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INTERVIEW

ATARI TEENAGE RIOT

2014.03.17UPDATE

2014年03月号掲載

ATARI TEENAGE RIOT

Member:Alec Empire (Vo/Prog)

Interviewer:藤崎 実

-世界のレイヴ・シーンが待ちわびていたニュー・アルバム『Reset』を聴かせていただきました。デジタルとノイズの洪水に、怒濤のハードコア・サウンド。DHRファンが歓喜すること間違いなしの実にATRらしい作品が完成しましたね。Alec本人としても、かなり納得のいく自信作になったのではないでしょうか?

そうだね。いつものレコードと今回で違うのは......例えば福島のこととか。前にFUJI ROCK FESTIVALでパフォーマンスした時、皆が俺のところにきて色々話してくれたんだ。本当の情報が公開されないでいるとか、ジャーナリストたちが書きたいストーリーを書けないでいるとか。そういうのは良くない。俺たちは、そういった現象を防がないといけないんだ。大きな挑戦だけどね。でもそれをやらない限り、本物のデモクラシーは起こせないし、テレビで笑顔で発言して、それを実行しない政治家と同じになってしまう。このレコードでは、行動を起こせばそれが出来るっていうポジティヴな考えが語られてるんだ。昔の東ドイツみたいにね。まあ、そこまでテクノロジーが発達してる場所じゃないから規模は小さいけど、間違ったシステムはいずれ崩れるんだ。政治家や悪巧みを考える連中が色んなシステムを作るけど、人間の進化で、そういったものは必ずダメになる。永遠には続かないんだ。ナチスだって敗北したわけだしね。そういう連中は最終的に負ける。だから、今回のレコードにはそういうポジティヴなフィーリングを入れたかったんだ。そういう問題や感情を皆とわかちあいたいと思った。それが、前のATRのレコードとの違いかな。もちろんそのためにはネガティヴな面もたくさん現実として見せないといけないけど、俺たちが欲しいリアクションは怒りじゃなくて、"ATRがこう言ってるから俺たちも何かやらなきゃ!"っていうリアクション。このレコードでは、皆がインターネットで簡単に見つけられるトピックについて語ってるんだ。そこから自分たちで深く掘り下げていってほしいし、レコードからやる気をもらってほしい。だって、コンピューターが身近にある今、色んなことが実行できるんだからね。今回のレコードは、よりパワフルだと思う。ATRは毎回レコードを出す度に前作よりも前進しようとしてるんだけど、今回のレコードはよりパワフルだと思う。でも、今回はやらないでおこうってこともいくつかあったんだ。もう既にやったことがあったから。だから、ディストーションのベース・ドラムはやってない。それに気づかない人もいると思うけどね。それがなくても、今までと同じATRのレコードに聴こえるから。もちろん、今まで使ってきた要素もたくさん使ってる。でも今回は、少し内容を変えたかったんだ。新作には、テクノ色が強いトラックもいくつかある。最初の頃のATRはムーブメントと共に出て来たから、パンクと結びつけられてたんだ。その時のスピリットをレコードにもう一度レコードに取り入れたいなと思ってそういうトラックが出来たんだ。90年代初めのイリーガルの音楽シーンのスピリット。俺たちは結局エレクトロ・バンドだと思うんだ。その中でもアウトサイダーではあるけど(笑)、決まったサブ・ジャンルにはフィットしないから。色んなジャンルの要素はあるけど、なかなかこれだと定義は出来ない。ドラムンベースでもないし。でもたくさんのダブステップ・プロデューサーやEDMのプロデューサー、テクノやトラップ、そういったサブ・ジャンルのミュージシャンたちがATRからインスパイアされてるみたいなんだよね。だから、そこから先へはあまり行きたくないんだ。ロック・ギターの方向とか。それはATRが目指す方向性ではない。もしシンセで作り出せないサウンドがあるとして、それを作りたくてギターをサンプルすることはあると思う。でもそれは、ギターを特別使いたいんじゃなくて、ただ他とは違うサウンドをギターがたまたま持っているから。決して悪いとは言ってないよ。ギターはギターで楽器のひとつ。でも、ギター使うにも、サンプラーにレコーディングして、操作してデジタル化するから、エレクトロのビートの上からギターを演奏しているようには聴こえない。だからATRのサウンドはユニークなんだ。

-『Reset』というタイトルに込められた意味を教えて下さい。

"リセット"っていうのは、アタリ・コンピューターのリセット・ボタンのこと。そのボタンを押すと、全てが拭い去られて、仕切り直しが出来るんだ。モダンなコンピューターとは違って、アタリのリセット・ボタンを押すと、本当に全てが消えてしまう(笑)。あのコンピューターは、毎回自動的にバックアップをとってくれたりはしないからね(笑)。それが、良いメタファーだと思ったんだ。世の中には、自分たちが捕われているものを解き放って、未来に向けて行動する方が良い時もある。ドイツや日本の社会もそれと似た状況にいるんじゃないかな。最近すごくそれを感じるんだ。歴史や伝統が、より良い未来が出来て行くのを妨げている時があるってね。例えばドイツでは、何百年も前の話がたくさんトピックとして取り上げられるんだ。50年、60年前に起きたヨーロッパ危機の話とか。でも、俺からすれば、何で今になってまでまだその話をしてるんだ?って思うんだよ。もう過去の話なのに。保守的な人たちは、何故そういう話を出して今の世代と昔の世代をわけようとするのかわからない。それは危険だと思う。保守的な人たちは、過去をリスペクトし過ぎなんだ。もちろん俺だってリスペクトするけど、それによってより良い未来が作られるのを妨げてはいけない。今の時代に必要じゃないものはたくさんあって、それが前進するための道を塞いでしまってるんだ。過去と今をわけるんじゃなくて、現在に目を向けて現在抱えている問題の解決方法を考えないと。それなのに、いつも過去や伝統に戻ろうとしてしまってる。振り返るんじゃなくて、そこから得た知識を使って前に進むことが大切なんだ。過去じゃなくて、ゴールの話をすべきなんだよ。歴史や伝統を気にしていない人たちを、振り返るようコントロールするのは間違ってる。ナショナリズムって本当に危険だと思うね。今の時代、他の国やそこに住む人々のことを理解するチャンスがせっかくあるのに。インターネットもそうだし。それを嫌がる人間が未だにたくさんいるんだ。だから、リセットっていう言葉はいいなと思った。リセット・ボタンが持つあのパワーもすごいなと思ったし。一押しで全てがサーっと一気に消えるあの力。間違って押してしまったら最悪だけどね(笑)。時の流れに身を任せて未来に目を向ける。そういうこと。過去が完全に消えるとはもちろん言わないけど。音楽も同じだからね。前進すべきなんだ。ここ何年かライブをやってきて、90年代の音楽を知らない観客がいたのには驚かされたよ(笑)。でも、だからといってその時代の音楽を強要したりはしない。前回のアルバムで彼らがATRのファンになってくれたのなら、それでいいんだ。