INTERVIEW
BLIND CHANNEL
2022.12.16UPDATE
2022年12月号掲載
Member:Joel Hokka(Vo)
Interviewer:菅谷 透 Translator:安江 幸子
MÅNESKINが優勝したことで話題を呼んだ、2021年の"ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト"。毎年約2億人が視聴すると言われる、このヨーロッパ最大の音楽の祭典にフィンランド代表として出場、6位入賞を果たし注目を集めたバンドがBLIND CHANNELだ。ふたりのヴォーカルとDJを含む6人組という編成から"フィンランドのLINKIN PARK"という異名を持ち、自ら"ヴァイオレント・ポップ"と名付けたメロディックでラウドな音楽性で、ヨーロッパを中心にセンセーションを巻き起こしている彼らが、強力な最新アルバム『Lifestyles Of The Sick & Dangerous』で待望の日本デビューを果たすこととなった。ツイン・ヴォーカルの一翼を担うJoel Hokkaに、バンドの歩みと最新作について語ってもらった。
俺たちは自分らしさを貫いて世界征服をするだけだ。自分たちの音楽を引っ提げてね
-今回が本誌にとって初めての取材ですので、自己紹介と他のメンバーの特徴についてうかがえますか?
オッケー。俺たちは日本でこれからデビューするBLIND CHANNELというバンドなんだ。と言ってももう10年くらいやっているんだけどね。自分たちで"ヴァイオレント・ポップ"と呼んでいる、ポップの影響が入っている、モダンでヘヴィな音楽をやっているんだ。シンガーはふたり、DJとギターとベースとドラムがひとりずつ。北欧風......スカンジナビア風LINKIN PARKといったところかな(笑)。同じラインナップだからね。
-(笑)編成がということですね。
そう、シンガーがふたり、DJがいて、ルーツはロック・バンドだからね。自分たちのことを新たなLINKIN PARKと思っていたいんだ。
-みなさんにはLINKIN PARKが大きな影響を与えているようですね。バンドはどのように結成されたのでしょうか?
10年前の俺たちは高校生で、世界的に成功するバンドになりたいと大きな野望を抱いていたんだ。フィンランドにはそういうバンドが多いしね。日本でもCHILDREN OF BODOMが2000年代の初めに超ビッグだったと聞いているよ。NIGHTWISHとかもね。それで、俺たちにもできるかもしれないと思ったんだ。海外に出て行って新しいオーディエンスを見つけて、世界制覇することがフィンランド人にも可能だってね。LINKIN PARKの影響はたしかにすごく大きかったと思うよ。というわけで、約10年前にすべてが始まったんだ。
-他にも影響を受けたアーティストや、好きなアーティストがいれば教えていただけますか?
バンドを組んだ当時はBRING ME THE HORIZONからも大きな影響を受けたよ。それからENTER SHIKARI、THIRTY SECONDS TO MARS......いろいろあったね。基本的には2000年代初めのビッグなロック・アクトから影響を受けているんだ。エレクトロニック・ミュージックの取り入れ方が興味深かった。今の俺たちは主にラップを聴いているかな。GHOSTEMANEとか。Post Maloneなんかも聴くよ。それから今はBABYMETALみたいな日本のものもすごくクールだって思うね。BRING ME THE HORIZONがBABYMETALとコラボしたもの(「Kingslayer Ft. BABYMETAL」)を聴いて興味を持ったんだ。
-そういったいろいろな影響が、"ヴァイオレント・ポップ"として結実したということなのでしょうか? このオリジナルなスタイルはどう思いつきましたか。
バンドとしてのルーツみたいなものがLINKIN PARKだったんだ。そのあとは、そこにポップでスタイリッシュなソングライティングを取り入れたらどうなるだろう? というアイディアで曲を作ってきた。同時に超ヘヴィなものも作っていたけど、自分たちのことを"オルタナティヴ・メタル"とか"ニューメタル"と呼びたくはなかったんだ。オルタナティヴ・メタルと名乗るのはなんだかつまらない気がしてさ。みんなやってるし。それで自分たちのブランド名でありつつ、ジャンル名にもなるような呼び名が欲しいと思ったんだ。フィンランドのバンド、HIMが"ラヴ・メタル"と言っていたような感じにね。他にも自分のジャンルを自分で名付けたバンドはたくさんいる。俺たちの音楽がニューメタルっぽく聞こえる人は多いかもしれないけど、俺たち独自のサウンドであることは間違いないから、それで"ヴァイオレント・ポップ"と呼ぶことにしたんだ。
-フィンランドはメタル大国として日本でも有名ですが、BLIND CHANNELはそのポップ性も相まってメインストリームにも近いような気がします。フィンランドのメタル・ファン/非メタル・ファンにはどう受け入れられていますか?
今はみんな超誇りに思ってくれているよ。俺たちがあまりにうまくいっているからね。アルバムがドイツのチャートで15位になったし、来年はイギリスで"Download Festival"に出るんだ。だからすごく誇りに思ってくれている人が多いけど、正直ヘイトも多いよ。"あんなの真のメタルじゃない"とか"フィンランドのメタルとは言えない"とかさ。でも、そんなのファッキンなくらい気にしていないよ。俺たちは自分らしさを貫いて世界征服をするだけだ。自分たちの音楽を引っ提げてね。俺たちはフィンランドのバンドだから、フィンランドで受け継がれている文化を持っているのは間違いないし、それから逃れることはできない。DNAに組み込まれているからね。でも同時に、BLIND CHANNELは俺たちのバンドやブランドであって、それをビッグにしたい気持ちが強いんだ。フィンランドをビッグにしたいんじゃなくて、このバンドをビッグにしたい。フィンランドがどうと言われても俺はまったく気にしない。500万人くらいしかいない国だし、ヘイターが1,000人いたとしたって大した問題じゃないよ。
-ちなみに新作はフィンランドで1位になったそうですが、ロック・チャートでしょうか、それとも......。
メイン・チャートだね。
-すごいですね!
