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INTERVIEW

DESTRAGE

2016.12.05UPDATE

2016年12月号掲載

DESTRAGE

Member:Matteo Di Gioia(Gt)

Interviewer:今谷 重治

-スピーディ且つキャッチーなTrack.6「Dreamers」からTrack.7「Ending To A Means」へと続いていきますが、この「Ending To A Means」は「A Means To No End」を受けて作られた曲なのでしょうか?

「Dreamers」はギターでプレイするのが一番好きな曲だね。今、俺にギターを渡すと、その曲を演奏し始める可能性が非常に高いよ。そして、「Ending To A Means」はその曲のフォローをするのに最も適している。俺にとっては、この2曲の繋がりがおそろしいほどシームレスに聞こえるんだ。ちょっと大げさかもしれないけど。というのも、「Ending To A Means」と「Dreamers」は同じコード進行なんだ。最初は1曲だったものを、あとで2曲に分けたんだよね。そして、「A Means To No End」はイントロであり、「Ending To A Means」はアウトロなんだ。この2曲は、このアルバムがレコードだとしたらA面のオープニングとエンディングにあたる。音楽的にも感情的にもまったく同じもので、タイトルは単なる言葉遊びにすぎない。"A Means To No End=目的のない手段"に対して、"Ending To A Means=終わりまでの手段"で、"終わりを意味する"というダブル・ミーニングでもある。言葉遊びにさらに言葉遊びを重ねたんだ。例えば、山本昌男(写真家)の作品について考えてみよう。有名なシリーズでは、再建された自然博物館で動物のぬいぐるみを撮影したものがある。彼の写真は動物が生き生きとしてリアルに見えるが、実際にはそうではない。写真撮影はフィクションなので、見ている方は錯覚を起こすんだ。それは物語であり、ひとつの表現にすぎない。俺たちはその写真を見て、生きている動物なのか、ぬいぐるみなのかを見破ることができると思うか? 答えはノーだ。カメラのレンズを通して、ぬいぐるみと生きている動物は同じように生き生きしているからね。現実の表現は架空のものであり、それ以上の偽造はない。言葉遊びはバカげている。言葉遊びの言葉遊びも同じようにバカげている。

-続くTrack.8「Peacefully Lost」はまるでDREAM THEATERのように感動的な旋律とプログレッシヴな曲構成が少し新たな境地を見せてくれる感じがしました。この曲が完成した経緯を教えてください。

個人的には、DESTRAGEとDREAM THEATERが似ていることはないと思っている。でも俺は、君がそれを肯定的な意味で言ったんだと思う。もしそうなら、ありがとう。この曲は何ヶ月もの時間をかけて作ったんだ。映画ではナレーションを使って何がいつどのように起こったかとか、物事の関連性を説明する。それは、観客が驚かなければいけないときの"必要な情報"を与えるための必要なプロセスだ。「Peacefully Lost」は、コラージュみたいに曲がバラバラに聞こえないように、コード進行に気を遣ったんだ。前半は流れるように、そして後半は驚かせるような感じを意識した。良い形の流れにせず、奇妙な構成で作られた楽曲はたしかに脳を楽しませることができるけど、それだけでは十分じゃない。俺たちはとことん腹を割って話し合った。そしてある日、ロンドンのバックステージでコードのパズルが見事にできあがったんだ! スムーズで、魅力的で、苦く、甘く、未解決で、しかも安定している。このハーモニーの謎が解決されると、俺たちはさらに煮詰めてそのリズムを複雑にしていき、最終的に音源にあるような作品に仕上げたんだ。「Peacefully Lost」の歌詞についてだけど、例えば、うつ伏せに寝っ転がってコンクリートを見てみると、それがただの灰色ではなくて様々な色が混在しているのがわかるように、"Pearls of rock in all shades(すべての色合いの中に岩の真珠がある)"という言葉がある。歩いているときや走っているときには決して気づくことがないものがあるようにね。後ろを振り返っても過去を見ることはできない。時には空を見上げ、忘れ去った美しいものを見ることもある。我々は失われたものに思いを馳せるときに、自由を感じるし、失われたものの中に平和を感じるんだ。まさに"Peacefully Lost"。それは再び戦いが起こる前に"ここに留まる価値がある"と思わせるものだ。

