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LIVE REPORT

WHISPER OUT LOUD

2024.09.21 @shibuya CYCLONE

Writer : サイトウマサヒロ Photographer:村上凌一、小泉勇也

東京のオルタナティヴR&B/ロック・バンド、WHISPER OUT LOUDが、キャリア初のワンマン・ライヴ"WHISPER OUT LOUD 1st ONEMAN SHOW -ECHOES-"をshibuya CYCLONEで開催した。
2022年7月に現体制での活動を開始したWHISPER OUT LOUDは、今年に入り急激に活動のスケールを拡大。Zepp Sapporoでの"NO MATTER LIVE"でSiM、coldrain等と共演し存在感を示すと、勢いそのままに国立代々木競技場 第一体育館での"ZEPHYREN 10th Anniversary A.V.E.S.T project『鼓動』"、そして幕張メッセでの"SATANIC CARNIVAL 2024"と大規模イベントにて立て続けにオープニング・アクトに抜擢。その名をロック・リスナーへと浸透させてきた。

7月31日にリリースされた新作EP『ECHOES』は、そんな大舞台で見た景色を音像に反映させるかのように、スタジアム級のサウンドとポップネスを多彩な全6曲に凝縮。同作を引っ提げた念願の初ワンマン開催へと漕ぎ着けたのである。
この日のチケットは、目標通り見事ソールド・アウト。入場し会場を見渡すと、男女問わず幅広い年齢層のオーディエンスが見受けられ、改めて彼等の音楽が広範囲にリーチしていることを実感させられる。
開演時刻を迎えると、Motokichi(Vo)が見果てぬ荒野を行くシネマチックな映像がスクリーンに投影。ただならない物語が始まる予感に胸が高鳴る。ライヴの幕を切って落としたのは、EP『ECHOES』でもオープニングを飾る楽曲「Face My Fate」だ。エレクトロなシーケンスから雰囲気たっぷりに幕を開け、アコースティック・ギターと歌声のみに絞ったブリッジ、そして開放的なサビと、心を揺さぶる楽曲展開で彼等の世界観に一気に引き込む。力強くもどこかに憂いを帯び、高低を自在に行き来しながら多様な歌唱表現を操るMotokichiのヴォーカリゼーションは圧巻と言うほかない。

EPの曲順通り、躍動感溢れるアグレッシヴな「Find Me」に流れ込むと、"オイ! オイ!"のコールが起こり、Motokichiも"ヤバいねCYCLONE(shibuya CYCLONE)!"とご満悦だ。メンバーそれぞれの表情には緊張も滲んでいるが、同時にこの特別な舞台を目一杯楽しんでやろうという気概も確かに感じ取ることができた。
と、ここでTKのベース・ストラップが切れてしまうハプニングが。想定外の事態だが、Motokichiが"TKは昨日から一番ワクワクしてたのに、これからブチかますってところでやってくれました!"と笑いに変え、会場を和ませる。改めて仕切り直し、ダンサブルな「One More Time」で"もっと跳べるでしょ!"と煽ると、オーディエンスのフットワークはさらに軽やかに。サビの"One More Time"のフレーズをフロアに任せる等、ワンマンならではのホームグラウンド感を存分に活かしたライヴ運びが頼もしい。

ハミングするコーラスと歯切れの良いギター・ストロークが印象的な「Take Control」からは、少しずつトーンを抑えバンドのポップ・サイドにフォーカス。ともに頂へと登る決意を確かめ合うように、メンバーはお互いにアイ・コンタクトする。続く「Let It Go」は軽快なリズムの中にセンチメンタルな思いが漂う1曲。拳やバウンスだけではなく、心地よく身体を揺らす楽しみ方も提供してくれるのは、R&Bからの影響が色濃い彼等ならではだ。

抑制されたアンサンブルのまま突き進む「Talking To Myself」では、TKと崎谷勇人(Support Dr)のグルーヴが光る。スウィートなメロディにほぼ全編日本語詞が乗る「You are Mine」は、もはやJ-POP的とも言えるだろう。しかし、それらの楽曲は単にポップ・ソングをロック・バンドの編成で再現するだけのものではない。パンチのある生演奏のダイナミズム、静と動のコントラストこそがWHISPER OUT LOUDの強みであり、メタリックなリフやシャウトがなくとも、ラウド・シーンのリスナーに受け入れられている所以なのだということを、この日深く理解することができた。

中盤にはメンバーが着席し、スペシャルなアコースティック・セットを披露。Motokichiのソフトな歌声が映える「Scent」が会場を温かく包み込む。"これをアコースティックで? って曲を持ってきました"という曲振りからの「AsUrA」では、打って変わってスリリング且つ情熱的なムードに。改めてバンドの優れた表現力を浮き彫りにさせた。
再び通常セットに戻ると、ライヴはクライマックスに向けてさらに加速していく。「DAWN」ではKanatoのまばゆいギター・フレーズが胸を打つ。レパートリーの中でも一際ヘヴィな「27club」で、図太いサウンドと変幻自在のフロウがカオスを生み出すと、本編ラストはアンセミックな「Memories」でフィニッシュ!この日一番の大合唱が会場に響き、渾身のロング・トーンに惜しみない歓声と拍手が送られる。

アンコールで再登場したメンバーは、来年2月11日に代官山UNITにて自主企画イベントを開催することを発表。そして改めてファンや関係各所への感謝を述べると、"恩返しができるように、命を懸けて音楽やっていきます"と胸を張って宣言した。
正真正銘最後の1曲は、EP『ECHOES』のクローザー「By Your Side」。メモリアルな1日の大団円に相応しい、壮大な音世界が広がっていく。メンバーが"君と見たこの景色を 忘れはしないだろう"のフレーズを噛み締めるようにフロアを見渡し、オーディエンスがステージから放たれる光に手をかざす景色が強く印象に残った。
"俺たちの音楽を日本中に、いや世界中に広めていこう"。ライヴの余韻の中、Motokichiが「Memories」演奏前に語ったその大きな夢に、確かな説得力が宿っていく。フェスや対バン・イベントの持ち時間では味わい尽くせない、バンドの多面性とポテンシャルを十二分に見せつけてくれたステージだった。

[Setlist]
1. Face My Fate
2. Find Me
3. Magic
4. One More Time
5. True Self
6. Take Control
7. Let It Go
8. The Last Day
9. Talking To Myself
10. You are Mine
11. Scent
12. AsUrA
13. DAWN
14. Never Grow Up
15. 27club
16. Memories
En1. STEP
En2. By Your Side

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