FEATURE
GOATWHORE
2012.03.08UPDATE
2012年03月号掲載
Writer 米沢 彰
アメリカ・ルイジアナ州ニューオリンズ。ジャズの街として知られるこの街で、SOILENT GREENのFalgoust (Vo)が中心となり、ブラック・デス・メタル・バンド、GOATWHOREは1997年に結成された。既に15年もの間活動を続けており、その間に4枚のアルバムをリリース、数限りないツアーを回り、Ozzfestなどの多くのフェスにも出演しキャリアを積み重ねてきたが、その活動は決して順調ではなかった。自主制作となった1stアルバムのリリース後、2ndアルバム『Funeral Dirge For The Rotting Sun』のリリースに際してはNoise Recordsとの契約を勝ち取るが、リリース後の交通事故で中心メンバーのFalgoust(Vo)が麻痺症状となり、バンドの継続が危ぶまれる事態を迎えるなど、その活動初期はキャリアとしては順調ながら不運にも見舞われていた。Falgoustの復活、アルバム制作開始と、ようやくその活動が順調に回り始めた矢先、ニューオリンズの街は史上最大のハリケーン、カトリーナの被害を受け、アルバム制作作業も甚大な被害を受けてしまった。最終的にはMetal Bladeより3rdアルバム『A Haunting Curse』をリリースするに至ったが、活動初期からステップ・アップしていく大事な時期にこれだけの不運に見舞われてしまったのは正に試練とでも呼ぶしかない状況だった。その後2009年にリリースされた4thアルバム『Carving Out The Eyes Of God』でバンドは大きく飛躍し、ビルボード・チャート全体では190位にランク・イン、ニュー・アーティスト・アルバム・チャート16位、インディーズ・チャート34位を記録。更にはその高評価からOzzfest2010への出演も果たし、遅ればせながら相応の評価を勝ち取るに至った。
活動開始から15年。確かな評価を勝ち取って制作された5枚目となる今作『Blood for the Master』は前作、前々作に引き続き、元MORBID ANGEL、現HATE ETERNALのErik Rutanをプロデューサーに迎えて、Erikの所有するスタジオ“ Mana Recording Studios”にて制作された。ブラック・メタル、デス・メタル、スラッシュ・メタル、グラインドコアなど多くの要素を凝縮して1つのサウンドに収束させるGOATWHORE独特のサウンド・スタイルは今作で更に洗練され、サウンド自体はかなり激しいながらも、全体としては非常に聴きやすくGOATWHOREの音楽性とテクニックのレベルの高さを伺わせるトラックばかりとなっている。ブラスト・ビートを基調にして聴きやすいとは何ごとかと思うかもしれないが、一聴すればその意見もすんなりと理解できるだろう。日本盤ボーナス・トラックにはMOTORHEADの「(Don’t Need) Religion」のカヴァーも収録されているが、GOATWHOREがなぜこのサウンド・スタイルにも関わらず、これほどまでに聴きやすいのかを理解するのに、これほど分かりやすいチョイスもないだろう。是非ボーナス・トラックを聴いた後に、その他のトラックと比べてみて欲しい。テンポが速かろうが遅かろうが、高次元でグルーヴをまとめあげるGOATWHOREの力量の高さが良く分かるはずだ。
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