを最高のレベルにまで持っていく。そういう狙いがあった。

-ファンのためにという話ですが、ファンはHenningが正式にメンバーになって喜んでいますか?

うん!(即答)

-先ほどDennis Wardの話が出ましたが、今回彼は全曲の作詞からミックス、マスタリングまで関わっており、"GUS G.×Dennis Wardアルバム"と言っても過言ではない作品なのでは? と思いますが、まず彼を起用した理由、そして彼がここまで深く関わることになった経緯を教えてください。今回初めて外部のプロデューサーと組んでいますよね。

曲を一緒に書いてくれるパートナーが必要だったんだ。俺はいつも誰かと一緒に曲を書くタイプだからね。俺の強みは作曲の方にあるから、作曲はほとんど俺がやるんだ。100パーセントでなくても少なくとも80パーセントは俺が書く。で、シンガーと一緒に曲を書くのが常なんだ。Dennisは優れたプロデューサーでもあり、優れたシンガーでもあるからね。本当に上手いシンガーだし、歌詞を書くのも上手なんだ。今回このコンセプト・アルバムを作るとなったとき、どこから手をつければいいのかメンバーは誰もわからなかったんだ。どう言葉にすればいいかとかね。でもDennisは考えを紙に書き出して、そのコンセプトを発展させることができたんだ。だから最適なパートナーだったと思うね。

-ちなみにDennisが今まで手掛けてきた作品の中で、お気に入りのアルバムは何ですか?

うーん......たしかANGRAといくつかやったと思うけど、あれはクールだったね(※2001年リリースの4thアルバム『Rebirth』?2006年リリースの6thアルバム『Aurora Consurgens』までのライヴ盤などを含む全6作品を手掛けている)。でも俺が一番気になったのは、UNISONICの作品だね。すごくよくできていると思う。彼らのマネージャーでドラムもやるKosta(Zafiriou)と話してたんだけど......彼が俺とDennisを引き合わせてくれたんだよね。俺たちとKostaは長年の知り合いで、Kostaが"君はDennisと何か一緒にやるべきだ"と言ってくれたんだ。"君には曲を一緒に書くパートナーが必要だし、あいつにはケツを叩いてくれる奴が必要だ"ってさ(爆笑)。......俺と彼が、音楽的に補い合えるはずだと言っていた。彼は正しかったね。で、どんな感じなんだって聞いたら、UNISONICの曲を勧めてくれた。彼自身がミックスしたものでね。彼がミックスを手掛けていたなんてそれまで知らなかった。聴いてみたら、"なんてファンタスティックなんだろう!"って思ったよ。で、実際に彼と会ったとき、"曲を一緒に書こう。ひょっとしたらエンジニアやミキシングもお願いするかも"と言ったんだ。他の人に頼む手もあるけど、こんなにそっちの作業が上手くて、しかも曲を一緒に書くことでプロジェクトの世界をディープに掘り下げてくれるんだったら、仕上げまでやってもらった方がいいだろうしってね。そう言ったら喜んでくれたよ。

-あなたとDennis、おふたりで目指した今作の方向性は? コンセプト・アルバムというのはふたりで初めて組んだときに出てきたものなのでしょうか。それとも以前からあたためていた考えなのでしょうか。

それは、メンバーと3、4年前、いやもしかしたらもっと前から話していて、いつも心の片隅で考えていたかもしれない。メンバーの多くがギリシャ出身だし、自分たちのヘリテージ(伝統・歴史的遺産)について書いたらクールだろうってね。でもギリシャの歴史は濃くて豊かだから、どこから始めたらいいのか、何を題材にしたらいいのかわからなかった。それに、メンバーに詩人や物書きはいないからね(笑)。俺たちはただのミュージシャンだから、そういうものを書くには他の誰かが必要だったんだ。

-Dennisが適任だったということですね。

俺はそう思うよ。できあがったものがそれを物語っている。

-彼はギリシャ戦記を相当研究したのでは?

この曲を書いたときは間違いなくすごく勉強していて、膨大なリサーチをやっていたよ。アイディアは俺が投げたけど、俺もそのへんをそんなに勉強していたわけじゃないし......もちろん母国の歴史だからある程度はわかっていたけど、細かいところまでは知らなかったからね。"この言葉は入れた方がいい、このこととこのことを取り上げよう"みたいな話はしたけど。"サラミスの海戦"は重要じゃないかとか。そうしたら彼は"じゃあ「300」(※『Immortals』と同じ時代背景の2007年公開のアメリカ映画)を観ておくよ。本も読んで、アイディアがまとまったら連絡する"と言ってくれた。時には曲のタイトルとか、歌詞数行分とかを投げると、彼がそこから発展させて曲にしてくれたこともあったね。

-楽曲の構成やアルバムの中での配置、歌詞の組み立て方など、かなり練って作られた建設的な作品になっているかと思いますが、コンセプト・アルバムとして苦労した点はありますか?

実は曲順は音楽ベースで、ストーリー・ベースではないんだ。ストーリーは存在するけど、アルバム全体に散らばっている。例えば"サラミスの海戦"が少しで残りが"テルモピュライの戦い"だったりね。「Lady Of 1000 Sorrows」(Track.7)はレオニダスがオラクル(巫女)のところに行って彼女のアドバイスを求めるんだけど......どの曲もパズルのピースみたいな感じになっているんだ。「Live And Die By The Sword」(Track.5)はギリシャ人が裏切られて包囲されてしまって、その後ペルシャ人が自害してしまうとか、そういう感じ。ひとつひとつの曲がそれぞれひとつのシーンを表しているんだ。映画のワンシーンみたいにね。

-コンセプト・アルバムと言いつつも、1曲1曲はコンパクトにまとめられていて聴きやすいです。特に「We Defy」(Track.2)では硬派なギター・リフを中心に構成された楽曲の中にしっかりと聴かせるギター・ヒーロー的なソロがばっちり収録されているという、"これぞ!"な感じに仕上がったと思います。アルバム単位ではなく、曲単体として聴けるものを意識されてましたか?

そう、そのとおりだね。俺はコンセプト・アルバムを聴くときも、まずは音楽そのものに注意して聴くんだ。もちろんサビやヴォーカル・ラインは素晴らしいものでなくてはならないけど、まずは曲として聴いて、そのあとで歌詞の世界に入り込んでいくんだ。他の人のことはわからないけど、少なくとも俺はそういう聴き方をして育ってきた。まずはアルバムの音を聴いて"なるほど、こういう音なんだ"と思って、そのあとで興味があったら歌詞をひもとくという感じなんだ。だから曲順を決めるときは、音の流れがとても大事だった。FIREWINDのファンはどんな音の流れを好むだろう? ってことをよく考えたね。今回はとてもいい流れになったと思う。と言いつつ、「We Defy」はストーリー的にも2曲目で良かったと思うけどね。ギリシャ人がペルシャ人に降伏するかどうかみたいな感じの内容だから。「Hands Of Time」も古代ギリシャの時代に少年から男になって戦士になる、という内容だし、厳密に言ってもあの曲がストーリーの始まりになるんだ。いいオープニング曲でもあるよね。