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FEATURE

Maxim

2019.12.03UPDATE

2019年12月号掲載

THE PRODIGYのフロントマン、Maximが愛に満ちたソロ・アルバムを約14年半ぶりにリリース!!

Writer 井上 光一

Maxim――英国が生んだエレクトロ・ミュージックの最重要アクト、THE PRODIGYの2大フロントマンのひとりであり、ドレッド・ヘアーを振り乱し、激しくもしなやかな身のこなしで魅せる圧倒的なライヴ・パフォーマンスとMCを武器に、バンドの人気を牽引する存在である。そんな彼が、なんと約14年半ぶりに日本先行でソロ・アルバムをリリースする運びとなった。

CDとしてリリースされるのは日本のみ、ということなので、日本のファンにとっては嬉しいニュースである。アルバム・タイトルは"Love More"。ストレートなアルバム・タイトルだからこそ、今のMaximがどのように思い、何を伝えたいのかがわかるというものだろう。ところで、ハードコアなTHE PRODIGYのファンであればともかく、彼が過去にソロ作品をリリースしていた、という事実を知らないという若いファンは多いかもしれない。前作『Fallen Angel』(2005年)から約14年半という歳月が経ってしまったことも鑑みれば、それも致し方ないことではある。そこで、簡単にではあるが、改めて"ソロ・アーティスト"としてのMaximに焦点を当てた形で、彼のキャリアについて振り返ってみたいと思う。

ステージ・ネーム"Maxim"ことKeith Palmerは、もともとレゲエ・シーンにいたが、90年代初頭にTHE PRODIGYに参加。バンドのMC兼ダンサーとして本格的に音楽シーンにその名を知らしめていく。バンドの初期の名曲「Poison」でMaximのがなるようなMCを聴くことができるが(歌詞もMaximが、バンドのリーダーでありキーボーディストのLiam Howlettと共に手掛けている)、この楽曲は、THE PRODIGYが初めてメンバーのヴォーカルをフィーチャーしたトラックである。世界中でヒットした大傑作『The Fat Of The Land』(1997年)においては、「Breathe」や「Mindfields」といった楽曲でヴォーカルを披露。バンドの人気が頂点に達したこの時期を境に、メンバーのソロ活動も活発になっていく。Grim Reaper名義で限定ソロ作をリリースしていたMaximも、いくつかのオムニバス集に楽曲を提供したあと、EP作品『My Web』(1999年)で本格的にソロ・デビューを果たしている。翌2000年には初のソロ・アルバム『Hell's Kitchen』をリリース。


ヒップホップやトリップ・ホップ的サウンドを融合させ、THE PRODIGYよりも暗くヘヴィな音に仕上がった作品は、SKUNK ANANSIEのSKIN(Vo/Gt)と共作したシングル「Carmen Queasy」がUKチャート33位を記録している。続く2枚目のソロ作『Fallen Angel』では、割合にキャッチーなヴォーカルやギター・サウンドも盛り込まれ、Maximの違った一面を垣間見ることができるので、1st作と比べてみるのも面白いだろう。

その後、THE PRODIGYのメンバーとして世界中をツアーする日々を送る傍らで、DJ活動も行い、さらにはMM名義で芸術家としても活動している。とはいえ、Maximとしてのソロ音源のリリースは、先述したように14年という歳月を待たなくてはならなかったのだ。


"懸命にハッピーに生きよう"――リスナーを鼓舞する、ポジティヴなメッセージ


『Love More』という作品を前にして、おそらくすべてのリスナーは、今年起きてしまった悲劇的な出来事に改めて向き合わざるをえないであろう。2019年3月の、Maximと共にTHE PRODIGYのフロントマンを担ったKeith Flintの突然の死は、世界中の音楽ファンを悲しみのどん底に叩き落としたが、本作に込められたポジティヴなメッセージは、聴く者の気持ちを奮い立たせ、前を向くための勇気をくれるものである。本作はKeith Flintに捧げられた作品であり、アルバムのライナーには、時間は止まることはないからこそ、懸命にハッピーに生きるんだ、といったMaximによるメッセージも記されている。それは、本作におけるひとつのテーマと言ってもいいだろう。先行シングルにしてオープニングを飾るTrack.1「Feel Good」は、Maxim本人が"誰もがポジティヴ・シンキングで、幸せでいなくてはならない。すべてのファンや周りにいてくれている人々――今こそ、良いヴァイブと愛を広めよう"と述べているほどに、誰もが幸せであるべきだという力強い言葉が胸を打つ。楽曲のMVに関しても、現代アート作家の顔も持つMaximらしい映像となっているので、ぜひチェックしてみてほしい。


