INTERVIEW
THE PRODIGY
2009.02.18UPDATE
Member:Liam Howlett(Music composer) &Keith Flint(Dancer, Vocalist)
Interviewer:Yuzuru Sato, translation by Mariko Shimbori
-オリジナル・アルバムにおいて三人揃っての作業は実に11年ぶりと言うことになります。今作で改めてTHE PRODIGYのケミストリーを体感したとしたら、あなたたちはそれをどのように表現しますか?
Liam Howlett(以下L):11年ぶりというと、俺たちがその間離ればなれでいてまた一緒になったように聞こえるけど、バンドは一度も解散したことはない。俺たちはバンドとしてこれまでずっとレコーディングや...
Keith Flint(以下K):ツアーをやっていた。
L:ツアーをやっていて、自分たちはそんな風に考えたことはないな。
K:ほんと、そうだな。説明し難いんだけど...
L:THE PRODIGYは2つの基盤を持っていて、そのためにみんなに理解してもらえないこともあるんだけど、俺たちはヴォーカル・バンドではない。俺たちはミュージック・バンドだ。ヴォーカルは必要なときにだけ入る。
だから、ある意味ラッキーなことに、「Firestarter」をリリースしたと思ったら、次には「Smack My Bitch Up」をリリースできる。つまり、Keithがある曲でフロントに出たとしても、次の曲ではそうならないかもしれない。そして、そのまた次の曲では、Maximがフロントに出たりするかもしれない。
K:俺たちもそれで満足だし、それで十分だ。どの曲もPRODIGYの音楽で、俺たちもその不可欠な要素となっている。君たちのように日付とかにこだわって考える人もいるけど、11年の間には『Always Outnumbered, Never Outgunned』をリリースしていて、当時どういう状況だったかというと、アルバム制作の最後の方で一緒に作った曲もあった。それは「Warning」と呼ばれる曲になったんだけど、結局アルバムには収録されなかった。
だけれども、ライヴで必ずやる曲となった。収録されていたとしても、ただ記念としてそうされただけで、アルバムには適していない曲だった。俺とマキシムはこのアルバムから2曲くらいを歌えるようにして、このアルバムもライヴでパフォーマンスできるようにした。そうやって、THE PRODIGYがレコーディング・バンドであると同時にライヴ・バンドとしても存続できるようにした。Liamがこのバンドは2つの顔を持つバンド、統合失調症のようなバンドだと説明したけど、俺たちにとってはTHE PRODIGYこそ究極の音楽が存在する場所で、俺も常にプロディジーの一部となっている。THE PRODIGYの音楽は、自分でヴォーカルをとった曲でなくても俺の心の中にある大切な曲だ。
L:俺たちは、このアルバムをレコーディングするときにバンド・アルバムにしようと決めた。最初から最後までライヴで演奏できるアルバムを作ろうということになった。俺たち全員が影響を及ぼしている作品にしようとした。
K:それと、『Invaders Must Die』は、前作の後『Their Law』をリリースしてツアーもやったけど、俺たちが11年間一緒にレコーディングしていないことをみんなが気にしているように感じた。それで、今こうしてそれがどういうことだったのか、それでも大丈夫なんだという説明をしているけど、「よし、そういったことは吹っ飛ばして、完全なバンド・アルバムを作ってやろうじゃないか」と話し合った。そういったことに片を付けて、バンド・アルバムを作ろうってね。
L:『Invaders Must Die』というアルバム・タイトルは、俺たちからみんなへの声明のようなものだ。評論家やプレスといったことではなくて、防衛を意味している。俺にとってのこのタイトルは、自分にとって大切なことを防御するという意味だ。バンドの一員でいることはギャングの一員でいることのように感じることもあって、他人はみんな敵となる。そういった考えから来ているタイトルで、メンバーそれぞれにとって違った意味を持っていると思う。レコーディングを開始して、意味のあるものとなったんだ。
K:特に、アルバム・タイトルが先にあったところでアルバムを作ったからな。このタイトルは成長していって、あらゆる面においてアルバムの不可欠要素となった。アルバムのイメージもこのタイトルから来ているし、収録曲の何曲かのタイトルも影響を受けているし、すべてはこのアルバム・タイトルから生まれて来ているんだ。
L:そうだ。
K:こういうのは珍しいアルバムの作り方だとは思うけど。
-さて、本作が出る間、あなたたちは勢力的なツアーと、ベスト盤のリリース。「Need For Speed」などへの楽曲提供を行っていました。その間の活動で今作を作る上でのアイデアの元となったエピソードがあったら教えて下さい。
L:いや、そういったことはない。自分の曲が映画に使用されていて...特に決まった映画のサントラを作ってくれと依頼された場合を除いて...将来、バンドの活動が落ちついた時期にそういったこともやってみたいとは思っているけど...何かの映画に曲が使われていたら、それは慎重に選ばれた曲で、俺自身、どんなものに使われるのかよく吟味する。でも、そういったことで自分たちが影響を受けることはない。
音楽が上手く使われているよく出来た映画もあるけれど、俺の音楽はラヴ・ストーリーでは取り上げられない。大抵、人がサメに食われるところとか、暴力、激情といったシーンで使われる。基本的には、衝撃的なシーンで使われるんだ。でも、そういったことは俺たち自身も興味のあることで、そういうのが好きなんだ。
-エレクトロやニュー・レイヴをはじめとするレイヴ・リヴァイヴァルの盛り上がりをどのように評価しますか?
