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LIVE REPORT

BLIND CHANNEL

2024.06.03 @渋谷duo MUSIC EXCHANGE

Writer :菅谷 透 Photographer:Shun Itaba

単刀直入に言えば、まさに規格外。"メタル界のBACK STREET BOYS"の異名もすっかり浸透しつつあるフィンランド発の6人組、BLIND CHANNELが一夜限りで開催した初来日公演は、これまでヨーロッパやアメリカで躍進を遂げてきた実力を日本のファンにまざまざと見せつける圧倒的なショーとなった。

この日のオープニングDJは激ロック代表のDJムラオカが務め、MY CHEMICAL ROMANCEからBAD OMENSまでヘヴィ・ミュージックを俯瞰した選曲でフロアを温めていく。開演時刻が迫ったところでLIMP BIZKITの「Break Stuff」、そしてBLIND CHANNELのルーツのひとつであるLINKIN PARKの「One Step Closer」が流れ暗転。メンバーが登場し、最新アルバム『Exit Emotions』より「Deadzone」でライヴがスタートした。スピーカーから放たれる爆発的なラウド・サウンドはもとより、メンバーそれぞれがステージ上を所狭しと暴れ回る様はとてつもない圧力で、本国でアリーナ・クラスの人気を誇るのが即座に理解できるほど。一方のフロアも負けじと身体を揺らし、手を掲げ、シンガロングで応戦していく。開幕から早くもボルテージが高まったところで、「Where's The Exit」では冒頭の大音量のコール&レスポンスを経て、アッパーなグルーヴの上でJoel Hokka(Vo)とNiko Moilanen(Vo)のツイン・ヴォーカルならではのハーモニーが炸裂。全員をしゃがませてからのジャンプで一体感を生み出していて、アウトロをEDMのクラシック「Greyhound」(SWEDISH HOUSE MAFIA)にアレンジした遊び心もグッドだった。"トーキョー、ずっと長い間この時を待ってたよ!"(Joel)という歓喜の声に続いてプレイされたのは、日本デビュー前のアルバム『Violent Pop』より「Over My Dead Body」だったが、この曲でもシンガロングが巻き起こっていて、バンドと同様に日本のファンがどれだけこの瞬間を待ち望んでいたかが窺えた。

MCではNikoが最新アルバムについて触れると、"ここ何年かの世界はクソみたいな場所だった。人生は時として最悪だよ。でも今夜は違う、俺たちは感情を旅立たせる(Exit Emotions)ためにここに来たんだ!"とメッセージを伝え、「Red Tail Lights」をドロップ。先の言葉を踏まえた大音量の合唱に、バンドも"ビューティフルだ"と称えていた。ジャンプが会場を揺らした「We Are No Saints」に続いて、「Phobia」ではスイートなヴォーカル、「Xoxo」では高速ラップとタイプの異なるパフォーマンスで魅せていく。キャッチーなメロディとラウドなサウンドは保ちながら、様々なニュアンスで楽曲を提示できるのも彼らの魅力のひとつだろう。そして、中盤のハイライトとなったのはバラードの「Die Another Day」。"11年前に俺たちがバンドを始めたのは、(自分の中の)悪魔と闘うためだった。みんなが手助けしてくれたから、「もう少し生きてみよう(Die Another Day)」と思えるんだ"という言葉から演奏がスタートした楽曲は、原曲でRØRYが歌うパートをスペシャル・ゲストのTielleが歌唱。力強くも美しい彼女の歌声にJoelとNiko、さらに観客のシンガロングも加わり会場を満たしていく瞬間は実に感動的だった。

エモーショナルな流れを引き継ぐように披露された「Keeping It Surreal」では、Joelの繊細なヴォーカルから始まり、後半にNikoのラップで再び熱を取り戻していく。Nikoのソロ=VIOLENT BOBによる「Deja Fu」とEMINEM「'Till I Collapse」のドープなマッシュアップを経て、JoelとDJのAleksi KaunisvesiによるツインVoが披露したのはなんとSYSTEM OF A DOWN「B.Y.O.B.」のカバー! この選曲には、これまでギリギリ秩序を保っていたフロアも一気にカオスへと突入していった。白熱のピットへさらに薪をくべるかのように、「Wolves In California」ではウォール・オブ・デスを促し、「Balboa」ではサークル・ピットを煽り立てる。これまでの経験や、自らの楽曲、そしてオーディエンスへの信頼に基づいた見事なライヴ運びに思わず感心してしまった。"この場所に立てて、俺たちの夢が叶ったよ。ココニキテクレテ、アリガトウ!"と日本語も交え喜びを爆発させたあとは、スマホのライトが幻想的な空間を生み出した「Bad Idea」、右手で胸を叩く振付も印象的な「Flatline」と強力ナンバーを連発。さらなる熱狂へと繋げていった。

テンションの上がったNikoが"Cut my life into pieces"とPAPA ROACHの名曲(「Last Resort」)のフレーズを叫べば観客も"This is my last resort"と返し、年代や国籍を超えた文化的な連帯が示される。そして"この曲はわかるか?"とドロップされたのはまさかのBACKSTREET BOYS「Everybody (Backstreet's Back)」。ステップを踏んだり、落ちサビでJoelとNikoが背中合わせになって歌ったりとボーイズ・グループさながらのアクションを見せつつ、サウンドはとてつもなくヘヴィな"ヴァイオレント・ポップ"と言うべき仕上がり。もともと揶揄として付けられた"メタル界のBACKSTREET BOYS"というレッテルにあえて乗っかり、一流のエンタメへと昇華するメンタリティにシビれる瞬間だった。ラストは"ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト"で披露され躍進の端緒となった「Dark Side」を披露。"また戻ってくるよ!"と約束を交わし、大熱狂の一夜を締めくくった。

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