この楽曲を筆頭に、本作はアルバム全体を通して音楽やアートに対するリスペクト、生きることの意味、そして限りない"愛"が表現されている。サウンド的には過去の作品と比べても、Maximのルーツと言えるレゲエ・サウンドが前面に押し出されており、ヒップホップや現代的なトラップ風のビートも織り交ぜながらも、過去最高に開かれたアルバムになっているのだ。そもそも、レゲエはレベル・ミュージックとも呼ばれ、体制や権威に対する反抗や反逆をテーマにしており、同時にラヴァーズ・ロックといった、愛やロマンスを歌うサブ・ジャンルも存在する音楽である。例えば、メロディックな女性ヴォーカルをフィーチャーしたTrack.3「Rudeboy」では、好きな男に対して複雑な想いを寄せながらも、強い心を持った女性像を描いているし、Track.5「On And On」においても似たようなテーマを扱っている。そういった楽曲もあるなかで、"俺たちのことをコントロールすることはできない"と強烈にアジテイトするTrack.2「Can't Hold We」や、音楽やアートといったカルチャーを軸に、反逆精神を叩きつけるTrack.7「Push The Culture」、"心の奴隷制など許さない"という投げ掛けにハッとさせられるTrack.11「Rise」(日本盤ボーナス・トラック)といった楽曲が同居していることが、ソロ・アーティスト Maximの興味深いバランス感覚と言えるだろう。THE PRODIGYのトラックのすべてを担うLiam Howlettは、あくまでTHE PRODIGYの音楽はビートが基本であって、ヴォーカルにすべての焦点が当てられることは危険であるという立場であるのだが、Maximは"ヴォーカルは僕の人生においてとても大切なもの"と明快に述べている。彼のそういった基本的な姿勢は1st作『Hell's Kitchen』から変わらないものであることが、本作を聴けばよくわかるのだ。さらに言えば、唯一のインストゥルメンタル曲Track.10「Battle Horns」の物悲しげなイントロ、レゲエ~ダブ的なサウンドと細切れのギター、トラップ風のスネアの連打が融合したサウンドは、トラックメイカーとしてのMaximの才能を示すものだろう。THE PRODIGYのように、狂ったように踊れるダンス・トラックがあるわけではないが、だからこそ、世界的なモンスター・バンドのフロントマンとはまた違った側面を、本作から知ることができるのだ。


Track.12「Outlaw」において、Maximはアウトローという立場を高らかに宣言し、自分は自分自身でしかなく、自分であることを誇りに持ち、常に前進するんだということを訴えている。親友を失い、我々の想像を絶する悲しみに打ちのめされたであろう彼の人間的な強さと、アーティストとしての誠実さとが、本作のようなアルバムを生み出したことに一音楽ファンとして感謝したい。私たちは生きていて、だからこそ音楽やアートを愛し、楽しめる。当たり前すぎて日頃は意識することはないが、実はとても大切で価値のあるものだということを、リスナーは本作を通じて改めて再確認するであろう。


▼リリース情報 Maxim
ソロ・アルバム
『Love More』

2019.12.04 ON SALE!!
[avex trax]

■通常盤(CD)
AVCD-96400/¥2,300(税別)
・MaximからKeith Flintへのメッセージ記載
・Maximによる曲目解説(翻訳)入り
・日本限定CD化
・初回ジャケット・デザイン・ステッカー封入
・歌詞/対訳付き
amazon TOWER RECORDS HMV


■初回生産限定BOX(CD+Tシャツ)
AVC1-96401/¥5,500(税別)
※TOWER RECORDS限定
TOWER RECORDS


[CD] ※共通
1. Feel Good
2. Can't Hold We
3. Rudeboy
4. Mantra
5. On And On
6. Like We
7. Push The Culture
8. Put It Pan We
9. Virus
10. Battle Horns
11. Rise ※日本ボーナス・トラック
12. Outlaw ※日本ボーナス・トラック


先行配信シングル
「Rudeboy」

NOW ON SALE!!
配信はこちら


先行配信シングル
「Feel Good」

NOW ON SALE!!
配信はこちら


▼イベント情報
"来日イベント"
12月7日(土)TOWER RECORDS新宿店 18:00~
内容:トーク&DJタイム+サイン入ポストカードお渡し会
詳細はこちら


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