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INTERVIEW

ATARI TEENAGE RIOT

2014.03.17UPDATE

2014年03月号掲載

ATARI TEENAGE RIOT

Member:Alec Empire (Vo/Prog)

Interviewer:藤崎 実

-炸裂する攻撃的ラップを自在に操る強力な新メンバー Rowdy Superstarを改めて紹介してください。どういった経緯でATR加入に到ったのでしょうか?

2001年に日本でショーをやったすぐあと、CX Kidtronikが、ATRの活動で彼のソロ・アルバムのプロモーションが出来なくなってしまって......コーチェラ、ブラジルやメキシコでのショーが続いてて、あと1年間は確実に活動が続くっていう状態だったんだ。彼はその時既に予定よりも1年も長く一緒にプレイしてくれてて。皆がATRを好きでいてくれてるおかげでね(笑)。だから、とりあえず自分のレコードのプロモーションに専念して、またあとからジョインしたらどうかってことになったんだ。Rowdyのことは、その1年前くらいからPatrick Wolfを通じて知っていたんだ。その前から、ロンドンのシーンにいた彼の存在は知ってたけど。グライムとか、ロンドンのヒップホップ・シーンなんかで彼は活躍してたからね。で、彼がポートランドとドイツのショーをATRのために計画してくれたんだけど、その時彼はMatthew Herbertとのレコードをプロモーションしてる時だったから、一緒に何かやろうっていう話をしたんだ。で、CXがしばらくプロモーションに専念するから、代わりにステージに出ないか?って。どっちにしろ何か一緒に何かやろうとしてるんだし、コーチェラと南アメリカのショーに出てみたらいいじゃないかってことになったんだ。すごく自然な流れだったね。結果、それがすごく上手くいった。ATRは皆ソロ・プロジェクトをやってるけど、その内容はATRとは全然違う。俺のアンビエントな曲なんかは、同じATRのアレックが作ったものとは思えないくらね(笑)。だからRowdyも、彼のソロ・プロジェクトだけ聴くとATRと合うのかわからないと思うかもしれないけど、ATRに入ると見事にピッタリだったんだ。ATRの音楽をやるときは、誰でもアグレッシブになる(笑)。彼が入ってからは、本当にたくさんのショーをやったよ。クレイジーなショーで良い時が過ごせて本当によかった。彼の加入は、新譜にも影響してるんだ。彼はイギリス出身で、イギリスのヒップホップやグライムはアメリカのとはかなり違うからね。Rowdyのことは、本当に気に入ってるんだ。エネルギーがあるし、やっぱりイギリスさを持ってるアーティストなんだよな。CXはニューヨークのヒップホップを感じさせるんだ。彼はアメリカ出身だからね。PUBLIC ENEMYみたいな。でもRowdyは、それとはまた違うユニークなエネルギーをもたらしてくれる。俺は70年代後半のTHE SPECIALSみたいなバンドの大ファンで、イギリスのスカみたいな音楽が大好きだしね。彼のアクセントのおかげで、曲の雰囲気が変わるんだ。イギリスでは色んなジャンルの音楽が飛び交ってるから、イギリスの声と音楽に対する理解をATRに取り入れられて嬉しいよ。そうしたいと思っていたから。何年か前でロンドンで暴動があった時も、カメラ越しにそれをみながら色々なことを感じてた。Rowdyがそういった日常を歌詞にして曲に取り込んでくれたんだ。これから、彼とはもっと色々なことが出来ると確信してるよ。

-復活以前のATRは、怒りや憎しみ、フラストレーションといった感情をビートに乗せるハードコアな存在でしたが、ニュー・アルバムからは凶暴性や狂気だけではなく、テクノ寄りのシンセ・サウンドの比率や練り込まれた楽曲構成。更にオーガニックな面も増えている印象を受けました。あなたにとってATRサウンドの表現に必要不可欠な要素とは何でしょうか?