2週連続で1位だったんだ。それほどビッグなことになっているよ。今度ヘルシンキでショーをやることになったし、なかなかすごいことになっているんだ。でもフィンランドだけじゃ満足できない。だから俺たちはアメリカや日本みたいな海外に出ることに超ハングリーになっているんだ。音楽界での主なゴールはそれだね。北欧の小さな国で足止めを喰らっている状態ではいたくないんだ。
-そういうこともあって、結成当初から英語で歌うことにこだわっているのでしょうか。
もちろんさ。初めから当然のことと思っていたよ。英語以外で歌うオプションはなかった。やっぱりインターナショナルに活躍するには(英語の)ネイティヴ・スピーカーのバンドと競争するわけだしね。俺たちにとっては大きなチャレンジだけど、世界的にブレイクするためにはいい取り掛かりだと思うんだ。
-バンドが一躍注目を浴びた出来事として、2021年の"ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト(以下:ユーロヴィジョン)"が挙げられますね。出場のきっかけを教えていただけますか?
答えはシンプルだよ。コロナ禍だ。あれは本当にたくさんのバンドにクエスチョン・マークを投げ掛けた現象だった。ツアーも遠征もできなくなってしまったから、いったいどうすりゃいいんだ? と頭の中にクエスチョン・マークが出てきたバンドは本当にたくさんいた。で、俺たちはまだ自分たちのいたいところに行き着いていないってことを自覚していた。まだフィンランドのロック・シーンに閉じ込められた弱小バンドだったけど、そこから出て何かビッグなことをやりたかったんだ。そんなところに"ユーロヴィジョン"のフィンランド予選の話を聞いた。フィンランドは2006年にLORDIが優勝するというファッキンな大成功があったことを知っていたから、俺たちも出てみようじゃないかという話になった。それで予選に出場してみたら、2位に5万票以上差をつけて圧勝することができた。そうしてフィンランド代表として"ユーロヴィジョン"に出て......あとは雪だるま式にいろんなことが起こって今に至るんだ。(2021年の"ユーロヴィジョン"で優勝した)MÅNESKINと同じだよね。彼らはさらにビッグになったけど、俺たちにも同じ効果があったんだ。すごく大きくなって、新しいファンもたくさん増えたし、いろんなビッグなことも起こるようになった。
-同コンテストでは6位入賞という成績を収めましたが、そのときの気持ちを教えていただけますか?
非現実的な感覚があったね。俺たちは"ユーロヴィジョン"のファンではなかったから、どんなものかよくわかっていなかった。ただ出場して楽しくプレイしていただけだったんだけど、"待てよ、これってすごいことなんじゃないか?"と思ったんだ。何しろ2億人が観ていたわけだし、出場したあとはInstagramやTikTokのフォロワー数、Spotifyとかの再生回数が爆発的に増えた。俺たちの目的のメインはそこにあったんだと思う。それで"ユーロヴィジョン"の影響力の大きさを思い知ったわけだけど、"ユーロヴィジョン"で何位だったというのは俺たちにはどうでもいいことなんだ。大事なのは、それのおかげで俺たちをフォローしてくれる人々が出てきたということ、そして俺たちの言いたいことに耳を傾けてくれる人々が出てきたということだからね。
-ということは、LORDIの優勝はさておき、"ユーロヴィジョン"に毎年注目しているとかそういうわけではなかったのですね。
そうだね、特には気にしていなかった。
-自分たちの求めているものに向かうためのゲートウェイだったと。
うん。もともと出場した主な理由がそれだったしね。最近はそうでもないけど、出場した直後はいろんな人に"ユーロヴィジョン"のことをたくさん聞かれて、それでやっと知識を得たような感じだったんだ。だからあまり話題にはしたくないというか、俺が知っている程度でしか話せないから......(苦笑)。俺がわかっているのはそれが単なるテレビ番組でありコンテストであって、それが終わった今俺たちはこういう状態だってこと、それだけなんだ。俺たちは終わったあとも前進し続けているからね。
-たしかに、いろいろなものへのゲートウェイになりましたね。ブレイク後にはヨーロッパやアメリカをツアーし、今年はドイツで"Wacken Open Air"にも出演しましたが、今回はメイン・ステージでのライヴということで、大きなマイルストーンになったのでは。
信じられないくらい素晴らしかったよ。たしか出演時間が朝の11時半で結構早かったんだ。1,000人、あるいはそれより少ないくらいしか来ないんじゃないかなと心配していたけど、イントロの曲が鳴ってステージに出て行ったら、たぶんその時点で1万人はいたんじゃないかな。俺たちのセットが終わるころには2万5千人くらいになっていたよ。ものすごい人出で......あの場に立っていたのが信じられないくらいだった。みんな中指を立てて、モッシュ・ピットがそこらじゅうにできていて......あれが俺たち史上最大規模のショーだったと思う。
-努力がついに実った瞬間のひとつですね。
本当だよ! あのときようやく、俺たちのやっていることに夢中になってくれている人たちが意外に多いんじゃないかって気づいたんだ。