DISC REVIEW
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噛むという動物の攻撃行動は、捕食の場面ではもちろん、恐怖に対する防衛、占有権侵害に対する怒り、八つ当たり的な転嫁などの意味で起こるそうだが、今作で具現化された「噛」と「砕」の2曲は、バンド側からの意図的意思発信というよりも、内圧が限界値を超えたことで破裂したような不穏なる勢いに充ちている。鬱屈とした絶望感にまみれた「砕」では"さっさと僕を殺してくれ"と叫ぶ一方、それでもラウドな音像がうねり渦巻く「噛」では"いつだって救いを求めていたんだ"と歌う切実さは痛々しいほど。ただ、どれだけネガな問題でもそれに食らいつき、噛み砕いて、飲み込んでしまえばあとは消化するのみ。なお、通常盤に限定収録された「パラダイムシフト」は初期曲を12年ぶりに新録したものとなる。 杉江 由紀