80年代や90年代の一部のエレクトロニック・ミュージックは、人間がマシーンをコントロールしてた。KRAFTWERKがその良い例なんじゃないかな。テクノ・シーンでは、例えばレイヴのパーティーでダンスして皆盛り上がるけど、THE CHEMICAL BROTHERSやUNDERWORLDなんかのプロデューサーたちは、KRAFTWERKに近いんだ。わかるかな?プログラミングをするミュージシャンたちってこと。ミュージシャンたちはフィジカル的には何も表現してないのに、なぜか観客は盛り上がるんだよね。エレクトロの90年代のミュージシャンで、観客の中にダイブしたり、そういうパフォーマンスをするミュージシャンは見たことない。例えばTHE PRODIGYなんかもそう。エレクトロ・ミュージックの場合、ミュージシャンはコンピューターの裏に隠れてるんだ。裏に隠れてコントロールしてる。列車みたいなものだよ。自動で動いてるけど、ある部分をコントロールするために人間がいる、みたいな。パイロットとかね。オート操作なんだけど、でもそこにいないといけないっていう感じかな(笑)。でも、ATRはそれとは違うんだ。何が違うかというと、コンピューターと人間がイコール・レベルだということ。俺たちは彼らとは逆で、コントロールを失うためにコンピューターを使ってるんだ。大きい音やノイズで観客をぶっ飛ばさせるためにね。そういったサウンドはアタリ・コンピューターで作られたものだし、復活以前はアタリでそれを出来る限り限界まで挑戦してた。それが以前のATRにはかなり反映されてたから、怒りとかフラストレーションっていう面が前面に出てたんだと思う。コンピューターを使うことで、そういうのを表現してたんだ。それが、一般的なテクノの哲学と違う部分。普通のダンス・ミュージックは、人々を機械でコントロールして同じリズムに乗せて踊らせるけど(笑)、俺たちは逆なんだ。一般的なテクノはロボット・アーミーみたいだけど、俺たちはその真逆。コントロールを失って、互いにそれぞれ自分なりにクレイジーになる(笑)。新しいレコードにはその部分がもちろん入っていて......って、質問は何だったっけ(笑)? 俺たちはコントロールを失うところまで人々を導いて、皆それぞれが違う締めくくり方が出来るようにしてるんだ。ATRのファンは、皆自分の怒りをコントロール出来る。クレイジーなステージはもちろんたくさんあるよ。ダイブもあるし、カオスだし、アナーキーでもある。でも、お互いをリスペクトすることは絶対に忘れないんだ。ATRの根本には、パワフルな哲学と考え方があるから。間違って誰かを蹴ってしまったら、手を差し伸べてその人を立ち上がらせる。倒れてる人を蹴ったりは決してしないんだ。メタル・バンドのショーなんかだと、それが違ってくるんだけど(笑)。ATRのファンがそうじゃないのは、俺たちが互いを尊敬し合うというメッセージを曲を通して伝えているからさ。それが、俺たちの基本のコンセプトなんだ。特にはあまり俺たちの音楽を理解しないまま、ただアグレッシヴになってる人もいるけどね。でも、自分の怒りを他の人間にぶつけてはいけない。そこが、ただ怒りを表現するだけとは異なる大きな違いなんだ。今回の作品で自分でも面白いと思ったのは、さっきも言ったように、ポジティヴなフィーリングの方が強くて、今まで見られたようなフラストレーションが反映された部分がほとんど見られなかったこと。ネガティヴなものがあまり見えないんだよね。レコードを聴いてると、人々が楽しく過ごして笑ってるのが想像できる。クレイジーにもなるから、もちろんある意味アグレッシヴでもあるけど、そのクレイジーさやパワーは怒りやフラストレーションではないんだ。筋トレ終えた後の気持ちよさ、みたいな感じ。人間だから、あることに怒りを感じる時もある。怒るべきことには怒るべきだしね。例えば福島の問題ひとつにしても、俺だって悲しみや怒りを感じる。遠くに住んでるから何も出来ないしね。でも、それに怒りもおぼえず何も反応しない魂が死んだような人たちだってたくさんいる。とにかく受け身な人たちが。そういう時は、受け身にならず、何かを自ら感じることが大切なんだ。ATRをやってて良かったと思うのは、音楽を通してそのフィーリングを映し出せるということ。それによって何かを変えたり、それが出来ないとしても、少なくとも人とそれを共有することができる。共有も大切なことだし、その怒りやフラストレーションを経て何かポジティヴなことが出来るっていうのも重要なことだと思うんだ。