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INTERVIEW

ATARI TEENAGE RIOT

2014.03.17UPDATE

2014年03月号掲載

ATARI TEENAGE RIOT

Member:Alec Empire (Vo/Prog)

Interviewer:藤崎 実

-1997年にリリースされたサウンドトラック盤『Spawn』に収録されているSLAYERとのコラボレーション楽曲は、後の様々なジャンルの進化にとても大きな影響を与えましたね。また、様々な日本のアーティストとのコラボレーションも話題になりました。THE MAD CAPSULE MARKETSのTAKESHI率いるAA=や、ATRからの影響を色濃く受けているアナーキーな若手バンド 0.8秒と衝撃。など、DHRが気に入りそうなバンドが多く活躍している現在の邦楽シーンで、注目しているバンドやアーティストは存在しますか?

また4月の来日で新しいアーティストを発見できればと思ってる。楽しみだよ。日本の音楽は、俺の中のトップ10の中で1位なんだ。イギリスは7位くらい。特に最近はね。ブリット・アウォーズを見るのなんて、まるで拷問だよ。イギリスは、嘗てのあのクリエイティヴさを取り戻さないと。今の状態になってしまってるなんて、ちょっと怖くもある。ポップ・チャートは特に最悪だね。THE BEATLESに影響されてるとかいいながら、実際の音はOASISの劣化版って感じ(笑)黄金時代を振り返り過ぎなんだよ。もちろん、黄金時代は素晴らしかった。でも、なぜTHE BEATLESがすごかったかと言うと、それはTHE BEATLESのサウンドが当時はイクスペリメンタルだったから。彼らは新しいことにたくさんチャレンジしてきたんだ。『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』なんかもそうだし。だけど、今の時代未だに"ガールフレンドから電話がこない"なんて内容をギターひとつで歌ってるなんて退屈で仕方ない。そういう曲には何も反映されてないだろ。俺は、そういうイギリスのアーティストなんかより、日本のアーティストの音楽の方を断然聴いてる。BOREDOMSみたいなアーティストからは影響を受けるしね。クレイジーさとエネルギーの面で。最近はフィルム・スコアを書いてるからあまりそういう音楽は聴いてないけど、俺は本当に日本の音楽を聴くんだ。イクスペリメンタルとか、クレイジーな音楽。俺たちのサウンド・エンジニアもすごく気に入っていて"ATRでもこのサウンドやってみろよ!"なんて言ってくるんだよ(笑)。残念なのは、この曲いいなと思っても、漢字表記で読めない時があること。でも知ってる中で言うと、荒木健太のCDは持ってる。あと、SYNTH SISTERSっていう女性2人組。1人の名前は確かマユコだったはず。あと、最高のギタリストがいるんだ。今携帯に入ってるの調べるからちょっと待って......タク・スギモトって知ってる?彼は大好き。もし会うことがあったら伝えといて(笑)。パリで彼のレコードを見つけて買ったんだ。毎日聴いてたこともあるくらい。俺がもっとヨーロッパで日本の音楽をプロモーションしないとね(笑)。YMOだって日本のアーティストだし。『テクノデリック』でのドラム・マシーンに2つのシンセ使いは新しかった。あれは大好きなレコードのひとつ。日本の音楽は、ステージに上がる前にバックステージでよく聴いてるんだ。日本の皆はそうは思わないかもしれないけど、日本の音楽って先を行ってると思う。パッケージも特別だしね。それだって、日本ではもう20年も前からやってたことだけど、海外は今やっとパッケージにこだわってる。テクノロジーや楽器もそう。ローランドとか、ドラム・マシーンとか。日本の人たちは自分たちの作業に集中しすぎてて、外に影響を与えてるなんて気づいてないかもね(笑)。太鼓だって素晴らしい。ハリウッドのサウンドのトラックではしょっちゅう使われてる。バットマンでもスーパーマンでも。ヒーローものには特に大きな影響を与えてる。すごくヘビーでカッコいいから。次回の来日公演の時、30分くらい日本の音楽の素晴らしさについてレクチャーしようかな(笑)。だまれ!って言われるかもだけど(笑)。俺はそれくらい日本の音楽のファンだよ。音楽だけじゃなくて、サウンドそのもののファンでもあるしね。

-数多くの問題を抱える日本社会は不安や恐怖に民衆が思考を遮られ、対処や議論へと発展しないという悪循環に陥り、抜ける事の出来ない袋小路へと突き進んでいます。現在の日本は、政治と音楽を一体化させる活動を貫き通しているあなた方の目にはどう映っているのでしょうか?

ミュージシャンには2つの役割がある。ひとつは人々をエンターテインすること。そしてもう1つは、今世の中で何が起こってるかを映し出して、問題や解決方法、ディスカッションのトピックを提示すること。ATRは特に後者だと思う。人々を楽しませてないわけじゃないけど、俺にとっては後者の方が面白いんだ。何かが反映された作品の方が断然面白い。だから例えば、市民権運動のムーブメントが起こった時、あれは60年代の出来事だけど、あの時は1番ポップやロック・ミュージックがクリエイティヴな時だったと思う。当時はベトナム戦争の反対運動なんかもあったりして。だから、当時は音楽がものすごく意味のあるものだったんだ。そういう音楽こそ、本当にエキサイティングなんだ。音楽だけにとどまらず、アート全般がそう。そういうアートに常に賛同する必要はないけど、誰かが真実を表現してあれば、そのアートは面白いと思うね。正直であればそれでいい。時が経つにつれて、そういった音楽がなくなってきてレベルが下がってきたのは本当に悲しいよ。もっと、音楽に対して何かを求めるようにならないといけない。アートも同じ。ガールフレンドからの電話がどうのこうのっていうのはもういいからさ(笑)。そんなの、俺には何の意味もない。60年代のソウル・ミュージック、例えばAretha Franklinはラブ・ソングを歌ってたけど、彼女の声にはそれ以上のものがあった。その、それ以上のものが音楽を素晴らしくしてるんだ。やはり、そういった意味のあるものを作らないとね。ラブ・ソングだって、シンガーの個人的な思いが込められているだけでずいぶん変わる。他の年配の作曲家が作ったラブ・ソングをティーンエイジャーの歌手が歌ってる曲なんて、何も伝わってこないだろ?正直になることへの恐れを乗り越えて、より多くの人にそういう音楽を作ってほしい。テクノロジーや未来は今暗く見えてるかもしれないけど、だからこそ、その現実を表現しないと。アートは、皆が思ってる以上にパワーがあるんだよ。使えるし、助けになる。だから昔の人もアートを作ったわけで(笑)。俺たちのアルバムも、その助けになればいいんだけど。だから、日本盤でも皆にそれが伝わりやすいように必ず歌詞の和訳を入れるようにしてるんだ。