L:ニュー・レイヴは、特にイギリスにおいては冗談のようなもので、KLAXONSといったバンドはプレスと一緒になって楽しんでるんだ。それでもこのシーンからは、KLAXONSや他にも幾つかいいバンドも登場してきている。音楽に興味を持っているキッズたちはバカではないから、こういったことはジャンル分けするためのレッテルだって気づいたりしてるんじゃないかな。
俺たちに関して言えば、オリジナルのレイヴ・サウンドは俺たちが所有しているもので、俺たちそのものなんだ。俺たちはそのシーンから出て来ている。リアルで本物のブリティッシュ・カルチャーだ。だから、俺たちは当時に戻ってそこから何かを使って表現する権利を持っている。俺たちはそのカルチャーに深く関わっていた。このニュー・アルバムもレトロ・アルバムではなく、当時のサウンドを少し活かした曲も何曲かあるけれど、それでも"今"の音になっている。でも、それが俺たちの要素なんだ。あのサウンドが俺たちなんだ。
K:そうなんだ。
L:俺たちは自分たちがやってることにワクワクしていて、別に他の大勢のバンドと友達になろうだなんて思わない。バンドをやっていて、アルバムがリリースされるというのは、軍隊にいるようなものだ。他のどのバンドも自分の敵となる。他のバンドを強圧的に押し潰すんだ。
K:俺たちは心から自分たちが最高のバンドだと思ってるんだ。
L:横柄になってるんじゃなくて、信念としてだ。
K:そう、信念だ。信念を持ってなくちゃならない。
L:他の若いバンドにもそういう態度でバンドをやってもらいたい。自分たちのことをベストだと思って活動してもらいたい。
K:自分が勝つとは思えない戦いに、どうして初めから戦おうだなんて思うんだ? 俺がステージに上がるときには、自分の後ろにはこの世で最高のウォール・オブ・サウンドがあるのを分かっている。会場にいる全員のパワーを盗み取るためにステージに立つ。そこにいる全員に、「このバンドのメンバーになれたら」と羨ましがらせるのさ(笑)。もちろん、最後には握手はするよ。個人的にむきになって戦ってるわけじゃない。そのときのステージが俺たちのものでなくちゃならない。俺たちが支配してなくちゃならない。最後には俺たちの一部を残してなくちゃならない。俺たちの持ってるものすべてを発揮しなければならないんだ。
L:ダンス・シーンは誰もが家族のようで、互いに友達関係にあると勘違いされることもあるけど、そういうふうにはいかないんだ。数人のDJの人たちや自分たちの陣営にいる人たちとかとは友達ではあるけど、Keithが言うように、自分たちがライヴをするときには、俺たち対他人全員となる。
K:よくバンド同士が一緒に演奏したがって、あのバンドのあいつにベースを弾いてもらおうなんてやってるけど、俺はそういうのは好きじゃない。それもまあいいけど、ちょっとオタクミュージシャンっぽいな。自分たちのギャングがいればそれでいい。これが俺たちのギャングだ。俺たちはこのステージを引き裂きに来た。そういった態度でギグに臨むんだ。それが俺のメンタリティーだ。
L:RAGE AGAINST THE MACHINEもそうだ。そういったメンタリティーで臨んでいる。彼らのそういった面が好きだ。
K:まったくそのとおりだ。
L:彼らもその場をハチャメチャに破壊して、それで帰って行く。