-Track.11「Blah Blah」は遊び心溢れるギターが楽しく、これもまた新たなDESTRAGEを提示した1曲なのでは? と思いますが、この曲で目指した方向性はどこなんでしょうか。

歌詞は、偉そうなことを言う奴に対する皮肉だ。俺たちは言ってることとやってることが違う奴が嫌いでね。この曲のギターに関して言うと、アルバムの中で最も実験的で面白く仕上がっている。とても魅力的でキャッチーだよ。俺たちは、聴いてる人の気がつかないところで複雑なことをこっそりやっていて、そういった複雑なものを隠しながら聴きやすい楽曲を作ることを目指しているんだ。そんないたずら心があるんだよね。

-本編のラストを飾るTrack.12「A Promise, A Debt」から「Abandon To Random」への流れはTrack.1~2へと続く流れと同じようなパターンとなっていますが、そこは意識されたのでしょうか?

そのとおり、そこは意識したね。このアルバムの多面的な物語を癒すように。みんなにこの作品を最初から最後まで聴いてもらいたいと思ったから、時間をたっぷりかけてじっくり考えたんだ。

-「Abandon To Random」は7分半にも及ぶ壮大な展開となっており、前作のラストに収録されていた「36,7 Degrees Celsius」にも近い印象を受けました。やはり本編の最後はこのような楽曲で締めたいという思いで制作されたのでしょうか?

そう言ってもらえて嬉しいよ。曲の長さにこだわったわけじゃないけど、歌が入ってない部分で時間を取ることは重要だと思ったよ。時間の感覚は感情的になりたいときには有効だ。たしかに今回はアルバム全体を通して時間をたっぷりかけている。狂った犬のようにそこら中を飛び回って意味のないことをほざき合いたい衝動を抑えて、じっくりと考えて作ったんだ。何回繰り返して聴いても飽きることがないし、本当に意味のある作品ができたと思っているよ。

-日本盤のボーナス・トラックとして、インスト曲であるTrack.14「Elastic Consequence Of A Temporary Effect」を収録したのはなぜですか?

それは実験だよ(笑)。Federico(Paulovich)が即興でドラムを叩いてレコーディングしたものに曲を乗っけた。俺たちにとってはまったく新しく不思議な体験だったな。この曲は、何かいいアイディアがあって作ったわけでもなければ、悪いものを作ろうとしたわけでもなく、まさにこれはこれなんだ。この曲のタイトルは"Abandon To Random"の歌詞の一部で、運命を受け入れるときの穏やかであたたかい感情を歌っている。俺は、意志は現実を曲げることができるが、本当の現実は柔軟性があり、全体が独自の意志を持っていると信じている。日本は国外で俺たちの作品をリリースした最初の国だから、こういうレアで特別なものは日本のためにとっておくんだ。そういうわけで、俺たちが作った最も実験的な曲は日本に行き、日本に残ることになる(笑)。

-今作のジャケットはイギリスのブライトン在住のアーティスト Eva Bowanが制作しています。なぜ彼女に依頼したのでしょうか?

そう、今回のアートワークは彼女に手掛けてもらって、俺がタイポグラフィーとレイアウトを担当したんだ。蝶には4つの重要な役割が潜んでいる。今回のアルバムは4枚目の作品だからね。以前、俺は蝶の繁殖についてのドキュメンタリー映像を撮ったことがあるから、いろいろと勉強していたんだよ。その映像は、「Symphony Of The Ego」のミュージック・ビデオでも何ヶ所か使われている。蝶の生活は、ファースト・ステージが卵、セカンド・ステージでのみ食べ物を供給し、サード・ステージの生存期間中に変形と睡眠を行い、そして次のフォース・ステージで成虫になる。そこで自然は彼らに美しい羽を与える。数日で死んでしまう前に彼らは交尾の相手を探さなければいけない。それは時間との戦いであり、だからこそ美しい羽が必要になる。でも蝶の頭が取れたとしても、その美しさは変わらない。口がなくても、仲間がいなくても、目的がなくても、蝶を見ている俺たちにとっては蝶の美しさは変わらない。彼らの美しさは"目的のない手段"に他ならない。