INTERVIEW
ATARI TEENAGE RIOT
2014.03.17UPDATE
2014年03月号掲載
Member:Alec Empire (Vo/Prog)
Interviewer:藤崎 実
-SUMMER SONIC 2010、FUJI ROCK FESTIVAL '2011でのアナーキーかつ扇動的、アグレッシヴなライヴを体感しATRの完全復活を確信しました。予備知識が皆無の状態から復活後のステージに魅了された若いファンも増えています。レジェンドと称されても良い存在のあなた方が唯一無二の存在として、シーンの最前線に君臨している状況をどう自己分析していますか?
2012年は特に若いファンの存在を感じた年だった。昔の曲をフェスでプレイすると、前よりも明らかにその曲を知らない人たちが多いな、と感じたりね。で、新曲をプレイすると皆クレイジーになる(笑)。知らない曲だと踊りを止めるとかじゃないけど、反応が違うんだ。今1番人気なのは、ひとつ前のアルバムだしね。それはいいことだと思う。変な感じではあるけど、そういう風に新しい観客にシフトされたわけだし、それを受け入れるからこそ世代関係なく多くの人がATRの音楽を楽しめるんだと思う。あと、エレクトロがもっと俺たちの音楽に近づいてきたっていうのもあるんじゃないかな。よりハードなダブステップとか、EDMとか、テクノとか。1997年くらいのATRのサウンドに近いと思う。ファンから"この曲が出来た時、俺二歳だったんだ!"なんて言われたこともあるしね(笑)。そういう人たちと、同じトピックを今シェアできてることが本当に嬉しい。自分たちでもビックリだよ。それとは逆に、70年代のパンク・ロックをリアルタイムで楽しんでた爺さんがファンでいてくれたりもする(笑)。その時、俺たちが逆に赤ん坊だったわけで(笑)それくらい色々な人たちが皆俺たちのショーで楽しい時間を過ごしてくれてるなんて、変な感じだよ。あるひとつのグループに属してないのがいいのかもしれないな。ヘビメタでいようとか、テクノでいようとか心がけてないのがいいのかも。フランスとチェコでヘビメタのフェスに出たけど、あれはすごかったな。皆タトゥーが入りまくってて、長髪で(笑)。で、色んな人から"フェスの中でATRが1番メタルだったぜ!"って言ってもらえたんだ(笑)。やっぱり、俺たちがもってるエナジーがそう思わせるんだと思う。エナジーは、色々な音楽で共通してるしね。
-今回のニュー・アルバムでも、ラップ、ヒップホップは重要な武器・ツールとして前面に打ち出されていますね。楽曲がカオスになっていようとも、メッセージをしっかりと明確に聴衆に伝えアジテートするという、ある種のポピュラリティを有しているという点がATRの魅力、インテリジェンスの高さを物語っていると感じていますが、いかがでしょうか?
カオスな音楽を聴く時って、ランダムなサウンドでカオスになってると思うかもしれないけど、実はカオスになるようプログラミングされているんだ。例えば特殊効果の映画の音楽。爆発音とか、より面白くするためにプログラミングされてるんだよ。カオスが人をもっと作品に没頭させるからね。アニメは良い例だと思う。日本のアニメにはたくさんその例が見られる。あれを見ると、皆魅了されるよね。それは、それがアニメだとわかっているから。例えば"アキラ"を見たら、人間が何もないところからあの世界観を作り出したとわかっているからあの作品に惹かれるんだ。人の頭から生まれたものだと知っているから。エレクトロ・ミュージックもそれと似てるんだよ。良いエレクトロ・ミュージックは、細かくプログラミングされてる。俺たちももちろんしてる。中にはプリセットのため、楽をするためにコンピューターを使ってる人もいるけどね。でも俺たちは、そういう使い方を楽しいとは思わないんだ。そういう使い方は、つまらないテレビゲームをやってるみたいなもの(笑)。俺たちの音楽はスープみたいなんだ(笑)。日本料理はそれとは逆(笑)だって、すごく細かくて豪華で、中に何が入ってるか、何が使われてるかが綺麗に見えるからね。でも俺たちの音楽はスープで、見た目はただのスープに見える。それがカオスでもいいし、エレクトロニック・ミュージックでもいいし。でも、その味はシンプルではなくて、何か味がするんだ。その味が何からきてるのかはわからないけど、色んな素材が使われているっていうことだけはわかる。全体的には普通のスープのように見えるけど、それが何か他とは違う味だと皆がわかる味で、ハマる味になるよう計算されてるんだ(笑)。
-近年、ダブステップやシンセ・サウンドを多用したアーティストたちの台頭によるテクノ・サウンドの復興をどう捉えていますか?
とにかくコピー&ペーストが多い。昔の音楽に影響を受けるのは理解できるけど、アプローチが違うと思うんだ。さっきも言ったように、ユニークな音楽を作るためにわざとテクノロジーを使ったのがテクノの始まりなのに。でも最近、ローランドがまたアイラのドラム・マシンを発売し始めたのは良かった。最近の若いアーティストは、80年代のオリジナル・マシンを使わずにサンプルしがちだからね。だから、ローランドがそのニュー・バージョンを発売するのは良い動きだと思う。昔のマシンは今バカみたいに高くなってるから、オリジナルのマシンをなかなか使えないっていうのも現実なんだ。だから、ニュー・バージョンが出ることによって若いアーティストが本物の音にアクセスしやすくなるっていうのはすごくいいことだと思う。でも、それでもやっぱり昔と同じものを作るんじゃなくて、それとは違う作品を作る必要はあると思う。彼らがそういったマシンを手にして、果たしてコピー&ペーストではないオリジナルの作品を作るかどうかには注目していきたいね。過去をコピーするだけじゃがっかりだから。趣味としてはいいけど、プロのミュージシャンとしては良くない。過去をコピーしていては、いずれ音楽は廃れてしまうよ。発展させていかないとね。クラシック音楽を聴いててもわかるだろ?昔のスコアをただプレイしてるだけじゃ、まるでロボットが集団で演奏してるみたいで全然面白くない。そういうことをしているのは、自分たち自ら、人間は必要ない、代わりに演奏してくれるロボットがいればそれで事足りると発言してるようなものなんだ。