－ああ、そうですね。結構センチメンタルな雰囲気がある音ですから。

豊島：ただ行きすぎるとそんな感じのバンドになっちゃうので、それはやりたくないなと。だから結構言葉選びが難しくて試行錯誤しました。だから試行錯誤しているとシニカルな感情が......どんどん愚痴っぽくなっていく（笑）。

－（笑）たしかにバックドロップシンデレラはかっこいいオケにストレートなかっこいい言葉がつく、みたいなことがあまりないなと今のお話を聞いて思いました。そこまで考え抜かれているとは。そうするとUKテイストのギター・リフが印象的なTrack.3「COOLです」はかっこいいオケにかっこいい歌詞なのでは？

豊島：「COOLです」は僕は曲として結構コミカルなものだと思っているので。そういう曲にはかっこいい歌詞を入れたいですね。やっぱりそのバランスはすごく考えていて。「激情とウンザウンザを踊る」の伸びてる泣きメロみたいなサビに「COOLです」みたいな歌詞が乗ると"うわあ......！！ 狙ってる！"みたいな感じになっちゃうので（笑）。ひたすらかっこつけてる感じが気持ち悪いなあ......と鳥肌が立ってきてしまいますね。だって歌うのあいつ（でんでけあゆみ／Vo）だし（笑）。

一同：ははは！

－そしてTrack.5「ベルリントロンボーン」は終始ものすごくIRON MAIDENの匂いがするのですが。

豊島：あ、わかっていただけるとは！ 嬉しいですねえ。ギター・ソロとかは完全にそうですね。この曲すごく好きで。僕の中でもちょっと新しい曲なんですよね。IRON MAIDEN色のある楽曲に踊れるスカのリズムを落とし込めたりもして、結構身体も動くしこれはいいなと。IRON MAIDENじゃ動かないから（笑）。

－そうですね（笑）。なぜこの曲で"ベルリン"をテーマに？

豊島：歌詞とかもう最悪で......（笑）。「台湾フォーチュン」、「アラスカアバンチュール」に続く外国の地名シリーズなんですけど。この曲はまず最初に"アイン・ツバイ・アイン／ツバイ・アイン・ツバイ"と言いたかっただけなんですよね。それで"アイン・ツバイはドイツ語だったな......じゃあベルリンか"ということでベルリンでいいか！と。

アサヒ：ベルリンに対する予備知識まったくゼロでした（笑）。

豊島："フォーチュン""アバンチュール"に続く言葉としてセレクトされたのが"トロンボーン"で。取ってつけた感じです（笑）。そしてベルリンに対する知識がないことを書き続けた結果こうなりました。

－では"俺は知るわけねーよ"は実話なんですね（笑）。

豊島："なんかね いいよね／やっぱね いいよね"とか何を根拠に言ってるんだ！という感じです（笑）。こういう歌詞も自分にとって新しいなと思ったんですよ。今までもくだらない歌詞はたくさんあったんですけど、何かひとつ主張があったりしてたんです。でも「ベルリントロンボーン」の無責任感は本当に振り切ってるな！と（笑）。キャナコさんのコーラスがまたね......黙れ！って感じですよね（笑）。

アサヒ：無責任感を増徴させてますね（笑）。

豊島：これはキャナコさんに"こんな感じで歌って"とお願いして（※と言いながら口の前で人差し指を立てる）。キャナコさんもそれをやりながらレコーディングしてました（笑）。

－Track.7「やってみよう」は何をやってみようと言っているのかがわからないので、誰にでも当てはまる歌詞というところも特徴的で。ある種メッセージ・ソング的にも映ります。

豊島：あ、やっぱそう思いましたか？ 良かった（笑）。この曲も全員歌ってるんですけど、実際本当に"やってる"のはキャナコさんだけなんですよ。キャナコさんが歌ってるところだけ、キャナコさんが歌ってるところの人だけが"やってる"んです。他の人は"やってない"んですよ。まずはなんでもやってみようよという気持ちを込めて作った曲なんですけど、実際やってるのは唯一この人だけというところが気に入ってますね（笑）。

－キャナコさん以外の人は"やってみよう"とは言っているけれど"やってない"ですね。キャナコさんは"Uh 私やってんだな"と（笑）。全員で歌うとそういうことができるのも面白いですね。バックドロップシンデレラは自主レーベルでCDもリリースしていらっしゃるので"やってみよう"という言葉にも説得力があります。

豊島：ああ、そういうところもありますね。やりたいことをやれない人も多いかもしれないけど、やってみないと何も始まらないですし。歌詞は冗談で作ってたんですけどサビを作っている間にわりとシリアスになっていきました（笑）。

アサヒ：レコーディング・エンジニアさんが作業しながら"（やってみようという歌詞が）まるで自分に対して歌われているようだ"と心にグサグサ刺さったとおっしゃってました（笑）。

－そしてTrack.6「よのっしーがやってくる」。とうとうバックドロップシンデレラ自作キャラクター"よのっしー"のテーマ・ソングができあがりましたね。

豊島：『スゴい！君！』（2013年リリースの5thフル・アルバム）に収録されている「市長復活～さいたま市ヨリ与野市ヲ解放セヨ～」の続編なんですけど。よのっしーは「市長復活」を作詞したあと、MVを作ったときに生まれたキャラクターで。それが2年間の歳月をかけてひとり歩きをし続けて（笑）。よのっしーは人気があって、よのっしーのTwitterアカウントを作ったら革命家みたいなキャラもついちゃって。

アサヒ：なんか偉そうな感じのね。

豊島：それで満を持してのテーマ・ソングを作ろうかと。